【大学院入試】~英語試験対策~出題傾向や過去問について
その他2024.11.21
著者:山下徹先生(熊本大学名誉教授)
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- 大学院の英語試験について
大学院修士課程入試における英語試験の得点は重要です。英語試験の得点が足切りに
使用される場合もあります。
問題に関しては、大学入学時点での英語力を維持、補強することで対応できるレベルです。
自然科学・工学系大学院において、TOEIC Listening & Reading 公開テストのスコアを英語筆記試験の代わりに利用する大学院が増えています。従って、受験する大学院によっては、TOEIC対策の学習が必要になります。
2. 題材となる英文の傾向と対策
大学院の研究科単位で英語の試験が行われる傾向があるので、各コース・分野に対応した、各コース・分野に対応した、 専門に特化した題材はあまり使用されない傾向にあります。
科学記事、放送記事、新聞記事、雑誌記事、エッセイなどの多様なジャンルの英文が使用されます。Web 上の英文記事に日頃から目を通す習慣を身に着けてください。オンラインでアクセスできるNew Scientist、Scientific American等の科学雑誌の記事、BBC等の放送記事、The New York Times、The Japan Times等の新聞記事、Newsweek、TIME、Economist等の雑誌記事が役立ちます。
英国で発行されている科学雑誌であるNew Scientistでは、宇宙、物理、健康、技術、環境、心、人間、生命、数学、地球、社会に関する科学記事が掲載されています。米国の科学雑誌であるScientific Americanでは、地質学、ゲーム、神経科学、植物、心理学、人工知能、自然災害のテーマの記事が掲載されています。これらの科学雑誌により、科学技術を中心に、人文・社会科学的なテーマについての記事も読むことができます。New Scientist、Scientific Americanともに登録すれば、一部の記事を無料で閲覧できます。また、一定期間、無料もしくは低価格で記事を閲覧できますが、記事を無制限に読むためには年間購読する必要があります。
Science News Exploresという無料で全ての科学記事をweb上で無制限に閲覧できる科学雑誌があります。テーマとしては、地球、物理、化学、人間、宇宙、数学、生命、技術、科学と社会を扱っており、科学だけでなく、科学と社会の接点についての記事も掲載されています。英文の長さ(語数)は他の雑誌記事と比較して、より長い傾向があります。一方、New Scientist、Scientific Americanよりも、少し易しい表現で記事が書かれている傾向があります。学習の初期段階においては、このような科学雑誌の記事を多く学習することにより、 科学記事の語彙、語句、構文、構成等に慣れることができると考えられます。
科学雑誌の記事におけるCovid-19、再生医療、遺伝子治療、生成AIとその活用分野、深層学習、機械学習、脱炭素、宇宙等、近年のトピックの英文記事に目を通しておくことが求められます。これらは社会的な課題でもあり、自然科学・工学分野と人文・社会科学分野に共通のトピックです。特に、受験する年度に話題になったトピックに関連する英文記事は重要です。ノーベル賞を受賞した研究は、その年の科学記事でもよく関連記事として取り上げられます。
科学記事は学術論文ではなく、popular science(ポピュラーサイエンス)のジャンルに属しています。論理的で明瞭性、客観性のある英文が使用されます。このような記事を理解できることが、大学院での英語を活用した研究に寄与すると考えられ、大学院入試で出題される傾向にあります。
辞書をフルに活用して、科学記事のジャンルで使用頻度の高い語彙の意味を、日頃から辞書でよく調べておくことも大切です。語彙のレベルは学術論文ほどは高くない傾向があります。読者層として研究者以外の一般人が想定されており、高度な専門語彙については、説明が加えられる傾向があります。
BBCの放送記事は、ニュース記事とともに、ビジネス、イノベーション、文化、旅行、地球等に関する記事を扱っています。人文・社会科学分野の記事が多い傾向にありますが、
