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研究計画書の例文 理系|先行研究・意義・方法の書き方

【大学院入試 研究計画書の書き方】ー先行研究、研究の独自性・意義、研究の方法ーの記事アイキャッチ画像。大学院入試対策の出願資格・試験科目・対策を示す図解。
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理系の研究計画書の例文は、先行研究で分かっていること、残る課題、研究の意義、その課題を確かめる方法をつないで読むと、自分の計画に応用できます。完成した文章をまねる前に、どの主張をどのデータで支えるのかを整理することが大切です。

大学院入試の研究計画書における「先行研究」とは、自分が取り組みたい研究テーマに関連する既存の学術研究のうち、ある論点に対して問いを立て、独自の学術的な答えをすでに示しているものを指します。研究計画書の書き方で最も差がつくのは、先行研究をただ紹介するだけでなく、そこに対して批判的検討を加え、自分の研究の独自性・意義・研究の方法へとつなげられているかどうかです。先行研究の要約だけで終わると、自分が何を明らかにする計画なのかが読み手に伝わりにくくなります。

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本記事では、研究計画書を構成する「先行研究」「研究の独自性(オリジナリティ)」「研究の意義」「研究の方法」という4つの要素について、理系の骨子例と冷戦史研究という具体例を通じて解説します。研究計画書の基本的なレイアウトについては研究計画書の基本事項を、問題意識・研究テーマ・研究上の問い(リサーチクエスチョン)の立て方については問題意識、研究テーマ、研究上の問いを先に確認しておくと、本記事の内容がより理解しやすくなります。

先行研究への向き合い方や独自性・意義の示し方は、文系・理系を問わず研究計画書全体の説得力を左右する部分であり、多くの受験生がどう書けばよいか分からず悩むポイントでもあります。特に、先行研究をどこまで批判的に読み込めているか、独自性と意義を切り分けて説明できているかは、面接での質疑応答に備えて説明を整理しておきたい部分です。分野を問わず応用できる考え方を、具体例とともに整理していきます。

研究計画書の作成では、先行研究の探し方から批判的検討の型、独自性・意義の言語化、研究の方法(分析手法)や使用予定の資料・データの明示まで、一つ一つの要素を丁寧に積み上げていく必要があります。独学で取り組む場合は、どこまで書き込めば十分なのか判断がつきにくく、時間ばかりが過ぎてしまうことも少なくありません。大学院入試・院試の対策を、研究計画書の添削から専門科目・英語・面接まで専門講師とマンツーマンで進めたい方は、大学院入試対策コース(無料相談あり)もご覧ください。

以下の骨子例は本記事のために作成した架空の研究計画であり、実在する論文の結論や合格者の原稿ではありません。例文中の先行研究の記述は、文章をつなぐための仮定です。自分の提出原稿では、実際に読んだ文献の内容と書誌情報に置き換えてください。募集人員・試験日程・配点・学費や提出様式は大学と年度ごとに異なるため、志望校の公式の募集要項で必ず確かめてください。

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目次

研究計画書の例文(理系)|先行研究→意義→方法の骨子を先に見る

理系の例文を読む際には、実験装置や解析ソフトの名前よりも、問いと検証手続きの対応に注目してください。ここでは提出原稿の全文ではなく、先行研究から方法へ進む骨子を示します。例文の結論ではなく、論理のつなぎ方を自分の研究に移すことが目的です。実験系とデータ解析系では得られる証拠の性質が異なるため、同じ書き方をそのまま転用しないようにします。

実験系の骨子例:高分子膜の吸湿と物性の関係

以下は、材料の挙動を実験で調べる架空の計画です。比較対象を設定し、測定条件をそろえる理由まで書く例として読んでください。実在の材料について述べた研究成果ではありません。

先行研究の整理の例文:高分子膜の機械特性に関する研究では、成膜条件と強度の関係が検討されてきた。一方、保管環境の変化に伴う吸湿が測定結果に与える影響については、試料の履歴をそろえた比較が必要である。

問い・独自性の例文:本研究では、同じ成膜手順で作製した膜を異なる湿度環境で保管し、吸湿状態と機械特性の関係を検討する。成膜時の条件と保管時の条件を区別し、物性変化を解釈する際に考慮すべき条件を明らかにすることを目指す。

意義の例文:吸湿状態によって特性の評価がどのように変わるかを整理することで、材料間の比較に必要な測定条件の理解に貢献できると考える。また、使用環境に応じた材料評価を検討するための基礎的知見を提供する。

方法の例文:試料の組成、膜厚、作製手順を記録し、保管条件を変えた試料群と基準条件の試料群を比較する。質量変化と機械特性を測定し、試料間のばらつきと測定のばらつきを区別して解析する。装置の利用条件と測定範囲を確認し、試料が損傷する場合は測定手順を見直す。

この例では、保管条件の影響を問うために、組成や作製手順の違いが結果に混ざらない設計を置いています。変えたい条件と、そろえるべき条件を分けて書くと、比較の理由が伝わります。実際の提出原稿では、利用できる装置や試料、先行研究で採用された測定法を調べ、なぜその方法で問いに答えられるのかを具体化してください。

予想に反する結果が出た場合の扱いも考えます。湿度環境による差が見られなければ、直ちに影響がないと断定するのではなく、試料の状態が十分に変わっていたか、測定の精度が目的に合っているかを確認します。この検討を添えることで、期待した結論を出すための実験ではなく、仮説を吟味するための実験として計画を説明できます。

データ解析系の骨子例:設備の異常検知と運転条件

次は、設備から得られた記録を用いて予測手法を検討する架空の例です。既存データがあるだけでは研究の実施は決まりません。利用の許可、異常の定義、記録の欠損、評価に使える情報の有無を確認したうえで、解析の問いを絞り込みます。

先行研究の整理の例文:設備の異常検知に関する研究では、センサ記録から異常を識別する手法が検討されてきた。ただし、運転条件が変わった場合にも同じ判断基準が有効かどうかは、学習時と評価時の条件を区別して検討する必要がある。

問い・独自性の例文:本研究では、運転条件の違いが異常検知の判断に与える影響を調べる。同じ条件内での評価と、異なる条件に適用した評価を比較し、手法の適用範囲と誤検知が生じる状況を整理する。

意義の例文:平均的な予測性能だけでは見えにくい失敗の傾向を明らかにすることで、異常検知手法を設備の運用に適用する際の判断材料を提供できると考える。性能の改善だけでなく、利用を控えるべき条件の把握にも意義がある。

