【大学院入試】社会人からの大学院入学〜社会人と大学院で学べること〜

大学院進学2023.07.27

はじめに

まずはこのページにお越しいただきありがとうございます!

こちらに来られたということは、もしかするとあなたも社会人経験を経て、大学院への進学を検討されているということでしょうか?

あるいは、「大学院に行くべきか?」「就職すべきか?」と、大学卒業後の進路を検討中の方でしょうか?

いずれにせよ、両方経験してきた私の経験が少しでもあなたの進路選択やキャリアビジョン検討の参考になればと思うので、今回は社会人と大学院で学べることの違いにも触れながら、どんな人に、大学院で学ぶことがオススメなのか語っていきたいと思います!

筆者のプロフィール

現在私は、

大阪大学の博士課程に在籍し、心理療法の知見に基づいた子ども向けのメンタルヘルスプログラムの開発とその効果研究を……

と、研究の話もご興味いただければお話ししたいところではありますが、とりあえず今回はバックグラウンドからお話しします。

大学の学部生時代は、心理学や哲学なんかも含めて広く様々な視点から人間について学ぶ学科に在籍し、社会学を専攻して卒業しました。ほとんどサークル活動ばかりしていたような気もしますが、教員免許を取得するための授業を取っていたこともあり教育という分野に関心を持って、卒業論文のテーマも学校におけるいじめの問題を扱いました。また、就職先も教育系のビジネスが強い商社に就職しました。ですから、バックグラウンドの一つ目は商社の営業マンです。

商社で営業をする傍ら、すごーく個人的な話ですが、学生時代からサークルで始めたダブルダッチの活動が転じて地域の子どもたちに教室を開く機会があったり、ケーブルテレビにレギュラー出演したりしていた時期がありまして・・・

全国に転勤する可能性のある商社で一生働く人生は選べないなと、転職を意識するようになりました。

ダブルダッチについて・・・ 2本のロープの中でアクロバットしたりダンスしたりするあれです。ちなみにそのダブルダッチ教室の運営も今年10周年を迎えました。

そんな矢先、主催するダブルダッチ教室に、

うちの学校に協力してくれませんか?

と声をかけていただいたのが2つ目のキャリアとなる通信制高校でした。当初は学校の活動に協力してほしいという依頼だったんですが、転職を考えていた僕に取っては渡りに船!営業経験があるということで広報と教員の二刀流で私学高校の職員として雇ってもらいました。大学時代にわざわざ教員免許取っといてよかった〜と思いましたね。

その後、学校の運営幹部としてマネジメントの職にまで就きましたが、師事していた校長先生の定年退職から程なくして退職を選択し、現在は大学院の博士課程の学生をしながら(学生として所属している大学とは別の大学で)研究員の仕事もしています。

でも実は、大学院での研究は通信制高校在職中からしていました。通信制高校には発達に偏りがあったりメンタルヘルスの不調を抱えていたりする子どもたちも多く在籍しています。その子たちに、ちゃんと専門的な知見からサポートや教育を提供したいと思っていたので、出身大学の医学部でのボランティア研究員を数年やっていました。

そんなわけで、

バックグラウンドとしては、社会学専攻、商社営業マン、高校教員、研究者

ということなんですが、営業しながら続けていたダブルダッチの活動が次の仕事に繋がり、高校の仕事をしながら続けていた大学での研究が、今のキャリアに繋がっています。

さて、本題に入らずに長々と自己紹介が長くなってしまいましたが、わざわざ書かせていただいたのにも(一応)理由があります。

一昔前までは、仕事をしながら副業をしたり、転職することも比較的一般的なことではありませんでしたが、今の時代は、仕事をしながら副業をしたり、学生時代からの活動を続けたり、ライフステージに応じて転職して仕事を選んでいくことはますます一般的になっています。すなわち、おそらく私よりも若い皆さんは、多くの場合、私と同じように、今後の人生の中で複数の仕事を経験すると思いますし、そういったキャリアチェンジの1つの選択肢として大学院で研究するという期間は十分にあり得るのだと思います。それを

「今」目指すのか、今は一旦別のキャリアを選択して、「未来」に可能性を残しておくのか!?

というのが、今のあなたが検討されている視点なのだろうと思っています。

大学院で学べること

では、社会人になって学んだことはなんだったかな?と考えてみたいと思います。

冒頭にも書いたように、皆さんの中には既に社会人を経験してから大学院への入学を検討している人もいれば、学部卒業を前に就職しようか大学院に進学しようかと悩んでいる人もいるかもしれませんが、まず最初に認識を共有しておきたいと思うことは、最終的には、多くの人のゴールは社会人として経済的に自立すること、あるいは成功することであると思います。いや、自立して生活し続けることや、成功を維持し幸せな人生を送ることと言い換えられるかもしれません。

要するに、「社会人で学べること」や「大学院で学べること」をこれから書いていきたいとは思いますが、そこで得た学びが、実際の社会で、自分の人生にどう活かされるか、という観点で考えることが重要だと思っています。

