【大学院入試 文系】入試の全体像と志望校の選び方

大学院進学2023.04.05

はじめに

本記事では①大学院入試(人文・社会科学系)がどのようなものなのかという点と②どのように志望校を選べばよいのかという点について解説を行っています。

なお、本記事は、大学院進学対策の大手予備校である河合塾KALSにて、長年、文系大学院の進学指導・研究計画書作成指導・面接試験対策指導を担当された佐和先生からご助言を基に作成しました。

佐和先生は、10年以上に及ぶ指導を通じて、これまでに多くの大学生の方の大学院進学をサポートされてきました。佐和先生が指導された学生の方は、東京大学や京都大学、一橋大学、東北大学、名古屋大学、大阪大学、九州大学、神戸大学、早稲田大学、慶応大学をはじめとした難関大学院の入試に合格されています。

指導された学生の専門分野は、法学、政治学、経済学、経営学、歴史学、社会学、教育学、心理学、看護学、スポーツ科学など多岐に渡ります。

大学院の期間

既にご存知の方も多いかと思いますが、学部が4年間であるのに対して、大学院は修士課程が2年間、博士課程が3年間です。

大学院の種類

大学院には、大きく分けて一般的な大学院と専門職大学院の2種類があります。

一般的な大学院

一般的な大学院とは、研究者を含め、社会の様々な分野で活躍できる高度な専門的知識を身に着けた人材育成を目指す大学院のことです。

例えば、法学/政治学研究科経済学研究科経営学研究科商学研究科社会学研究科文学研究科心理学研究科教育学研究科などがこれに該当します。

学生は、2年間の修士課程の間、特定の学問分野における専門的な知識やスキル、研究手法を学びつつ、修士論文という学術論文の提出に向けて、日々研究活動に従事します。

修士課程の修了要件は、当該課程への2年間の在籍32単位以上の取得、指導教員による研究指導を受けたうえでの修士論文の執筆・提出およびそれに基づく口頭試問での合格です。

修士課程の修了後の学生の進路は、東京大学や京都大学、旧帝国大学など一部の大学を除き、民間企業への就職をする人がほとんどです。博士課程への進学者は全体の数%程度に過ぎないと言われています。

専門職大学院

一方、専門職大学院とは、高度な専門性が求められる職業で活躍できる人材である高度職業人の養成に主眼を置いた大学院のことです。

代表的な専門職大学院としては、法科大学院(ロースクール)経営大学院(ビジネススクール)会計大学院教職大学院公共政策大学院などがあります。

修士課程の修了要件は、当該課程への2年間の在籍30単位以上の取得です。修士論文の執筆・提出は基本的には求められません。

公共政策大学院とは!?
■公共政策のプロフェッショナルの育成を目指すための大学院であり、政治・経済・法律・国際関係やその関連分野について広く学べる大学院のこと。

■公共政策大学院の修了後の学生の進路は、政治家や行政官、国家公務員、国際公務員、公的研究機関、民間シンクタンク、民間企業、NPOなど多岐に渡っている。

選抜方法

大学院入試における選抜方法は、①一般入試②社会人入試③推薦入試④飛び級入試⑤外国人入試の5種類に分類されます。

一般入試

大学の学部を卒業し、そのまま大学院に進学しようとする方に向けた選抜方法です。

社会人入試

学部を卒業してから一定年数を経た方や一定年数の実務経験がある方に向けた選抜方法です。

社会人入試の場合、一般入試と比べて試験科目は少ない傾向にあります。また、社会人入試を設けている大学院では、仕事を続けながらも大学院に通えるようなカリュキラムが組まれている場合もあります。

(内部)推薦入試

学部で一定以上の学業成績を収めた方で、同一の大学内で学部から大学院へ進学しようとする方に向けた選抜方法です。

内部推薦の場合、試験科目が免除される場合があります。また外部の大学出身の方を受け入れる推薦入試を採用している大学院も存在します。

飛び級入試

早期入学制度とも呼ばれる本選抜方法では、学部に3年以上在籍した者が4年目を学部で過ごすことなく、直接、大学院へ進学することが可能です。近年、飛び級入試を採用する大学院が増えています。

外国人入試

グローバル化の進展に伴い、今日ほとんどの大学院で採用されているのが、外国人留学生を対象とした外国人入試です。

外国人入試を受けるためには、日本国内外のいずれかの大学の学部を卒業していることに加えて、日本語能力試験で1級/2級を取得ていることや、日本留学試験の日本語の成績で一定以上の点数を取得していることなどが求められています。

また、試験内容も一般入試ほど難しくない場合が多いです。

入試の時期~秋入試と春入試、2回の受験チャンスがある!~

一般的に大学院入試には、秋入試(9~10月頃に実施)春入試(1月~2月頃に実施)があります

そのため、秋入試で失敗しても、春入試でもう一度受験をするチャンスがあります

では秋入試と春入試、どちらで受験する方が理想的なのでしょうか?