方法の例文:使用許諾を得たセンサ記録を用い、設備の運転状態と保守記録を照合して評価対象を定める。時系列の順序と設備のまとまりを考慮して学習用・評価用データを分け、基準となる手法と提案手法を同じ条件で比較する。見逃しと誤検知を区別し、運転条件別に結果を検討する。

学習に使った情報が評価側へ漏れない設計を示すことが、この骨子の要所です。同じ設備の近接した記録を無作為に分けると、実際の運用より容易な条件で評価してしまう可能性があります。どの場面で使う手法なのかを先に決め、その場面を再現する分け方を選びます。前処理の基準も学習側で決め、評価データの特徴を見ながら都合よく変更しない計画が必要です。

異常の正解ラベルをどのように得るかも説明します。保守記録とセンサ記録の対応が曖昧なら、モデルの問題と記録の問題を切り分けられません。ラベルの信頼性を点検し、判断が難しい記録をどう扱うかを事前に決めます。手法の名称を増やすよりも、比較が成立する条件を示すことが研究方法の説得力につながります。

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博士課程の骨子例:既存モデルの成立条件を検証する

博士課程の研究計画書では、これまでの研究で得た知見と、そこから先に残る学術的な課題との接続を意識します。以下も架空の例です。実際の研究歴や成果がない部分を、自分の実績として書き込んではいけません。

既往研究との接続の例文:これまでの研究では、一定の保管環境における高分子膜の物性変化を記述するモデルを検討してきた。しかし、環境が変動する場合にも同じ説明が成り立つかは検討が残されている。

博士課程で取り組む問いの例文:本研究では、環境変動に対する材料応答の履歴依存性に着目し、既存モデルの適用条件を検討する。モデルの予測と観測が一致しない条件を特定し、どの仮定を見直す必要があるかを明らかにする。

意義と方法の例文:条件の異なる実験結果を共通の枠組みで比較し、説明可能な範囲と限界を示すことを学術的な貢献とする。既存データの再解析、追加実験、モデル比較を段階的に進める。追加実験の設計は再解析で得た課題に基づいて絞り込み、観測と整合しない場合も仮定の検討結果として整理する。

博士課程の例で重要なのは、実験を増やすという作業量の説明に終わらせないことです。既存の説明をどこまで更新するのかを研究全体の問いにすると、各作業の位置づけが明確になります。研究の途中で見通しが変わる場合に備え、中心となる課題と、追加的に検討する課題も区別してください。

整理する要素修士課程の計画で意識する粒度博士課程の計画で意識する粒度
先行研究との関係取り組む論点と扱う範囲を絞り、既存研究との違いを説明する研究領域の議論の中で、これまでの成果と残る課題を位置づける
問いと貢献手持ちの知識と環境で検証可能な問いを設定する個別の課題をまとめる学術的な問いと、到達したい貢献を示す
方法と工程対象・比較・手順・実施条件の対応を示す課題同士の依存関係、検証の段階、代替経路まで整理する
限界の扱い計画の中で扱える範囲と扱えない範囲を分ける結論が成立する条件と、研究全体に残る限界を説明する

この表は計画を整理するための観点であり、大学共通の審査基準ではありません。求められる様式や研究歴の記載方法は志望先の案内に従います。修士でも独自性の説明は必要で、博士でも実行可能な範囲に問いを絞る必要があります。課程名だけで内容の難しさを決めず、募集要項や研究室の研究内容と照らし合わせて調整しましょう。

骨子から自分の文章に置き換える順番

まず例文の研究対象を自分の対象に置き換えるのではなく、自分が読んだ文献の結論と限界を整理します。そのうえで、限界のうち自分が扱える部分を問いにし、その問いに対応するデータと方法を選びます。例文に合う根拠を探すのではなく、根拠に合う計画を書くという順番を守ることが大切です。

書き換えた後は、先行研究の説明に使った名詞が方法の段落でも同じ意味で使われているかを見ます。たとえば「耐久性」を問うと書きながら、方法ではその場の強度だけを測る計画になっていれば、両者を結ぶ説明が不足しています。何を観測すれば問いに答えたことになるのかを短く説明できる状態にしてから、指定の様式に整えてください。

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研究計画書における「先行研究」とは何か

そもそも(先行)研究とは何でしょうか。人によって定義の仕方は異なりますが、本記事では「何かしらの研究領域における特定の論点に取り組むため、問いを立て、その問いに対して独自の学術的な答えを示したもの」として定義します。

ここでは冷戦史研究という研究領域を例にとって解説します。冷戦史研究には、冷戦の起源を巡る論点、冷戦の終焉を巡る論点、冷戦の変容を巡る論点、冷戦における核兵器の役割を巡る論点、冷戦と第三世界の関係性を巡る論点、冷戦と社会運動の関係性を巡る論点など、実に多くの論点が存在しています。

冷戦史の研究者たちは、それぞれの論点に取り組むために問いを立て、その問いに答えようとします。たとえば冷戦の起源を巡る論点の場合、「冷戦はなぜ始まったのか」という問い(Main Question)を立てることができます。また、その問いに答えるために、「ヤルタ会談に際して、米英ソの指導者は戦後国際秩序のあり方をどのように描いていたのか」、「1940年代後半、米ソの外交政策決定者は相手国の行動をどのように認識していたのか」というような小さな問い(Sub Questions)を立てることもできます。

Main QuestionとSub Questionsの関係

なお、この小さな問い自体が論点になっている場合も多くあります。そして、研究計画書の中で立てるべき問いは、せいぜいこのような小さな問いです。修士課程の研究計画書でMain Questionそのものへの答えを出し切ろうとすると、範囲が広すぎて実現可能性(feasibility)が疑われてしまうため、Sub Questionsのレベルに絞り込むことが重要になります。

そして、「冷戦はなぜ始まったのか」という問いに対して、冷戦史研究者たちはそれぞれ伝統主義、修正主義、ポスト修正主義という3つの立場に立ちつつ、独自の学術的な答えを出しました。伝統主義の立場をとる論者は、冷戦が始まった原因をソ連側(スターリン)に求めたのに対して、修正主義の論者は、その要因をアメリカ側に求めました。他方、ポスト修正主義の論者は、冷戦が始まった原因をアメリカ、ソ連のいずれにも単純には求めず、第二次世界大戦後にヨーロッパの地で生じた「力の真空」状態の中で、米ソ両国が対峙することになり、相手に対する不審や誤解を重ねる中でやむを得ず冷戦が始まったという議論を展開しました。

