【医学部学士編入】神戸大学 医学部 合格体験記

医学部学士編入2023.08.01

はじめに

ご覧いただきありがとうございます。医学部編入という特殊な形式ですが、神戸大学医学部に合格するまでの軌跡を残せればと思います。一般入試と比べて情報収集が難しいので、少しでも医学部編入を考えている方々の参考になれば幸いです。

まず簡単にですが自分の経歴を紹介させていただきます。

薬学部4年 ⇒ 修士課程2年 ⇒ 製薬企業研究職3年 ⇒ 神戸大学医学部編入

というような経歴です。社会人3年目、27歳で編入を決意し、その年に合格となりました。

受験校は名古屋大学、神戸大学の2校のみで、合格を頂けたのは神戸大学のみとなります。

神戸大学の勝因や名古屋大学の敗因を含めて、詳細は【勉強内容】の項で述べたいと思います。

志望動機

医師を志した理由としてはいくつかありますが、ひとまず、20代の体力のあるうちになにか挑戦をしてみようと思ったのがきっかけです。

これを読まれている方に学生の方もいらっしゃると思いますが、会社に就職すると自分の人生のゴールが割と見えてしまいます。5年後、10年後、20年後に自分はどんな仕事をして、どんな生活をしているのだろうという疑問は、5年先輩、10年先輩、20年先輩の生活を見れば答えが出ているからです。

もちろん全員に当てはまるとは限りませんが、同じ職場で、同じような時間働き、同じような収入で、同じようなレベル帯の大学を卒業しているのですから、大きくは変わらないのだと思ったら、少しがっかりしませんか?

その点、医師は医師免許さえ取得できれば、働き方は様々です。医局に入るのか、フリーでバイトするのか、開業するのか、美容に進むのか非常に選択肢があります。経歴を活かして塾講師になることもできます。

なにより、自分が製薬企業で行っていた研究すらも医者でもできるのだと思ったら、20代最後のうちに一度道を逸れてみてもいいのではないかと感じていました。それが医学部を受験するに至った決定打でした。そんなこと実際の志望動機には書けませんが、正直な気持ちとしてはそのような感じでした。

実際の大学に提出する志望動機に関して意識したことは3つあります。

以下の通りです。

志望動機

①とにかく自分の経歴や経験を志望動機と紐づけること

②やりたいことが明確で、それが医者でなければできないことである

③大学が臨床医を望んでいるのか研究医を望んでいるのか見極めること

よく聞かれる質問として、「それをやるのはあなたじゃないといけないの?」、「それは医師じゃないと出来ないの?」があります。

この2つに答えるためにしっかり①、②の内容は志望理由に盛り込んでください。誰かの助けになりたいから、というようなぼんやりとした志望動機では「医師でなくてもいいよね」となってしまいます。

最後の③に関してですが、これを外すと恐らく合格できません。医師が不足している地域で卒業後、研究をしたいという学生は大学も必要としていないからです。反対に研究医が欲しい大学で将来開業医になりたい学生も当然ですが必要とされません。募集要項をしっかり読み、大学に合わせた志望動機を書くように心掛けてください。

受験を決めた時期

具体的に医学部編入を考えた時期は、受験をする年の2月頃でした。

前々から医学部編入というのは気にはなっていましたが、本格的に稼働し始めたのが2月からということになります。そこから試験のことを色々と調べ、具体的な出願時期だとか、TOEICやTOEFLなどのスコアが必要なのだと知りました。2月、3月は志望校を絞らず、とりあえずTOEICの勉強と高校生物に集中し、4月に受験校を名古屋大学と神戸大学に絞り、大学生物(自然科学)の勉強を始めました。

名古屋大学の出願が6月後半、1次試験が7月後半 ⇒ 不合格

神戸大学の出願が7月前半、1次が8月前半、2次が9月前半、合格発表が9月後半

というようなスケジュールだったので医学部編入に費やした期間は約半年ということになります。

注意していただきたいのが、この半年という数字は正直一部の人にしか当てはまらないかもしれないということです。自分は薬学系出身、かつ大学4年生から研究室配属となり、医学系の英語論文を日頃から読んでいましたし、会社でも生命科学系の研究に従事していたため、受験を決めた当初から英語と自然科学系の分野でかなりのアドバンテージがあったように思います。受験校選定に関しても、研究業績が使用できる+製薬企業研究職というキャリアが有利に働くのがこの2校だったためです。