この答えとしてスプリング・オンライン家庭教師では、秋入試の受験を推奨しています。

なぜならば、大学院入試では秋入試で多くの合格者を出す一方、春入試ではそれほど多くの合格者を出さないと言われているからです。

大学院側には、秋入試を通じて一定数の合格者を出し、受験者数や合格者数を十分に確保できなかった場合、春入試を通じて合格者を確保しようという意図があるということです。また、大学院によっては年に1回しか入試を行わない場合もあります。

したがって、自分の志望校では受験のチャンスが何回あるか、大学院のホームページや募集要項を通じてしっかり確認するようにしましょう。

入試のスケジュール

当然ですが、秋入試で受験するか春入試で受験するかによって受験スケジュールは異なってきます

しかしいずれを選ぶにしても、まずは志望校をできる限り早い段階で決める必要があります。

なぜならば、大学院・研究科ごとに試験形態が大きく異なっているため、まず志望校を決めない限り受験勉強を

始められないからです。

秋入試を目指される方は遅くとも5月の初旬までに、春入試を目指される方は遅くとも10月の初旬までに志望校を決める必要があります。

志望校を決めた後、試験勉強と研究計画書の執筆を開始していきます。

秋入試を目指される方は7月初旬までに、春入試を目指される方は12月初旬までに研究計画書の草案を完成させる必要があります。その後、1カ月ほどかけて研究計画書の内容をブラッシュアップさせていきます。

しかしここで注意が必要なのは、以上のスケジュールはあくまでモデルに過ぎないということです。

志望校の受験日程や、ご自身の能力、勉強の進捗状況に合わせた受験スケジュールを組み立てることが必要です。

試験の内容・流れ

基本的な試験の内容は、書類審査に加えて筆記試験と面接試験です。

書類審査のために提出が必要な書類は以下の通りです。

  • 入学願書
  • 成績証明書、卒業(見込み)証明書
  • 志望理由書
  • 研究計画書
  • 推薦書
  • TOEIC/TOEFLなどのスコア

これらの書類を出願期間に提出し、大学側で問題なく受理されれば、次の選考である筆記試験に進む資格が与えられます

1次試験

1次試験と呼ばれる筆記試験では、専門科目試験と外国語試験が課せられます。

専門科目試験は、各専門分野についての学部レベルの基本的知識が問われます。

一方、外国語試験は、英語の試験のほか、研究科によっては、英語の試験に加えて/英語の試験以外に、第二外国語(ドイツ語、フランス語、ロシア語、中国語、朝鮮語など)の試験が課せられる場合もあります。

出題形式は、英文和訳内容説明形式のものが大半です。また近年では、研究者を養成することに重きを置く難関校を除いて、多くの大学院が、英語の試験を課す代わりに、TOEICやTOEFLのスコア提出を求めるようになっています。

大学は、両試験を通じて、受験生に大学院にて授業についていくことができる程度の基礎的学力が備わっているかどうかを査定しています。

2次試験

1次試験である筆記試験を突破すると、2次試験である面接試験に進むことができます

面接試験では、書類審査のために提出した研究計画書に基づいた質疑応答がされます。

とくに研究計画書については、研究の目的問題意識オリジナリティ意義方法先行研究の状況への理解などについて詳細に聞かれます。

面接試験を通じて大学が知りたいことは、受験生が大学院にて研究を遂行するに足る能力や意欲、問題意識などを備えているのかどうかという点です。

ちなみに、受験生の多くは筆記試験に力を入れる一方、面接試験を軽視しがちです。

しかしながら、人文・社会科学系の大学院入試においてはむしろ、研究計画書の質とそれに基づく面接試験の出来の方が合否に大きな影響を与えると言われております。現に毎年1次試験を突破したものの、面接試験を甘く見たことで、2次試験で不合格になる受験生が後を絶ちません。

その意味で、面接試験についても入念な準備をする必要があると言えるでしょう。

大学院入試の流れ
1. 書類審査(入学願書、成績証明書、卒業(見込み)証明書、志望理由書、研究計画書、推薦書、TOEIC/TOEFLなどのスコア)

2. 1次試験(専門科目試験、語学試験)

3. 2次試験(面接試験)

4. 合格 

志望校の選び方

さいごに、大学院入試にあたっての志望校の選び方について解説をしていきます。

志望校の数

大学受験では、志望校を5つ以上設定し、複数の大学を受験した方も多いかと思います。

しかし大学院入試では1~3つ程度を志望校とする方が大半です。

理由の1つは、自身が設定した研究テーマに応じて受けられる大学院の数が限られてくることです。

そもそも、自身が設定した研究テーマを指導できる教員が当該大学院・研究科に在籍していない限り、その大学院を受験しても面接試験で不合格にされてしまいます。

もう1つの理由は、大学院・研究科ごとに試験で出題される専門分野の範囲が異なっていることにあります。

専門科目試験の出題範囲は、試験作成者である教員の専門分野に応じて決まります。そのため、同じ専門分野でも、受験する大学院・研究科によって、試験対策が若干異なってきます。志望校の数が増えると、試験対策にかける負担が大きくなってしまうのです。