先行研究という言葉が指すもの

このように、冷戦史研究という研究領域には冷戦の起源を巡る論点が存在し、その論点に取り組むため、研究者たちは「冷戦はなぜ始まったのか」という問いを立て、それぞれ異なる独自の学術的見解を出しました。やや単純化して言えば、この学術的な答えこそが(先行)研究と呼ばれるものです。研究計画書を書く際には、自分の関心領域にどのような論点があり、その論点に対してどのような答えがこれまで出されてきたのかを、まず把握することが出発点になります。

研究計画書の中で先行研究に割く分量の目安

研究計画書全体の分量を考える際は、先行研究の整理と自分の計画の説明の両方に紙幅を確保します。先行研究の紹介に紙幅を使いすぎると、肝心の独自性・意義・研究の方法を書く余白がなくなってしまいます。先行研究は「網羅すること」ではなく「自分の論点を際立たせること」が目的だと意識すると、書きすぎを防ぎやすくなります。募集要項に明示的な配分規定がある場合はそちらを優先してください。

問いの階層を理系のテーマに当てはめる

問いの大きさは、名称だけで決まるものではありません。Main Questionを研究全体の問い、Sub Questionsをそれに答えるための個別の問いと考えると、理系の計画にも応用できます。大きな関心を、観測や比較によって答えられる問いへ分けることが、この整理の役割です。

関心領域:高分子材料の安定性
↓
Main Question:環境変動は材料の特性にどのように関わるか
↓
Sub Questions:吸湿状態はどのように変わるか/状態の変化と機械特性は対応するか/測定条件の違いをどう区別するか
↓
実施する研究:試料の作製履歴と保管条件を管理した比較実験

矢印の各段階で、前の問いに答えるために次の問いが必要かを確認してください。個別の問いが増えても、研究全体の問いに関係しなければ計画は散漫になります。反対に、個別の問いの答えをそろえても大きな問いに届かないなら、中心となる問いの範囲を狭めます。研究領域そのものを説明し尽くすのではなく、自分の研究が担う部分を読み手に示しましょう。

先行研究の探し方と読み方の基本

先行研究への批判的検討に入る前に、そもそも先行研究をどう探すのかで悩む受験生は少なくありません。ここでは、専門的な研究データベースを使ったことがない方でも取り組みやすい探し方の基本を整理します。

データベース・書誌情報からの探し方

もっとも一般的なのは、CiNii Researchや各分野の学術データベース、Google Scholarなどで、自分の関心テーマに関わるキーワードを日本語・英語の両方で検索する方法です。検索でヒットした論文の中でも、被引用数が多い論文や、比較的新しいレビュー論文から読み始めると、その研究領域全体の見取り図をつかみやすくなります。レビュー論文には、その分野でどのような論点が議論されてきたかが整理されていることが多いため、自分でゼロから論点を洗い出すよりも効率的です。

大学の図書館やオンライン蔵書検索(OPAC)を使えば、関連する学術書にもアクセスできます。学部の卒業論文とは異なり、大学院入試の研究計画書では、教科書レベルの参考書だけでなく、専門書や学術論文を先行研究として挙げることが期待されます。

限られた時間で効率よく読むコツ

受験勉強と並行して先行研究を読み込む時間を確保するのは簡単ではありません。1本の論文をすべて精読しようとすると時間がかかりすぎるため、まずは要旨(アブストラクト)・研究の目的・結論の3か所を先に読み、自分の関心と関連が深いと判断できた論文だけを本文まで読み込むという読み方が効率的です。関連が薄いと判断した論文は無理に全文を読まず、次の候補に時間を使う方が、限られた準備期間の中では合理的です。

指導教員候補の業績から辿る方法

志望する研究科の教員の業績一覧(researchmapや大学の教員紹介ページ)を確認し、そこで引用・参照されている論文を辿っていく方法も有効です。志望する指導教員の研究関心と自分の研究テーマが近い場合、教員の論文の参考文献リストが、そのままその領域における主要な先行研究のリストになっていることも珍しくありません。

先行研究の探し方に唯一の正解はありませんが、複数の経路(データベース検索・レビュー論文・教員の業績)を組み合わせることで、偏りの少ない見取り図を作ることができます。なお、研究計画書で取り上げる先行研究は、本数だけで決めず、自分の問いを位置づけるために必要な文献を選びます。紹介しきれない文献も調査記録には残し、本文では中心となる議論とその根拠を整理しましょう。

文系(人文・社会科学)と理系での探し方の違い

文系、特に歴史学・政治学・社会学などの分野では、単著の学術書がその領域の議論を集約していることが多く、まずは定評のある概説書・専門書から読み始めて全体像をつかむのが効率的です。個別の論文だけを追うと、議論の文脈を見失いやすいため、章末や巻末の参考文献リストを併せて確認する習慣をつけましょう。

一方、理系や実証系の社会科学(心理学・経済学の一部など)では、学術雑誌に掲載された個別論文の蓄積が先行研究の中心になります。この場合は、CiNii ResearchやGoogle Scholarでの検索に加えて、実験計画や統計処理の方法が自分の研究で再現・応用できるかという観点でも先行研究を読み込む必要があります。分野によって先行研究の「単位」(書籍中心か論文中心か)が異なる点を理解しておくと、探し方に迷いにくくなります。

学術データベースを使い分けて調査記録を残す

探す場所使い方読む前に確認すること
CiNii Research国内の研究情報を探し、関連する書誌や所蔵情報をたどる論文・図書・研究データなど資料の種類と本文の入手先
Google Scholar日本語・英語の語を組み合わせ、関連研究や引用関係を広く探る出版元、資料の種類、公開版と出版版の違い
J-STAGE登載された学協会誌などの論文を探し、掲載誌の文脈を読む記事種別、本文、訂正情報、参考文献

検索で見つかったことと、内容を根拠として使えることは別です。検索結果の要約だけで先行研究の主張を決めないようにしてください。本文が読めない場合は図書館の案内などで入手方法を調べ、読めた範囲と読めていない範囲を調査メモで区別します。被引用数が多くても、自分の問いへの適合性や測定の妥当性は本文で判断する必要があります。

検索語は、対象、現象、方法を分けて記録すると再検索がしやすくなります。高分子膜なら材料名だけでなく、吸湿、保管環境、機械特性に対応する語を組み合わせます。同義語や英語表記を変え、どこまで調べたかも記録してください。後から別の論文を発見した際に、何が検索から漏れていたのかを説明できるためです。

読書メモには、著者と書誌情報、問い、対象、方法、結論、著者自身が述べた限界、自分が考えた検討課題を分けて残します。著者が認めた限界と、自分の推測を混ぜないことが重要です。探し方と入手方法を詳しく確認したい場合は、本文末の「先行研究の探し方・入手の仕方」を参照してください。

