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医学部編入と再受験はどちらを選ぶべき?難易度・費用・年齢・科目適性で徹底比較

「医学部に入り直したいけれど、編入と再受験のどちらを選べばいいのか分からない」——医学部 編入 再受験というキーワードで検索する方の多くが、この二択で立ち止まります。結論から言えば、どちらが有利かは一律には決まりません。編入は公表倍率こそ10〜20倍と高い一方で試験科目は英語と生命科学が中心であり、再受験は共通テスト6教科8科目という広く重い学力が求められます。つまり「難易度」の質そのものが違うため、単純にどちらが簡単かを比べても意味がないのです。
本記事では、大学公式の募集要項や文部科学省の資料、予備校の公表データといった検証済みの情報にもとづき、医学部編入と再受験を「難易度」「試験科目」「費用」「年数」「年齢」「経歴」という6つの軸で徹底比較します。さらに、ご自身の科目適性を確認できるチェック項目や、年齢・経歴別のおすすめルート、両方を視野に入れた併願戦略まで具体的に解説します。
医学部学士編入は国公立25大学と私立2大学が実施しており、制度としても年々変化しています。募集停止になる大学も出てきているため、本記事で紹介する制度情報はあくまで比較のための目安とし、出願を検討する際は必ず志望校の最新の募集要項をご確認ください。年齢や経歴によって最適なルートは変わりますので、ご自身の状況に照らしながら読み進めていただければと思います。
医学部編入と再受験の違いをまず整理|制度・受験資格・入学年次
医学部学士編入とは、すでに大学を卒業して学士号を持つ人(取得見込みを含む)を対象に、医学部の途中の年次に編入させる制度です。現在、国公立25大学と私立2大学(岩手医科大学は3年次編入、北里大学は1年次後期編入で、いずれも若干名の募集)が実施しており、全国の総募集人員は合計でおよそ150名程度とされています。編入年次はほとんどの大学で2年次ですが、島根大学のみ3年次編入、高知大学は2026年実施試験以降1年次後期編入となるなど例外もあります。2年次編入であれば卒業までの在学期間は5年です。
一方、医学部再受験は、高校卒業後の一般選抜を受け直すルートです。年齢や最終学歴による制限は基本的になく、社会人や既卒者でも受験できます。大学入学共通テストからのスタートとなり、在学期間は6年です。
両者の違い早見表
| 比較項目 | 医学部編入 | 医学部再受験 |
|---|---|---|
| 出願資格 | 学士号(取得見込み含む)が必要 | 制限なし(高卒資格でも可) |
| 入学年次 | 原則2年次(例外あり) | 1年次 |
| 卒業までの年数 | 原則5年(2年次編入の場合) | 6年 |
| 試験科目の中心 | 英語・生命科学 | 共通テスト6教科8科目+二次試験 |
| 実施校数・募集人員 | 国公立25校+私立2校、全国計約150名程度 | 各大学の一般選抜枠 |
どちらのルートを選んでも、最終的に医師国家試験の受験資格を得るという到達点は同じです。違うのは「どの入口から医学部に入るか」であり、この入口の違いが試験科目・費用・年数といったあらゆる比較軸に波及していきます。医学部学士編入の制度の基礎については、既存の解説記事でも詳しく紹介しています。
また、実施校数や募集人員は年度ごとに変動します。2026年度の国公立医学部編入では、弘前大学20名、群馬大学15名、滋賀医科大学15名、旭川医科大学10名、大阪大学10名、北海道大学5名、筑波大学5名、東京科学大学5名、名古屋大学4名といった募集人員の例が公表されていますが、これらは年度により見直されるため、あくまで規模感をつかむための参考情報として捉えてください。志望校を具体的に絞り込む段階では、必ずその年度の公式募集要項で最新の人数・条件を確認する必要があります。実施大学・倍率の詳細な一覧については医学部学士編入対策大全でも整理していますので、あわせて参考にしてください。
難易度を比較|倍率・受験者層・情報戦か学力戦か
医学部編入の公表倍率はおおよそ10〜20倍とされ、過去5年平均で見ると福井大学43.7倍、富山大学37.0倍、長崎大学30.4倍といった高い水準の大学もあります。志願者数の実数でも滋賀医科大学302人、群馬大学250人、山口大学246人、大分大学241人、鹿児島大学225人など、過去5年平均で見て多くの志願者を集める大学が存在します。ただし、これらの倍率は複数校を併願したうえでの見かけの数字である側面もあり、併願辞退を除いた実質倍率は3倍程度に収まるという分析もあります。これはあくまで一つの分析であり、実際の合格難易度を保証するものではない点にご留意ください。
また、河合塾KALSは2023年度実施試験において、国公立大学医学部編入合格者の66.0%が同予備校の受講生であったと公表しています。この数字は、編入試験の受験者層がすでに専門的な対策を積んだ集団であることを示唆しており、独学で挑む場合はこの母集団の中で勝負することになる点を認識しておく必要があります。