さて、そう考えると「社会人」というのはまさに社会で自立して生きることの実践そのものです。実際に、どうすれば収入を得られるのか、稼ぐことができるのか、ということを、会社員であれば給料をもらいながら体験することができます。細かな点で言えば、業種によって全く異なるスキルやコンピテンシーが求められますので――例えば自動車整備のスキルであったり、お客さんを笑顔にできる接客力かもしれません――そういった意味では、本当は「社会人」というデカい主語で語ると例外が出てくることは承知しているんですが、敢えて挙げれば以下の3つの要素が学んだことの本質だったかなと思います。

論理的な思考力・判断力

学問領域にもよりますが、いわゆる文系の学問領域も含めて、大学院に進学する方の多くは科学的なアプローチに基づいた研究をされる方がほとんどかと思います。仮にそうでなかったとしても、学術論文を書き上げる際には、その分野の先行研究からリサーチクエスチョンを導き出し、自らの仮説を他の研究者にも支持してもらえるよう、根拠を積み上げて自説の確さを証明する試みを積み重ねていくと思います。

研究活動は、論理的な思考や表現力、判断力を自らの研究実践の中で身につけさせてくれると思います。

因果関係を推論しそれを確認するデータ処理スキル

論理的な判断を行なっていく過程で必ず必要になる要素が、真実を明らかにする、物事の関係性を明らかにするというスキルです。

例えば医学領域の研究で、ホルモンAの作用が疾患Bに与える影響を明らかにしようとすれば、大量のラットを無作為に2群に分けて、Aを投与した場合としない場合の比較結果を統計ソフトで解析して分析するでしょう。社会科学領域であれば、アンケート調査を実施するかもしれません。

いずれにせよ、研究の理論を構築する過程には、実験であったり調査であったりその方法に違いはあれど、知りたいことを確認するための具体的な手法を学びます。この手法は、研究というアプローチを経験しなければ学び得ない大学院での重要な学びの一つだと思います。

主体性とマネジメント能力

大学院で行う研究という学びは、指導教員の先生の研究のお手伝いのような要素もゼロとは言いませんが、基本的に、自分自身の学術的な関心に沿って行う、「自分の研究」です。

学部の卒業論文のための研究ももちろん「自分の研究」ですが振り返ってみていただくといかがでしょうか…?「自分のやりたいこと」よりも、「卒業するための手段」になっている(た)…という方が大半ではないでしょうか?

大学院は良くも悪くも流石にそうではありません。自分の主体性に基づいて研究を行うしかありませんし、自分の研究領域のことは、指導教員よりも自分の方が詳しいという状況におそらくなっていくと思います。また、研究を行うには、研究計画を立てて、自ら実験や調査を計画し、大学内外のリソースを使って実験参加者や協力者を探さなければいけないことも多いでしょう。研究室によっては、ある程度のまとまった予算を配分され、その収支を管理する必要も出てくると思われます。こういった一連のプロジェクトを責任者としてマネジメントする経験は、人によってはなかなか経験してこなかったという人もいるのではないでしょうか?

さて、3つの学べることを私なりの視点で挙げましたが、社会人で学べることと共通する点は、

大学院で学びも、決して与えられたカリキュラムをこなしていって得られるわけではなく、そこに実践が伴う

ということです。

社会人になっても、大学院生になっても、少なくとも中学高校や、大学の一部の講義のように何かを「教えてもらう」というスタイルではなく、経験を通して自ら新たな知識やスキルを獲得していくという学び方が主になっていくことは間違い無いかなと思います。

どういう場合に大学院での学びが有益か

当然、将来大学や、あるいは一般企業も含めた研究機関の研究者になりたい、という場合は大学院で研究の実践を積むことが必要になると思います。ただ、それは当たり前の話ですし、そもそも「大学院に進学しようかどうしよか」と迷う要素にならないと思うので、どういう場合に、直接社会人として経験を積むよりも、研究を通した経験の方が社会人になった時の自分の能力にプラスになり得るのかという観点でお話ししたいと思います。

ズバリまずは、

マーケティングやコンサルティングなどの仕事に関心がある方の場合には、大学院での学びが将来の仕事にもプラスになる

と思います。

大学の研究の過程で統計解析ソフトが使えるようになるとか、そういう直接的なことももちろんあり得ますが、先ほど書いたように、社会の中で自分の、あるいは自分の会社の仕事(商品やサービス)が市場で受け入れられ、しっかりと消費(購入)されるには、需要の動向をしっかりと把握し、どういった顧客をターゲットにするかという予測や戦略が非常に重要です。

ですが、重要な要素であるにもかかわらず、そういったマクロの視点で仕事に従事できる人材というのは決して多くありません。大学院での学びを通して、物事の本質を捉え、大局的な視座に立って物事を分析できる資質のある人材は実は希少で、社会人としても競争力があります。