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先行研究に対する批判的検討の書き方(5つの視点)

研究計画書の中では、自身が取り組みたい学問領域に存在する論点や、その論点に取り組むために立てた問いに関わる先行研究を探し、そのうえでそれらに対して批判的検討を加えていくことが求められます。その際に大切なのは、Ⅰ 先行研究の独自性や意義を指摘することと、Ⅱ 先行研究の限界を指摘すること(批判・修正・補足して考えるべき点はないかを指摘すること)の両方です。

Ⅰ 先行研究の独自性や意義の指摘

この点についてはそこまで詳細に述べる必要はなく、たとえば説明用の文型として「検討した研究は学習過程の変化を明らかにしており、授業設計を考えるうえで意義がある。他方、別の研究は家庭環境を扱っており、学習を支える条件の理解に役立つ」のような形で表現することができます。紙幅が限られている場合や、先行研究を列挙し過ぎることで全体の構成が悪くなる場合には、「これまでの先行研究では、〜という点については明らかにされている」のような表現方法をとっても問題ありません。

Ⅱ 先行研究の限界を指摘する5つの視点

先行研究の限界を指摘する方法はいくつかありますが、代表的な視点を整理すると次の表のようになります。

視点内容
①問われるべき重要な論点他に問われるべき論点はないかという視点
②学術的見解の妥当性先行研究の中で示されている学術的見解は妥当かという視点
③焦点を当てていない対象先行研究が焦点を当てていない研究対象は他にないかという視点
④研究手法の問題点先行研究が使用している研究手法に問題や不十分な点がないかという視点
⑤資料・データの問題点先行研究が実証のために使用している資料やデータに問題や不十分な点がないかという視点

①の視点については特に注意が必要です。先行研究を調べ、「この論点については誰も取り組んでいない。自分が初めてだ」という考えに至った場合でも、そこに落とし穴があります。つまり、その論点についてこれまで取り組まれてこなかったのは、研究者たちの間でそもそもそれが論じるに値しない論点であるとみなされてきたか、論じるには値するが実証に必要な一次資料がないと諦められてきたからである可能性があるためです。

②の視点については、たとえば特定の論点についての学術的見解A、B、Cについて、それぞれ単独では説得力のある見解の場合でも、A、B、Cを比較しつつ関連づけて検証してみると論理的矛盾が生じる場合もあります。その場合、やはりDの見解こそ正しいのではないか、というように先行研究を批判できるわけです。③〜⑤の視点は、先行研究が扱っていない対象・手法・データという「抜け」を探す作業であり、①②と組み合わせて使うことで、批判的検討にバランスが生まれます。

教育学分野での批判的検討の例

冷戦史研究以外の例も見ておきましょう。たとえば教育学分野で「アクティブラーニングの学習効果」という論点を扱う場合、先行研究のA氏が「大学生を対象にした調査で学習効果が確認された」と報告していたとしても、調査対象が特定の学部・特定の科目に偏っているという限界(③の視点)を指摘できれば、「異なる学部・異なる科目でも同様の効果が見られるか」という新しい問いにつなげることができます。このように、分野が変わっても①〜⑤の視点の使い方の基本は同じです。

批判的検討の文章を書く練習の仕方

批判的検討は、いきなり研究計画書用の文章として書こうとすると筆が止まりがちです。まずは「検討した研究は学習者の理解の変化を論じているが、授業外の学習環境については検討の余地がある」という一文型のテンプレートに、読んだ先行研究を一つずつ当てはめていく練習から始めると取り組みやすくなります。複数の先行研究について同じ型で書き出してみると、共通する限界や、逆に先行研究同士が矛盾している点が見えてくることがあり、それが独自性の手がかりになります。

理系の批判的検討:測定条件・サンプル・再現性

理系の先行研究では、結論だけでなく、その結論を支えた測定条件を読みます。装置の特性、試料の作製履歴、温度や湿度の管理、解析時の前処理が変われば、同じ対象でも比較の意味が変わるためです。先行研究の限界は、結論が成り立つ条件として記述すると、単なる否定を避けられます。

たとえば、ある条件で高い強度を示した材料を、別の使用環境でも優れていると一般化できるかを検討します。論文がその使用環境を扱っていない場合、「研究が誤っている」と書くのではなく、「異なる保管環境への適用には検討の余地がある」と限定します。測定条件の違いを指摘するなら、自分の計画でどの条件を変え、何をそろえるかまでつなげてください。

サンプルについては、数量の大小だけでなく、どの集団や条件から選ばれたかを確認します。同じ製造工程の試料だけで得た結果を、工程の異なる材料全体に広げてよいかという問題です。データ解析でも、特定の設備の記録だけで学習したモデルを他の設備へ適用できるかを区別します。対象を増やすこと自体を目的にせず、どの一般化を検討したいのかを示しましょう。

再現性を論じる際は、手順をたどれるか、別の条件でも同じ結論が支持されるかを分けます。手順の説明が足りない場合は補足資料を調べ、それでも判断できなければ、記載が不足している範囲を限定して述べます。自分が再現できなかったというだけで原論文を否定せず、試料、装置、実装、前処理の違いを点検する計画にします。

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研究の独自性(オリジナリティ)の示し方

先行研究の限界を指摘することができれば、自ずと自身が行いたい研究の独自性(オリジナリティ)も明確になるはずです。自分が行おうとしている研究は、従来の研究とはどのように異なるのかを示しましょう。

完全な独自性を出せる段階ではないという前提

もっとも、完全な意味での独自性を出せるのは、せいぜい修士論文の提出時、あるいは博士後期課程への進学後である場合が多いです。研究計画書の提出段階で、十分な先行研究に対する批判的検討を済ませ、自信を持って自分の研究の独自性を主張できる学生は稀でしょう。そして、その点についてはほとんどの大学教員も心得ています。

しかしだからと言って、研究計画書の中で研究の独自性を示す必要がないという訳ではありません。そもそも、大学側が研究計画書を通じて知りたいのは、学生が研究論文の冒頭で書くべき内容を理解し、それをコンパクトにまとめられる能力があるのかという点でもあります。一般的な研究論文の冒頭では、研究の独自性や意義などを書く場合が多く、修士論文や博士論文ではこれが必須の要素になります。