文系出身者の方だと、英語の得意不得意にもよりますが最低1年くらい必要だと思います。

編入試験では自分の得意、不得意にあった志望校選択が一般入試よりも特に重要となってくるので注意してください。

勉強内容

ここでは実際にためになった教材や、今思えばこうしておけば良かったことなど当時の気持ちを、時系列と共にご紹介できればと思います。

2月

とにかく「医学部編入がどのくらい難しくて、どの程度勉強すれば分からない。志望校も絞ってなければ、右も左も分からない」というような悲惨な状況でした。ネットで少し調べて、とりあえずその時の知識は、、、

  • 30大学くらいが編入試験をやっている。
  • 4月から出願が始まり、遅いところだと10月くらいで何校も受けられる。
  • 生命科学と英語は必須。(一部、高校生物が必要)
  • TOEICやTOEFLのスコアや物理、化学が一部の大学で必要。
  • 予備校としては河合塾KALSが一番力を入れている。

といったような感じでした。

そこから、とりあえず高校生物とTOEICの勉強を始めました。

高校生物の教材としては、Try itの映像授業をYouTubeで観ていました(2倍速で植物、進化以外の範囲)。わかりやすくて無料なので、とりあえずどうしようという方にお勧めです。高校時代、生物選択ではなかったため、ひとまず高校生物の概要をつかんだ時期です。

TOEICは大学生時代に受けたことがあり、当時のスコアは730点くらいだったと思います。

とりあえず800点を目指して勉強し始め、3月の試験に備えたという形になります。当時は知りませんでしたが、医学部編入合格者の平均TOIECスコアは約850点であると合格してから知り、自分が目指していたスコアが非常に低かったのだと知り、冷や汗がでました。結局自分はTOIECを使うような大学を受験しませんでしたが、今から目指される方は英語の外部試験は2年間有効であるため、早めに対策してTOIECであれば900点近いスコアを目指すことをお勧めします。(受けていないのでわかりませんが、TOEFLであれば80くらい?)

教材に関してはTOEIC L&R TEST 出る単特急金のフレーズと公式問題集を使いました。TOEICに関しては情報がたくさんあると思うのでここでは割愛させていただきます。

なぜTOEFLではなくTOIECにしたかというと、時間的に対策が間に合わないと思ったからです。後ろ向きな理由にはなりますが、「TOEFLは受験したこともないし、出願までに何回も受けれない。TOEICは受験したこともあるし、このくらい頑張れば多分スコアが取れそう」といった感覚だったからです。多くの受験生も恐らく同じような感覚だと思います。逆を言えばTOEFLスコアさえ持っていれば、他の受験生と差がつくのでお勧めです。東京医科歯科大学、岡山大学、弘前大学などTOEFLスコアがないと受けられない大学もあるので注意してください。

3月

正直2月は本当に医学部受験することが正解なのか迷いながら過ごした時期だったと思います。なので、教材にお金をかけずに、とりあえず今ある教材でできる範囲で始めてみるかという感じでした。

3月に入り少し焦り始め、KALSのテキスト一式をメルカリで購入しました。10万円くらいでした。働きながらだったので、あまり予備校に通おうとも思わず、費用も高かったのでテキストで独学しようと考えました。

もう一つ実施したことはExcelに大学名と募集要項請求時期、出願時期、1次試験、2次試験の日程、入試科目を全てまとめ、本格的にどの大学を受験しようか考え始めたことです。当時は比較的早い時期に試験を実施する琉球大学と大分大学に願書を提出しようと思いましたが、募集要項を確認して、推薦書が必要なのだと当時初めて知り、受験するのを諦めてしまいました(今振り返っても本当に情報弱者だったと思います)。推薦書をお願いできる方はいたのですが、まだその時も医学部を受験することに全振りできておらず、推薦書は断念し、琉球や大分も諦めました。