志望校と研究テーマを決める手順

志望校と研究テーマを決める手順は、2パターンが考えられます。

パターン1. 研究テーマを決めてから志望校(志望研究科)を決めるパターン

研究テーマがある程度固まったら、その研究テーマで指導してくれる教員が在籍している大学院が自ずと志望校(志望研究科)の候補になってきます。

パターン2. 先に志望校(志望研究科)を決めるパターン

どうしても東京大学の総合文化研究科に行きたい、どうしても一橋大学の社会科学研究科で研究をしたいという場合、その大学院(研究科)に在籍する教員の専門分野に合わせて、研究テーマを決める必要があります。

志望校を決めるに際しての考慮点

教員の在籍状況

大学院が研究をする場であるということを考えれば、第一に自分の研究テーマに近い研究をしている教員が在籍しているかどうかということを確認しなければいけません。

そしてもし、自分の研究テーマに直接関わる専門分野の教員だけでなく、隣接分野で自分の研究テーマに近いことを研究している教員が複数在籍していれば、その大学院(研究科)は志望校の有力な候補になってくるはずです。

カリキュラムの充実性

自分の研究を実施するうえで、最適なカリキュラムが組まれているかという点も考慮にいれる必要があります。たとえば、海外に関するテーマについての研究を行い、将来留学も検討されているならば、専門分野の外国語文献購読の授業が充実していたり、授業が全て英語で行われるような授業が豊富にあったりすれば、そのことは志望校決定に際しての重要な判断基準になります。

また専門分野に関する方法論をしっかり学べるようなカリュキラムが組まれていれば、それは大いに魅力的なことです。

研究環境

学費の安さ奨学金制度の充実度蔵書の豊富さなど、研究環境は志望校を決める際の考慮点の1つです。

大学の規模が大きければ大きいほど、研究環境は優れたものである傾向が強いです。

評判

世間的に知名度や難易度の高い大学院には、知的レベルが高く、高い志を持った学生が集まりやすいです。そのような優秀な人たちとともに大学院生活を送ることができるため、おのずと自身の能力も磨かれていきます。

大学院修士課程の修了後のことを見据えれば、大学院の評判も、志望校を決定するにあたっての重要な判断材料でしょう。

試験の内容や難易度

大学院によっては、専門科目について、出題範囲が狭かったり難易度も高くなかったりする場合があります。

また英語の試験も専門英語でなく、TOEICのスコア提出で済むようなところもあります。院試浪人という選択肢がない反面、いずれかの大学院に所属する必要がある場合、試験の内容や難易度から判断して志望校を決めることを推奨します。

志望校決定の方法

志望校選びをするための方法は4つあります。

大学院(研究科)のホームページを徹底的に読み込むこと

どのような専門分野の教員が在籍しているのか、どのようなカリュキラムが組み込まれているのかなど、ホームページにはその大学院(研究科)を知るうえで必要なほとんどの情報が掲載されています。また、ホームページを通じてその大学院(研究科)について研究することは、面接対策にも繋がります。その大学院の特徴を押さえておけば、面接試験にて、その大学院を志望する理由について説得力を持って話すことができます。

大学院説明会に参加すること

大学院によっても異なりますが、説明会は夏ごろに開催されることが多いです。説明会では大学院(研究科)についての全体説明に加えて、個別相談のような場も設けられています。個別相談では、研究科の大学教員や職員が対応してくれますので、全体説明では十分に分からなかったことについて、詳しく話を聞くことができます。

研究室訪問

詳細については別稿に委ねたいと思いますが、人文・社会科学系の一般的な大学院を受験される場合、必ず出願前の段階で研究室訪問を済ませておく必要があります

そもそも、指導を仰ぎたい教員が指導をしてくれない場合、その大学院を志望校とすることができません。また、教員と性格的に相性が悪そうな場合、修士課程(あるいは博士課程の+3年間)の2年間は、苦痛に満ちたものになるでしょう。

その意味で、研究テーマがある程度定まったら、志望指導教員と直接会って話をしてみて、そのうえで、本当にその大学院(研究科)を志望校にしたいのかどうかを判断するべきと言えます。

先輩や知人から話を聞く

この方法をお勧めする理由は、彼らを通じて大学院(研究科)の良くない部分を知ることができるということにあります。

当たり前のことですが、ホームページに載っている情報や大学院説明会で話される内容は、基本的に大学院の良い側面です。悪い側面については、そこに在籍している者にしか分かりません。したがって、志望校に在籍する先輩や知人がいれば、彼らから大学院(研究科)の内部事情についても聞いたうえで、志望校を決めるべきでしょう。

おわりに

いかがでしたか?

本記事が、大学院入試の全体像と志望校の選びの方法についての皆さんの理解に少しでも役立ってくれれば幸いです。

スプリング・オンライン家庭教師には、大学院入試の指導が可能な文系・理系の講師陣が多数在籍しています。専門科目の勉強や研究計画書の作成、面接試験の準備の仕方でお悩みの方は、ぜひ下記無料相談よりお問い合わせ下さい。

運営会社:株式会社Spring Knowledge

関連する記事