独自性が特に重視される進学先

であるならば、できる限りでよいので、先行研究に対する批判的検討を行い、完全なものでなくても研究の独自性を示した方が、採点者である大学教員に対して良い印象を残すことができます。ちなみに、難関大学や旧帝国大学などへの進学を検討されている方や、将来的に博士後期課程への進学を希望される方にとっては、研究の独自性や意義を示せるかどうかが極めて重要になってきます。それらをしっかりと示せるかどうかが、研究計画書に対する評価を大きく左右します。

独自性を言葉にするときの型

独自性を文章にする際は、「先行研究では〜という視点(対象・手法・データ)が扱われてこなかった。本研究では、この点に着目し〜を明らかにすることを目指す」という型を使うと、批判的検討との論理的なつながりが崩れにくくなります。独自性は「先行研究の限界」を裏返した形で書くと、唐突な主張に見えず、審査する側にも根拠が伝わりやすくなります。逆に、先行研究への言及を経ずにいきなり「私はこの点に独自性がある」と書いてしまうと、根拠のない自己主張のように読まれてしまうため注意が必要です。

人文系と理系で独自性の示し方はどう変わるか

人文系の研究では、既存の解釈枠組みや概念に対して新しい視点を提示すること自体が独自性になりやすい一方、理系や実証系の研究では、先行研究が扱っていない対象・条件・手法を扱うことが独自性として認識されやすい傾向があります。たとえば「これまで動物実験でしか確認されていなかった現象を、ヒトを対象にした実験で検証する」というように、対象を変えること自体が独自性になる場合もあります。自分の分野で独自性がどのような形で評価されやすいかを、先行研究の書き方から観察しておくと、独自性の主張に説得力を持たせやすくなります。

新規性がないと感じたときの見直し方

研究計画の段階では、既存研究と無関係な完全な独自性は不要です。必要なのは、既存研究に何を加え、どの問いに答えようとしているかを説明することです。対象を変える、別の条件で確かめる、説明の前提を再検討するなど、差分の作り方は複数あります。ただし、対象や手法が違うだけでは、その違いを調べる理由は伝わりません。

対象の違いが結論を左右すると考える根拠を示してください。材料の種類を替えるなら、その構造の違いが着目する現象にどう関わるのかを説明します。手法を替えるなら、従来は区別できなかった状態を区別できるなど、問いへの答え方がどう変わるかを述べます。この理由が書けない場合は、独自性を強く主張する前に問いの設定に戻ると整理しやすくなります。

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研究の意義をどう書くか【例文つき】

よく研究の独自性を示すだけの人がいますが、それでは不十分です。「私の研究はこれまでの先行研究と違って、〜に焦点を当てるんだ」ということを示しても、「それで?」「それをすることが何で重要なの?」ということになりかねません。

独自性と意義はセットで示す

これまでの研究との違いを示すだけでなく、その違いに焦点を当てて研究することで、自らが取り組む学術領域においてどのような新しい知見を提示できるのか、どのような学術的な貢献ができるのかという点についても併せて示す必要があります。独自性は「何が違うか」、意義は「その違いにどんな価値があるか」を答えるものだと考えると、両者の役割の違いが整理しやすくなります。

研究の意義を書くときの表現パターン

「まだ研究を始めていない状況で、研究の意義と言われても」という疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。しかし、この点について大学教員が知りたいのは、確定的なものではなく期待されるものに過ぎません。あくまで、どのような研究の意義を見出せそうなのかを示唆すれば十分です。一例ですが、下記のような書き方ができます。

  • 「本研究を通じて、〜のような知見を得ることが期待できる」
  • 「〜のような示唆を得ることができるだろう」
  • 「教育研究において、授業内の活動に加えて家庭での学習環境に焦点を当てることで、学習効果を支える条件の理解に貢献できると考える」

いずれの表現も、「まだ確定していないが、こういう方向性の知見が得られそうだ」という見通しを示す点で共通しています。断定を避けつつ、読み手に研究の価値が伝わる書き方を意識するとよいでしょう。

理論研究と実証研究で異なる意義の書き方

理論的な研究(概念整理や思想史的な検討が中心の研究)では、「既存の概念枠組みでは説明できない事象を、新しい枠組みで捉え直せること」自体が意義になりやすいです。一方、実証的な研究(調査やデータ分析が中心の研究)では、得られたデータが政策・実務にどう活用できるかまで示せると、意義がより具体的に伝わります。自分の研究がどちらの性格に近いのかを意識して、意義の書き方の重心を調整するとよいでしょう。

学術的意義と社会的意義を分けて整理する

観点説明する内容書く際の注意
学術的意義既存の理論・説明・測定法の理解に何を加えるか先行研究の課題と、得られる知見との対応を示す
社会的意義実務・技術・政策などの判断にどのように役立つか研究結果から実用化までに必要な検討も区別する

基礎研究では、すぐに実用化できることを強調する必要はありません。研究で得られる知見から説明できる範囲で意義を書くことが重要です。社会的意義を述べる場合も、実験で性質を確かめることと、製品として使えることを同一視しないようにします。学術的な貢献を具体化したうえで、将来の応用との接点を控えめに添える書き方ができます。

理論・実証・応用の文例

以下は文章構成を示すための架空の文例です。理論研究では、説明の範囲を広げるのか、成立条件を限定するのかを明確にします。実証研究では、観測によって何が判断できるようになるかを述べます。応用研究では、誰がどの判断に使える知見なのかを整理します。

理論の例文:本研究は、材料応答を説明する既存モデルについて、環境変動を考慮した場合の成立条件を整理する。これにより、異なる観測結果を同じ枠組みで解釈できる範囲を明確にすることが期待できる。

実証の例文:本研究では、試料の履歴をそろえた比較を通じて、保管環境と物性変化との関係を検討する。測定条件の違いによる変動と材料自体の変化を区別するための知見を提供することを目指す。

応用の例文:本研究は、異常検知が誤った判断を示しやすい運転条件を整理する。運用担当者が検知結果を解釈し、追加点検の必要性を判断する際の基礎資料となることが期待できる。

いずれも、役立つという結論だけで終わらず、理解や判断がどう変わるかを書いています。反対に「社会の発展に貢献する」のように範囲が大きい表現は、自分の方法で得られる結果に立ち戻って具体化してください。予想した結果が出なかった場合にも、適用条件や説明の限界を示す意義があるかを考えると、結論を先取りしない文章になります。

研究の方法(分析手法)の選び方【理系・文系別】

問題意識、研究テーマ、研究上の問い、研究の独自性と意義など研究内容のメインの部分が明確になったら、研究を実施していくための手法についても考え、研究計画書の中に反映させなければなりません。