KALSのテキストが届いてからは生命科学の基礎シリーズ(高校生物の範囲)をずっとやっていました。(KALSは基礎、完成、実践の3段階あり、それぞれ基礎は高校生物、完成は大学入試上位国立~生命科学初級、実践は生命科学中級の難易度といった感じです。)

3月は2月に引き続きTOEICの勉強と試験本番、KALSテキスト基礎シリーズで高校生物を完璧にするようにしていました。

4月

4月からは本格的に医学部編入試験に向けて頑張ろうと燃えていました。TOEICも終わり、10万円もする教材を無駄にするわけにはいかないというのがモチベーションになっていたと思います。少し話は逸れますが、何かやりたいことがあったら、とりあえず少し高いなと思う範囲でお金をかけるというのは一つの手かと思います。意外とそこからやる気になったりするので。

4月にはいり、さすがに自分の行きたい大学を考える時期だと感じ、志望校をしっかり絞りました

(遅いですが)その時自分のバックグラウンドを踏まえ、2科目受験型で研究者を求めている名古屋大学と神戸大学を志望校に決め、過去問を入手しました。(もし、この2つがだめだったら、秋田大学を受験しようと当時は思っていました)。正直、自分が受験勉強を始めたのが遅かったこともあり、物理化学まで課される4科目型は間に合わないと感じたので、その時点でTOEFLと物理化学がある大学は全て切りました。

勉強としては4月中にKALSの完成シリーズを完璧にしようと思い、大体4周くらいしたと思います。英語に関しては過去問の出典を参考にScience Dailynature誌New England Journal of Medicine (NEJM)誌の記事を読み、分からない単語はExcelでまとめ見返せるようにしていました。(記事は一部有料です。)

5月

KALSテキストの実践シリーズを5月から始めました。5月中に3~4周し、完璧にしたと思います。

英文は毎日読み、できる限り音読していました。仕事でも論文を読む機会が多かったので、正直どの程度読めばというのは参考にならないかもしれませんが、受験生の中でも読んでいたほうかもしれません。KALSの実践シリーズともなると独学では少し難しいなと感じながら、分からないところは一つ一つ丁寧に調べ、自分なりに工夫した図を描きながら、他人に説明できるようにしていました。この時も、この語句は過去に論文で見かけたことがあるなぁなどと思っていたので、やはり医学部編入試験は製薬企業や研究者出身の方は有利な試験だと思います。おそらくですが、そのような背景がなければ独学では合格できなかったと思います。

6月

一通り命科学の範囲を習得し終わり、自分の苦手な範囲をまとめながら基礎から復習していた時期です。

7月には名古屋の試験が始まるので、過去問も解きながら、出題範囲の周辺知識を補填していました。

また、名古屋大学は統計が課されるため、過去問を基に統計学の勉強もこの時期に開始しました。ネットでいろいろと調べながら過去問の解答までのプロセスを自分で書けるようにしていました。振り返ってみると、名古屋大学の敗因はここだと思います。統計が本番で全く解けませんでした。過去問ベースで勉強するのも当然大事ですが、演習量が足りなかったです。統計学の独学は自分には厳しかったと気付くべきでした。

また、この時期は出願に向けて研究概要や志望動機などの提出書類に時間を割いていました。両方1000字程度で割と長めなので、結構苦戦します。就活経験者であればESの書き方は非常に参考になると思います。自分はしませんでしたが、添削はしてもらうほうがいいです。特に、周りに医師や大学の教員がいればその方にお願いするのがお勧めです。もしお願いできない場合は、各種予備校や家庭教師のサービス使用するのもいいと思います。

7月

あっという間に名古屋大学の試験本番を迎えました。社会人になるとあまり試験という試験はなかったので久しぶりの緊張感のある雰囲気にのまれそうでした。最初の英語は大きな手ごたえはなかったものの、耐えたかなという印象です。生命科学の点数さえしっかり解ければ、2次には進めるだろうなという感触でした。名古屋大学の英語に関しては近年全て選択肢での出題となり、簡単な文法問題も出題されるため、おそらく受験生の中で大きな差はつかないと思います。