再受験の難易度は、偏差値や共通テストの得点率という比較的明確な指標で測ることができます。全国の模試データが充実しているため、自分の現在地と合格ラインとの距離を数値で把握しやすいのが特徴です。一方で編入試験は、過去問を公表していない大学も多く、対策の的を絞りにくいという難しさがあります。
まとめると、編入の難しさは「倍率の高さ」と「情報の見えにくさ」に起因する情報戦的な側面が強く、再受験の難しさは「範囲の広さ」と「総合学力」を問う学力戦的な側面が強いといえます。どちらが簡単かではなく、どちらの戦い方が自分の得意分野と噛み合うかで判断すべきテーマです。
もう一点見落とされがちなのが、「合格までにかかる期間」という尺度です。再受験は模試の偏差値や共通テストの得点率という定量的な指標があるため、自分が合格ラインにどれだけ近いかを毎回の模試で確認しながら計画を立てられます。これに対して編入試験は、大学ごとに出題傾向も配点比重も大きく異なり、しかも過去問を公開していない大学が少なくないため、「今の自分の実力がどの位置にあるのか」を客観的に測定しにくいという特有の不安がつきまといます。この不透明さのために、独学で編入を目指す場合は模試代わりとなる指標を自分で作る工夫が必要になり、結果的に予備校や添削サービスといった外部の物差しに頼る受験生が多くなる、という構造も倍率や受講生比率の高さの背景にあると考えられます。
試験科目で比べる|生命科学・英語vs共通テスト6教科8科目
医学部編入の試験科目は、英語と生命科学を中核とする大学が多数派です。大学によっては理科3科目に加えて数学まで課すところもありますが、共通テストの受験は不要という点は全大学に共通しています。実例として、鹿児島大学医学部医学科の第2年次学士編入(2027年度入学、募集人員10名)では、第1次試験が英語・生命科学、第2次試験が面接という構成です。出願資格には学士(取得見込み含む)に加えて、出願期間初日から2年以内のTOEIC L&R 720点以上またはTOEFL iBT 64点以上という英語スコア要件が課されています。
英語スコアの提出を求める大学は他にもあり、TOEIC680点程度からTOEFL iBT70点前後を目安とする例が見られますが、これらは大学ごとに異なり、また年度によって変更される可能性もあるため、出願前には必ず志望校の最新の募集要項でスコア基準を確認してください。
再受験は6教科8科目という総合力勝負
再受験では、2025年度入試(新課程)から共通テストに「情報Ⅰ」が新たに加わり、国立大学では6教科8科目の受験が主流となっています。これに加えて二次試験(英語・数学・理科2科目・面接が典型的な組み合わせ)を課す大学が一般的です。
- 編入:科目数は少ないが、大学教養レベルの生命科学を深く問われる(狭く深い)
- 再受験:科目数は多いが、高校範囲の標準的な内容が中心(広く標準的)
「科目が少ない編入は楽」と早合点するのは禁物です。生命科学は大学の教養課程レベルの内容を短期間で身につける必要があり、暗記だけでなく論述力も問われます。逆に、国語や社会が長年のブランクで戦力にならない人にとっては、その2科目を回避できる編入の方が現実的な場合もあります。一方、理数系の学習習慣が残っている、あるいは高校範囲の教材が豊富にそろっている点を活かしたい人には、再受験の理科・数学の方が取り組みやすいこともあります。
また、教材の入手しやすさという観点でも両者は対照的です。再受験の高校範囲は市販の参考書・問題集・映像授業が豊富にそろっており、独学のルートを描きやすい環境が整っています。一方、編入試験の生命科学は大学教養レベルの内容を扱うため、市販の教材だけでは網羅しきれない場合があり、予備校の教材やオンライン指導に頼る受験生が一定数いるのも実情です。科目数の少なさだけで判断せず、教材の入手しやすさや独学のしやすさまで含めて検討すると、自分に合ったルートがより明確になります。
科目適性チャートで判定|編入向き・再受験向きはこう分かれる
自分がどちらのルートに向いているかを大まかに把握するために、次の5つの質問に答えてみてください。
- 質問1:英語はTOEICで700点前後、あるいはそれに相当する水準に近いか
- 質問2:生物・生化学を大学レベルで学んだ経験があるか(理系出身・医療系資格者など)
- 質問3:国語・社会科目を今から仕上げ直す時間と意欲があるか
- 質問4:数学Ⅲを含む高校数学の完成度はどの程度残っているか
- 質問5:仕事や学業を離れてフルタイムで学習できる環境があるか
典型的な3つのパターン
質問1・2にYESが多く、英語力と生物系のバックグラウンドがある人は「編入本命」タイプです。逆に質問3・4にYESが多く、数学の学力が残っている人は「再受験本命」タイプに近いといえます。どちらの質問にも中途半端にYES/NOが混じる場合は、無理にどちらかへ即決せず、実際に共通テスト形式の模試と生命科学の入門テキストを両方2週間ほど試してみて、どちらに手ごたえを感じるかで再判定することをおすすめします。