科学記事も掲載されています。また、無料で多くの記事をオンラインで閲覧することができるので、幅広いトピックの記事に習熟することができます。
The New York Timesでは、ニュース記事とともに、ビジネス、アート、ライフスタイル、
ゲーム等に関する新聞記事が掲載されていますが、オピニオンの欄もあります。ニュース記事自体は、大学院の問題の題材としてはあまり使用されない傾向にあります。オピニオンの欄にある、コラムニストによる、現状において社会的に議論されている問題に関するコラム記事を読んでおくことが求められます。また、オピニオンの欄の中に含まれているゲストエッセイを読むことにより、エッセイを題材とした問題にも対応できると考えられます。登録すると、一部の記事を無料で閲覧できます。また、一定期間、低価格で記事を閲覧できますが、記事を無制限に読むためには年間購読する必要があります。
英文雑誌のNewsweekは、ニュース記事とともに、科学、健康、ライフ、エンタテインメント、教育等の記事を扱っています。オピニオンの欄も設けられており、コラムニストによるコラムで、社会的な争点となっている問題に関する英文に触れることができます。無料で多くの記事を読むことができるので、幅広いトピックの記事に慣れることができます、TIMEでは、ニュース記事に加えて、政治、テクノロジー、健康、科学、エンタテインメントに関する記事を掲載しています。科学技術に関する記事が充実しています、無料で多くの記事を閲覧できるので、学習に活用できます。
自然科学・工学系や一部の人文・社会科学系大学院(名古屋大学大学院等)では、専攻・コース単位での学術論文、専門書の英文を題材として利用した出題も一部に見られます。 専門分野(心理学)の学術雑誌の論文を使用しているケースもあります。
- 出題の傾向と対策
大学院入試の英語の問題は、リーディング(読解)を中心に出題されますが、英作文の
出題もあります。
リスニング、スピーキングの問題は課されていないようですが、面接試験を英語で実施することにより評価している大学院もあるようです。
リーディングについては、全体として、下線部の英文和訳が多い傾向にあります。英文和訳の能力については、大学受験までの学習で習得しているかと思いますが、文法知識を改めて確認するとともに、語彙力も補強する必要があります。
一部の大学院入試では、専門分野の学術論文や専門書の全文を和訳させる問題も出題されています。このような場合、受験する分野の学術論文の専門語彙を十分に学習しておく 必要があります。
指示代名詞であるit、this、that、they、these、thoseが指す内容を日本語で述べる問題が出題される頻度も高い傾向にあります。英文中のこれらの指示代名詞を抽出し、指示内容を記述する練習が日頃から求められます。
英文の全文又は一部を英語又は日本語で制限語数・字数内で要約したり、要約に基づいて英語で自分の意見を述べる問題も出題されることがあります。英語で要約する場合、原文の表現をそのままコピーするのでなく、別の英語でパラフレーズすることが求められる傾向にあります。日頃から、英文記事の内容を別の英語で言い換えて要約し、英語で意見を記述する練習をすることが役立ちます。また、制限語数・字数内で英語又は日本語で要約したり、英語で意見を述べる練習も行ってください。理由・根拠を示して意見を述べることが求められます。
英文の特定の構成部分の内容について問う設問もあります。この場合、英語の質問文に 英語で答える設問形式もあり、英問英答の形式への準備もしておく必要があります。また、 このような特定の構成部分に関する問題に対応するためには、英文の全体的構成を把握しておく必要があります。ジャンルにより、記事の全体的構成はそれぞれ異なります。
科学記事は、概ね以下の様な構成部分から成っています。一部の構成部分が含まれていない場合もあります。
・新たな発見(結果)はどのようなものなのか。
・どのような問題が提起されているのか。
・何故それらの問題を、研究で解決する必要があるのか。
・どのような研究方法を活用したのか。どのようなデータの分析方法を使用したのか。 どのようなデータと分析結果が得られたのか。
・結果の考察として、どのような示唆があり、他の研究に応用できるのか。