次に、

将来部下をもったり、より大きな仕事がしりしたいという方にとっても、大学院での学びの経験は活きる

と思います。

実は、社会人になってもマネジメントのスキルというものは、学ぶ機会に恵まれない人も多くいます。当然ですが、ある企業の中の上司の数は部下の数よりも少ないです。一定の年齢になって、かつ同期との競争に勝たないと上に行けないということは、ザラにある話です。そうなると、例えばコンシューマー向けの接客業のように仕事上で他者のマネジメントをする機会のない職業では、いざ部下を持つまでマネジメントの経験ができないことも多くあります。

大学での研究は、学生でも大学の施設や設備、予算などを使ってある程度の規模のプロジェクトを自分で行うことができますし、研究活動の延長線上で学会発表を行ったり、様々な外部機関との活動に触れたりすることができます。そう言った多様な経験値は社会人経験が長いからと言って一概に得られるものではなかったりします。

最後に、

大手志向の人ほど、大学院で研究の経験を持つといいかもしれない

というお話しもしたいと思います。

前半でお伝えしたように、現代を生きるみなさんの多くは、おそらくキャリアチェンジをしながら生涯のキャリアを展開していくのが当たり前になるだろうと思われます。でも一方で、相変わらず安定した大手企業志向が強いのも現実です。

大手企業のメリットは、社内で様々な仕事が経験できること、そして教育制度や福利厚生制度も充実していることだと思います。

一方で、たくさんの社員で大きな事業を分業する形式をとっているため、一人の社員が一定の期間内に経験できる業務の幅は非常に限定的です。人事部員は人事のことだけを行い、経理の人間は経理のことだけを仕事にします。そうすると、社会人として成功するために学んでおきたい経済活動の原則や、顧客や取引先との契約に基づいた多様な関係性などを実体験する機会は必ずしも多いとは限りません。

海外では優秀な学生ほど勢いのあるスタートアップやベンチャーに就職したがると言いますが、日本の大企業に就くと、いざ転職しようと思ったときには求められるスキルが身に付いていない、ということもあるかもしれません。(コンサルやエンジニア、営業職なら逆に大手企業の経験はウリになり得ますが)

そもそも、大手企業であれば学部卒よりも大学院卒は初任給が高いということもあるので、大学院を経験してから就職することのデメリットもありませんし、検討する価値はあると思いますよ!

大学院進学に向いている人

これまで、社会人として学べることと大学院で学べることを紹介して、「こういう場合は大学院を考えてもいいんじゃない?」というお話しをしてきました。

さて、では、どんなタイプの人が大学院進学に向いているんでしょう?私なりに感じていることを書いておしまいにしたいと思います。

自分の興味関心が明確な人

繰り返しになりますが、大学院では自分の研究テーマを決めて、その研究と向き合う数年を過ごすことになります。そういう意味では、「とりあえず進学する」よりは

「これを学びたい・研究したい」というマインドは大事

だと思います。

こだわりのある人

研究者には変わった人が多いとよく言われますが、それは正しいと思います笑。良くも悪くも、

一つのことに没頭したり、その際、細かな部分まで気になったりするとか、納得いくまで引かない、みたいなある種の強情さみたいなものがプラスに働く

こともある気がします。逆に言うと「新入社員」にとってはこだわりのようなものは、最初は適応的な活動の障害になることの方が多いかもしれません…。そう言う意味でもこだわりの強い人ほど、自分の強みや専門性を磨き、特化した状態で社会人ワールドに出ていく方が、効率的な気もしています。

石橋を叩いて渡れる人

ビジネスの世界では、「考えるよりまずやってみる」と言うマインドの人材も非常に重要です。特にVUCA時代にはそう言った人材も重宝されます。研究の世界でもそう言った行動力のある方ももちろんいますが、ベースには、慎重さ緻密さがあると感じています。最大限の緻密な計画と実験や調査のデザインをすることで、研究成果も信頼性の高い説得力あるものになります。

事前の準備や積み上げを面倒くさがらずにやれる慎重さは重要

だと思います。

おまけ

私と同じように、社会人を経験されて今から大学院を検討している方に1つメッセージをお送りしたいと思います。是非そう言った方には、

研究成果を社会実装する」という目標を持って大学院の門戸を叩いて欲しい

なと思っています。

大学院では非常に貴重な学びをたくさんすることができます。一方で、特に日本では、研究成果が実際の社会生活に活かされることは必ずしも多く無いと思っています。それは、大学や研究者が、経済活動の原理原則や、市場経済において商品やサービスが評価されるロジックをうまく掴めず、人々に届けるのが得意ではないからだと思っています。

研究で学んだことが社会人になっても活かせるのと同じように、

社会人として学んだことは、研究の、特に社会実装という領域において非常に活かせる

と思っています。

是非、これまでの仕事の経験を踏まえて、何か研究して深めたいテーマを持った方社会人の方にも、大学院で学ぶことを選択して欲しいなと思います。

おわりに

いかがでしたか?

本記事が、大学院進学を目指される社会人の皆さんの理解に少しでも役立ってくれれば幸いです。

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