分野で一般的に用いられる分析手法を把握する

たとえば政治学の分野では、次の表のような分析手法が一例として整理されることがあります。これは特定の学術団体による公式分類ではなく、指導実務上の整理の一例として捉えてください。

分析手法内容
思想概念分析などを通じた研究方法
計量統計学などを駆使した実証的な分析
数理ゲーム理論などを用いて理論構築を行う研究方法
歴史史料の収集、読解、分析を行う分析方法

ご自身の専門分野ではどのような分析手法が使われることが一般的なのかについて、先行研究や教科書などを通じて把握するようにしてください。そのうえで、自分が立てた研究上の問いに答えていくためには、どのような分析手法を採用するのが最適であるのかをよく考えるようにしてください。採用するべき分析手法は必ずしも1つである必要はありません。研究上の問いに答えるうえで、複数の分析手法を採用することが妥当であるならば、その旨を記載しても問題ないでしょう。

他分野での分析手法の考え方

政治学以外の分野でも、考え方の基本は同じです。たとえば経済学では計量経済学的な手法(回帰分析など)が主流である一方、経営学では特定の企業・事例を深く掘り下げるケーススタディが用いられることも多く、教育学や社会学ではインタビューや参与観察を用いた質的研究と、質問紙調査を用いた量的研究の両方が存在します。志望する研究科の教員がどちらの手法を主に使っているかを事前に確認しておくと、研究の方法の記述に説得力を持たせやすくなります。

「分析を行う」という表現だけで終わらせない

研究の方法を書く際に注意したいのが、「分析を行う」というような漠然とした表現で終わらせないことです。使用する統計解析ソフトの名称や、具体的な分析の手続きまで踏み込んで明記することで、研究の実現可能性(feasibility)を示すことができます。たとえば「アンケートを行う」ではなく、「対象者の属性・人数・収集手段」まで具体的に書くことで、審査する側は研究がどの程度実行可能かを判断しやすくなります。

抽象的な表現と具体的な表現の比較

「分析を行う」型の表現がなぜ評価されにくいのか、具体例で比較すると次の表のようになります。

抽象的な表現(避けたい例)具体的な表現(目指したい例)
アンケートを行い分析する国内在住の就業者にオンラインでアンケートを実施し、統計解析ソフトSPSSを用いて重回帰分析を行う
文献を調査する国立の公文書館に所蔵される外交文書を中心に、一次資料の記述内容を時系列に沿って比較分析する
インタビューを実施する製造業で現場の改善業務を経験した社員を対象に、半構造化インタビューを実施し、発話内容を質的コーディングする

対象・人数・手段・分析ツールまで具体化することで、同じ内容でも説得力が大きく変わることが分かります。研究計画書を書き終えたら、「分析を行う」「調査する」のような一般的すぎる動詞が残っていないか、見直しの段階でチェックするとよいでしょう。

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理系・文系の方法と問いの対応

方法の性格問いとの対応研究計画書に書く手続き
理系の実験計画条件を変えたときに対象の挙動がどう変わるか変える条件、対照条件、測定対象、試料の管理方法
理系のデータ解析観測された特徴から何を説明・予測できるかデータの由来、前処理、学習と評価の分離、比較手法
統計的な検討差や関連がどの程度安定しているか変数の定義、仮定、ばらつきの扱い、結果の解釈
文系の質的研究経験や判断の意味がどのように形成されるか事例の選定理由、記録方法、分類と解釈の手順
文系の量的研究集団に見られる傾向や変数間の関係は何か調査対象、質問項目、変数の操作化、分析方法

この区分は研究方法を整理するためのものです。理系でも聞き取りが役立つ場合があり、文系でも実験や数理モデルを用います。所属分野の名前から機械的に方法を決めるのではなく、得たい答えと、取得できる証拠の対応から方法を選ぶようにしましょう。

統計解析では、使う検定やモデルの名称だけでなく、何を比較し、どの変数を説明に使うかを記述します。同じ対象を繰り返し測定する場合は、観測が独立とは限らないため、その構造を扱える方法が必要です。欠損や外れ値についても、結果を見て都合よく取り除かないよう、除外の考え方と記録の残し方を示してください。

相関が得られた場合に因果関係まで述べてよいかは、研究の設計によります。観察データを使う計画なら、別の要因が関連を生んでいる可能性を考え、どの範囲の解釈にとどめるかを明示します。高度な解析手法を採用しても、データの集め方に由来する制約が自動的に消えるわけではありません。

手法を選びきれない段階では、候補を並べるだけでなく、選択の条件を書きます。データの分布や欠損の状態を調べてから採用する方法を判断するのであれば、事前の点検項目と判断の理由を説明します。装置が利用できない場合の代替法も、同じ問いに答えられるかを確認し、答えられる範囲が変わる場合は問いの縮小とセットで示しましょう。

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使用予定の資料・データの明示の仕方

どの学問分野でも、資料やデータは研究を実施していくために必要不可欠なものです。それについて示さないと、研究の実現可能性(feasibility)が疑われてしまい、マイナス評価につながってしまいます。

資料・データの入手方法まで書く

したがって、研究で使用する予定の資料やデータがあれば、それが何か、またそれをどのように、どこで入手する予定なのかについても明示するようにしてください。歴史研究であれば「国立の公文書館に所蔵される外交文書」、社会調査であれば「対象者の属性・人数・調査時期・収集方法」というように、具体性を持たせることが評価につながります。

資料・データが確定していない段階での書き方

出願段階では、資料やデータの入手先が完全には確定していない場合も少なくありません。その場合は、「行政機関が作成した会議記録の入手を予定しており、所蔵機関への閲覧条件の照会を検討している」というように、現時点での見通しと、確認・入手のための具体的な行動計画をセットで示すと、実現可能性への疑念を和らげることができます。確定していないことを隠すのではなく、確定に向けた道筋を示すという姿勢が重要です。

人を対象とする調査の場合の留意点

アンケートやインタビューなど、人を対象とする調査を計画に含める場合は、進学予定の大学院で求められる倫理審査の手続きについても、出願前の段階から概要を確認しておくと安心です。研究計画書の段階で審査結果まで示す必要はありませんが、「倫理的な配慮が必要な調査であることを理解している」という姿勢が伝わる一文を添えておくと、研究計画全体の完成度が高く見えます。所属予定の研究科によって手続きは異なるため、詳細は必ず志望先の最新の案内でご確認ください。

公開データでも利用条件と研究倫理を確認する

公開されているデータであっても、利用条件、再配布の可否、個人情報の扱いは個別に確認します。閲覧できることと、研究に自由に使えることを区別する必要があります。利用申請が必要なら、その手続きを研究工程に含め、利用できる見通しが立つ前に入手済みと書かないようにします。