次の自然科学の試験が終わった直後に落ちたと思いました。統計が全く解けず、問題演習が明らかに不足していました。ですが、今となってもどの教材を勉強すればよかったという答えがないです。その時に独学での勉強の限界を感じ、少し落ち込みましたが、すぐに神戸の試験があったので切り替えるように心がけました。

8月

8月に入ってすぐに神戸大学の1次試験がありましたが、神戸に向けて特別な対策はしませんでした。正直、名古屋大学が第一志望だったこともあり、神戸大学に気持ちが向いていなかったのもあると思います。

神戸大学は英語1科目120分です。大問2つで各大問に1つの論文。内容を問う記述がメインの形式となります。題材は生命科学系や臨床試験結果等を扱った論文で、実際の論文の図や表なども出てきます。英語が得意であっても、日頃から論文の形式に慣れていないと解きにくいかもしれません。自分が受けた年は過去の傾向とは異なり、虫歯に関する論文が出題され、非常に読みづらかった記憶があります。口腔系の専門用語が全く分かりませんでしたが、必死に食らいついたという感じでした。とはいえ試験終了後はわりと手応えもあり、2次には進めるだろうなという感触でした。

8月中旬の合格発表まではとりあえず何も勉強しませんでした。大学受験の時もそうでしたが、とにかくもう勉強しなくていいという開放感がすごかったです。当時は秋田大学を受けるかどうか、まだ悩んでいました。

8月中旬に合格をいただき、すぐに9月初めの2次試験(10分間のプレゼンテーション)に向けて資料を作り始めました。わりとこの辺りも学会報告で慣れていたので、スムーズに進んだと思います。内容としては直近の研究概要と医師を志した理由になります。時間の割り振りには少し悩みましたが、大体7分間で研究概要、3分間で志望動機を話すようにスライドは作製しました。実際に発表してみてちょうどいい配分だったと思います。

9月

神戸大学の2次試験は教員10名程度の前で10分間のプレゼンテーション後に10分間の質疑応答です。自分の場合、「なぜそこまでして医師になりたいのか」、「医師になってから具体的にどうしたいか」を深堀りされました。あまり研究に関しては聞かれなかった気がします。製薬企業の研究職ということで、とにかく面接官の感触は良かったです。今後、薬の未来はどうなるのかといった質問もあり、結構興味を持っていただけたと思います。神戸大学の感触が良かったこともあり、秋田大学の願書は提出しませんでした。

総括

結果、経歴に支えられた編入試験だったと思います。

第一志望合格とまではなりませんでしたが、短い勉強時間で合格できたことは本当に運が良かったです。大規模な試験は別ですが、医学部学士編入試験のように倍率が20~40倍にもなるような試験はやはり運の要素も強くなってくると思います。振り返ってみても2校しか受けていないのはとても危ない橋を渡ったなと思います。平均5校くらい受験するのが一般的なのでその点も反面教師としていただきたいです。

長くなりましたが、参考になりましたでしょうか?

まとめますと、医学部学士編入試験は大学との相性がとても大切です。

もし、大学で物理専攻だった方は物理が課される大学を受験するべきですし、帰国子女の方は2科目型で英語の配点が高い大学に注力すべきだと思います。高校生が受ける一般入試と違い、皆さんの専門性があると思うのでそれを利用しないのはもったいないです。30校あるからといって闇雲に受験するのではなく、まずは情報をしっかり集め、自分に合った志望校を模索し、徹底的に対策するのが短期間で合格するコツだと思います。勉強大変だと思いますが頑張ってください。

おわりに

いかがでしたか?

本記事が、医学部学士編入を目指される皆さんの理解に少しでも役立ってくれれば幸いです。

スプリング・オンライン家庭教師には、実際に医学部学士編入を経験し、指導経験が豊富な講師が多数在籍しています。

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