・得られた知見は、同じ分野の他の既存の知識とどのように関係しているのか。また、
どのように社会的な課題の解決に貢献できるのか。
このような構成は学術論文とは一部が異なります。特に、発見(結果)が最初の部分で述べられる傾向があります。また、科学記事には、新たな発見とともに、その発見がどのような社会的課題の解決に寄与するかを示す、科学ジャーナリズムとしての役割があると考えられます。
日頃から様々な科学記事を読むことを通して、上記の科学記事の構成を把握しておくことにより、設問において、どの構成部分の内容が問われているかを理解することができます。実際に、大学院の英語の入試問題では、研究からどのような新たな結果が得られ、どのような示唆があったのか、また、どのような問題の解決に繋がるのかなどを問う設問が使用されています。
このような科学記事の全体的構成は学術論文とは異なりますが、共通する構成部分もあります。この点で、大学院で英語の学術論文を読み、書くための準備としての能力を、科学記事を使用した大学院入試の問題で測っていると考えられます。
基本的な英文のエッセイの全体的構成は以下の通りです。
序論 (Introduction): 序文、背景、主張
本文 (Body): 時間的順序による出来事、原因と結果、比較対照、題目のいずれかによる
記述パターンがある。
結論 (Conclusion): 主張のまとめ、トピックの重要性、結びの言葉
このような基本的な構成を把握した上で、エッセイやオピニオンを使用した英文の問題に取り組む組むことが求められます。
自然科学・工学系や一部の人文・社会科学系大学院での学術論文等を利用した読解問題については、以下の学術論文の一般的な構成を、学術論文を読むことを通して、理解しておく必要があります。
・序論(Introduction): 何が問題であり何故解決する必要があるのか、また、問題はどのように解決するのかを述べ、研究の背景、目的を記述します。
・先行研究レビュー (Literature review): 人文・社会科学分野の論文の場合は、この先行研究のレビューが独立した構成部分として記述されることが一般的です。自然科学・ 工学系の論文の場合は、序論に含まれる傾向もあります。このレビューを踏まえて、自己の研究の背景、独自性、意義を詳細に述べます。
・方法 (Method): 研究方法、データの収集・分析方法を詳細に述べます。また、何故、その研究方法を採用したのかを説明し、その意義を述べます。
・結果 (Results): 得られたデータの分析結果を、過去形で詳細かつ客観的に記述します。
・考察 (Discussion): 結果が示す意味を述べます。また、先行研究、当該分野の既存の 理論との関係についても記述します。
・結論 (Conclusion): 改めて、研究の結果として明らかになったことを、要約して記述するとともに、その意義を述べます。また、研究の限界についても、もしあれば述べます。さらに、研究の応用の可能性とともに、今後の研究の課題についても提示します。
上記の結果と考察を同じ構成部分として、まとめて記述する学術論文もあります。
英文を要約した上で意見を述べたり
、特定の構成部分の内容について問う問題が、受験する大学院の問題として出題されるかどうかを、過去問で事前によく確認して準備する必要があります。
英作文の問題が独自に出題される場合と、上述の様に、英文の内容を要約し、要約に関する意見を英語で記述する問題が出題される場合とがあります。英作文の問題が独自に出題されるかどうかを過去問で確認し、出題される可能性がある場合は、その設問形式に沿った準備をしておく必要があります。また、この場合、英作文の語数と配点も多くなります。
一部の自然科学・工学系の大学院の入試問題では、学術論文の内容を踏まえた英作文の
問題を出題しているケースもあります。
4.過去問について
過去問を大学院のHP上で公開している大学院もかなりあるので、アクセスして出題傾向を 把握するとともに、実際に過去問を解いてみてください。過去問をHPで公開せずに、郵送で送付する大学院もあります。また、直接に大学に赴いて、過去問の写しを受け取ることができる場合もあります。
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