人を対象とする研究では、研究の目的を伝える方法、同意の取得、参加を撤回する場合の扱い、記録の保存と匿名化も検討します。倫理審査が必要な場合は、所属機関の手続きに従い、承認後に対象となる調査や実験を始める計画を記載してください。審査の要否を自分だけで決めず、志望先の規程や相談窓口の案内を確認します。

資料の候補が複数ある場合は、主に使う資料と代替資料を分けます。公文書の閲覧が難しいときに刊行資料へ変更すると、読み取れる政策決定の過程が限られることがあります。代替資料が存在するという説明だけでなく、変更した場合にも答えられる問いは何かを示すことが、実施可能性を伝えるうえで役立ちます。

先行研究・独自性・意義・方法をつなげる書き方のコツとよくある失敗

ここまで整理した先行研究、研究の独自性、研究の意義、研究の方法の4つの要素は、それぞれ独立して存在するのではなく、一つの論理の流れとしてつながっている必要があります。先行研究の限界を指摘したからこそ独自性が生まれ、その独自性が持つ意義を示し、その意義を確かめるために特定の研究の方法を採用する、という順序で読み手に伝わるように構成することが理想です。

よくある失敗例

指導の現場でよく見られる失敗には、次のようなパターンがあります。

  • 先行研究の要約だけで終わってしまい、批判的検討(限界の指摘)がない
  • 独自性の主張が先行研究の限界の指摘と論理的につながっておらず、唐突に感じられる
  • 研究の意義を「独自性があること」自体で説明してしまい、「それによって何が分かるのか」まで書けていない
  • 研究の方法が「アンケートを行う」「文献を分析する」など抽象的な表現にとどまっている
  • 使用予定の資料・データが具体的に書かれておらず、実現可能性が伝わらない

つながりを確認するチェックの仕方

書き終えた後は、「先行研究の限界→独自性→意義→研究の方法」という順に読み返し、前の段落の内容を受けて次の段落が書かれているかを確認するとよいでしょう。各段落を単独で読んでも意味が通るだけでなく、通して読んだときに一つのストーリーとして成立しているかどうかが、研究計画書全体の説得力を大きく左右します。第三者に読んでもらい、論理の飛躍がないかを確認してもらうことも有効な方法です。

改善前・改善後で見る書き方の違い

抽象的な書き方と、批判的検討を経た書き方を並べると、論理のつながり方の違いがより分かりやすくなります。

改善前(先行研究とのつながりが弱い例)改善後(批判的検討を経た例)
私の研究は先行研究と違って学習環境に注目する点が独自である。検討した研究では授業内の活動が中心で、授業外の学習環境は検討されていない。本研究では学習環境と授業への参加状況との関連を明らかにすることを独自の目的とする。
アンケートを行い、その結果を分析する。先行研究では調査対象が限定的であったため、本研究では対象を拡大し、就業形態の異なる対象者にオンラインでアンケートを実施し、学習環境と参加状況との関連を統計解析ソフトを用いて分析する。

改善後の例に共通しているのは、「先行研究の何が足りなかったか」を先に示してから、自分の取り組みを説明している点です。この順序を意識するだけで、独自性や研究の方法の説得力は大きく変わります。

面接での質問対応にもつながる

先行研究・独自性・意義・研究の方法のつながりを整理しておくことは、書類選考だけでなく面接対策にも直結します。「その独自性はどの先行研究の限界を踏まえたものか」「なぜその分析手法を選んだのか」といった質問は、面接で頻繁に問われる定番の切り口です。研究計画書を書き上げた後は、各セクションについて「なぜそう言えるのか」を自分の言葉で説明できるか、声に出して確認しておくとよいでしょう。

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大学院入試の研究計画書の書き方 全体像(他の要素へのリンク)

ここまでの内容は、研究計画書全体のうち、先行研究・独自性・意義・方法のつながりに焦点を当てたものです。完成稿では、問題意識、研究上の問い、研究題目、研究工程、参考文献との整合も確認します。各欄を別々に埋める前に、研究全体の骨格をつなげると、後から大きく書き直す負担を減らせます。

公式の提出様式から確認を始める

志望校の公式サイトで、対象となる研究科・専攻・選抜区分の募集要項を開き、研究計画書の指定様式と記入要領を確認してください。研究概要、志望理由、これまでの研究実績などが別の書類になっている場合は、同じ説明を重複させず、各書類の役割に合わせて記述します。様式の見出しがこの記事と違う場合も、大学が指定する欄に合わせて内容を配置します。

文字数の数え方、参考文献を記載する位置、図表の可否、ファイル形式、提出方法などは、一般的な例文から判断しないようにします。案内に書かれていない点は大学の担当窓口へ問い合わせます。研究室への事前相談が必要か、連絡の方法が指定されているかも確認し、研究内容の相談と出願手続きの確認を区別して進めましょう。

問題意識・問い・題目を本文と照合する

問題意識は、研究を始めるきっかけとなる関心です。研究上の問いは、その関心を資料やデータによって検討できる形にしたものです。たとえば設備の安全性への関心から出発しても、実際の研究では異常検知の誤りが生じる運転条件へ問いを絞ることができます。社会的な関心の広さと、研究で答える範囲を分けると、先行研究を選ぶ基準も明確になります。

題目には、対象と検討する関係や視点が分かる語を入れます。方法の段落で扱わない対象を題目に含めたり、関連を調べるだけの計画なのに因果関係の解明を掲げたりしないようにしてください。題目から読み手が期待する内容と、本文で実施する内容が対応しているかを確認します。本文を書いた後に題目へ戻ると、広すぎる表現を見つけやすくなります。

研究工程と参考文献を整える

工程は、文献調査、資料・データの準備、予備的検討、本格的な調査や実験、分析、執筆という作業の依存関係で考えます。倫理審査や利用申請が必要な研究では、その手続きが終わらなければ進められない作業を分けてください。すべてを同時に進める表では、遅延が起きた際に何を調整すべきかが見えなくなります。

参考文献では、本文中でどの主張をどの文献に基づいて書いたのかを照合します。引用した箇所と自分の考察を明確にし、実際には読んでいない文献を読んだように扱わないことが基本です。著者名や題名などの書誌情報は原資料で確かめ、表記方法は指定や分野の慣行に合わせて統一します。

白紙からの手順は本文末の「研究計画書の書き方7ステップ」、全体の構成と分野別の例は「研究計画書の例文とテンプレート【分野別】」で確認できます。用語や構成に迷う場合は「研究計画書とは|基本事項と構成」、問いを絞る段階では問題意識の記事、題目を整える段階ではタイトルの記事が対応します。博士課程や文系の例文も末尾にまとめているので、現在の作業段階に合うものを選んでください。

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よくある質問(FAQ)

研究計画書に挙げる先行研究は何本くらいが目安ですか?

一律の本数ではなく、指定の様式と研究上の問いに応じて選びます。中心となる議論、反対の見解、採用する方法の根拠が読み手に伝わるかを基準にしてください。本数を増やすより、挙げた先行研究それぞれに対して批判的検討を丁寧に加えることを優先しましょう。先行研究を列挙するだけになってしまう受験生は少なくありませんが、本数よりも1本あたりの検討の深さの方が評価に直結します。

先行研究が見つからない場合、独自性があると考えてよいですか?

その論点にこれまで取り組まれてこなかった場合、必ずしも自分が初めて取り組む独自の論点であるとは限りません。研究者たちの間で論じるに値しない論点とみなされてきたか、実証に必要な一次資料がないと諦められてきた可能性があるため、検索の仕方を変えて再度確認することをおすすめします。使用するキーワードを日本語だけでなく英語でも試したり、隣接分野のデータベースまで範囲を広げたりすると、見つかっていなかった先行研究が出てくることもあります。

研究の独自性と研究の意義は何が違いますか?

独自性は「自分の研究が従来の研究と何が違うのか」を示すものであり、意義は「その違いに焦点を当てることでどのような学術的な貢献ができるのか」を示すものです。独自性の主張だけで終えず、それによって何が明らかになるのかまで書くことが重要です。両者を混同して同じ内容を繰り返してしまう答案が多いため、書き終えたら「違いの説明」と「価値の説明」に分かれているかを見直しましょう。

理系の研究計画書の例文はどのように使えばよいですか?

本記事の実験系・データ解析系の骨子例を、先行研究から問い・意義・方法へ進む構成の参考にしてください。例文は架空の設定なので、研究対象だけを替えて提出することはできません。自分で読んだ文献、利用できる装置やデータ、志望先の様式に合わせて書き直します。研究計画の段階で完全な独自性を証明しようとするより、既存研究との差分と、その差分を検討する理由を説明しましょう。分野別の構成例は本文末の関連記事にもまとめています。

研究の方法(分析手法)はどのように選べばよいですか?

まずは自分の専門分野で一般的に用いられている分析手法を、先行研究や教科書を通じて把握しましょう。そのうえで、自分が立てた研究上の問いに答えるために最適な手法を選びます。複数の手法を組み合わせて使うことも問題ありません。手法を選んだ理由(なぜその手法が自分の問いに答えるのに適しているのか)まで一文添えると、説得力が増します。

使用予定のデータや資料が確定していない場合はどう書けばよいですか?

確定していないことを隠すのではなく、現時点での見通しと、確認・入手のための具体的な行動計画をセットで示すとよいでしょう。「行政機関の会議記録を調査対象とし、所蔵機関へ閲覧条件を照会する予定である」といった書き方が有効です。人を対象とする調査を予定している場合は、倫理審査の手続きを理解している旨を添えると計画の完成度が高く見えます。

博士課程の研究計画書と修士課程の計画は何が違いますか?

博士課程では、これまでの研究成果と残された課題を接続し、研究全体として目指す学術的な貢献を示すことを意識します。単に修士の研究対象を増やすのではなく、どの説明を深め、どの前提を検討するかを書きます。修士でも先行研究との関係や独自性は必要です。いずれの課程でも、検索で見つからなかったことだけを新規性の根拠にせず、隣接分野や異なる検索語まで調べてください。求められる記載項目は志望先の公式の様式に従い、本文末の博士課程の記事も参考にできます。

研究計画書の書き方に不安がある場合、どこに相談すればよいですか?

まずは研究計画書の全体構成を解説した記事や、指導実績のある専門家への相談を活用するのがおすすめです。研究計画書の全体像は研究計画書の例文とテンプレートでも解説しています。スプリング・オンライン家庭教師では、研究計画書の作成指導を数多く手がけてきた講師による無料相談を実施しており、先行研究の探し方から批判的検討の文章化まで一つひとつ伴走して確認することができます。

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まとめ|研究計画書の先行研究・独自性・意義・研究の方法の書き方

研究計画書における先行研究、研究の独自性、研究の意義、研究の方法は、それぞれ独立したパーツではなく、一つの論理の流れでつながっている必要があります。多くの受験生が先行研究の要約だけで筆を止めてしまいますが、そこから一歩踏み込んで批判的検討を加え、独自性・意義・方法へとつなげられるかどうかが、研究計画書全体の完成度を左右します。本記事のポイントを振り返ります。

  • 先行研究とは、ある論点に対して問いを立て、独自の学術的な答えを示したものである
  • 先行研究は批判的検討(独自性・意義の指摘と限界の指摘)を加えてこそ研究計画書で価値を持つ
  • 先行研究の限界は、論点・見解の妥当性・対象・手法・データという5つの視点から検討できる
  • 研究の独自性は完全でなくてよく、方向性を示すだけでも採点者に良い印象を残せる
  • 研究の意義は独自性とセットで示し、「それによって何が分かるのか」まで書く
  • 研究の方法は「分析を行う」で終わらせず、具体的な手法・対象・データの入手方法まで明記する
  • 4つの要素を「限界の指摘→独自性→意義→方法」という一つのストーリーとしてつなげることが説得力を高める

先行研究の探し方や批判的検討の仕方、研究の独自性・意義・方法の書き方は、慣れないうちは特に難しく感じやすい部分です。独学での対策に不安がある場合は、専門の指導を活用するのも一つの方法です。スプリング・オンライン家庭教師には、研究計画書の作成の仕方を心得ているうえ、先行研究の整理から方法の検討まで相談できる講師が在籍しております。研究計画書の作成でお困りの方は、ぜひ無料相談よりお問い合わせください。

研究計画書の書き方を、白紙の状態から提出までひととおり確認したい方は、研究計画書の書き方7ステップ|白紙から提出までの手順と分野別の例文もあわせてご覧ください。本記事の内容を含めた全体の流れを1本で追えます。

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この記事を書いた人

千葉大学 法政経学部を首席で卒業後、都内国公立大学の法科大学院(ロースクール)を修了し、司法試験に合格。法律・政治・経済分野の専門知識をもとに、スプリング・オンライン家庭教師の大学編入・大学院入試分野の指導および記事監修を担当。

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