なお、編入試験の生命科学は単純な暗記では対応しきれず、実験考察や論述の力が問われる構成になっている点は見落とされがちです。河合塾KALSの講座構成を見ても、生命科学だけで基礎25講という単科コースが設定されており、それだけの学習量が必要とされる分野であることがうかがえます。このチャートはあくまで自己診断の出発点であり、「あなたは絶対に編入向きです」といった断定はできない前提でご活用ください。
チャートで判断が割れた場合に有効なのが、「お試し期間」を設けることです。具体的には、共通テスト形式の模試を1回受けてみて英語・数学・理科の手応えを確認するのと並行して、生命科学の入門テキストを2週間ほど読み進めてみます。生命科学の抽象的な内容にすんなり入り込めるか、それとも高校の理科の延長線上で得点を伸ばす方が性に合っているかは、実際に手を動かしてみないと分からない部分が大きいためです。この2週間の体験を経てから本格的な受験勉強に舵を切っても、決して遅くはありません。むしろ、対策の方向性を誤ったまま数か月を費やしてしまう方が、時間的にも精神的にも大きな損失になります。
費用を徹底比較|予備校代・受験費用・入学後6年間の学費
受験準備段階の費用を見ると、編入対策と再受験対策では相場が異なります。河合塾KALSの医学部学士編入対策(2027年度実施試験対応)では、オンライン総合コースの正規受講料が1,471,800円(Web申込5%割引で1,398,210円)、単科であれば生命科学(基礎25講)が313,500円、医学英語基礎(15講)が250,800円などとなっています。
再受験向けの医学部専門予備校は、年間の費用相場がおおよそ100万円〜400万円で、授業料150万円〜300万円程度の帯が中心ですが、500万円を超えるコースも存在します。大手の集団授業型予備校の医学部コースであれば、年間80万円〜150万円程度に収まることが多いとされています。多浪すればするほど、この費用が年単位で積み上がっていく点は再受験特有の負担です。
入学後の学費比較
| 進学先 | 6年間の学費目安 |
|---|---|
| 国立大学(標準額ベース) | 入学金282,000円+授業料535,800円/年で総額約350万円 |
| 私立大学(2026年度・最安例) | 国際医療福祉大学 1,850万円 |
| 私立大学(2026年度・最高例) | 川崎医科大学 4,740万円 |
国立大学の学費標準額は省令で定められており、特別な事情がある場合は各大学が標準額の20%増を上限に設定できる仕組みです。編入は国公立中心の制度であるため、入学後の学費を抑えられる構造的なメリットがあります(2年次編入であれば実質5年分の学費で済みます)。一方、再受験で国公立が難しく私立に進学する場合は、1,850万円から4,740万円という大きな学費差が生じるため、事前の資金計画が欠かせません。加えて編入は複数校出願になりやすく、検定料や大学ごとの交通費・宿泊費が積み上がる点も考慮しておくとよいでしょう。
トータルコストで考えるモデルケース
費用を考える際は、受験準備費用と入学後の学費を別々に見るのではなく、合算したトータルコストで比較すると判断がしやすくなります。例えば、社会人が働きながら編入を目指す場合は、予備校費用約140万円台に加えて、国公立進学後の学費約350万円(5年分相当)を見込む形になります。離職して再受験に1年専念する場合は、予備校費用に加えて、その1年間の収入がなくなる機会費用も考慮する必要があります。再受験を2年続けたうえで私立に進学するケースでは、予備校費用が2年分積み上がるうえに、私立の6年総額(1,850万円〜4,740万円)が加わるため、総コストは大きく膨らみます。どのモデルケースが自分に近いかを具体的な数字でイメージしておくと、進路選択における資金面の不安を減らすことができます。
年数とキャリア、年齢別のおすすめを合わせて考える
医師になるまでの年数を比べると、2年次編入なら在学5年、一般入学(再受験)なら在学6年です(島根大学のみ3年次編入で在学4年)。ただし、この年数だけを見て「編入の方が早い」と即断するのは早計です。編入試験は英語・生命科学という専門対策に一定の準備期間が必要であり、再受験も多浪すれば当然その分の年数が積み増されます。どちらのルートも、出願・受験にかかる準備期間まで含めた「合格までの総年数」で比較することが重要です。
年齢の観点では、20代前半で大学在学中・卒業直後の人は、学力の鮮度を活かせる再受験も十分に選択肢に入ります。20代後半から30代前半にかけては、編入試験の志願者データからもボリュームゾーンとされる層であり、社会人経験や職歴を面接で語れる強みがあります。30代後半から40代以降で編入・再受験を目指す方については、合格例自体は存在するものの、年齢別の合格率に関する公的な統計は存在しません。この点は正直にお伝えしておく必要があります。合格者の年齢層について語られる際も、「中心は20代後半から30代前半とされる」という程度の表現にとどめるのが実態に即しています。
なお、2018年には文部科学省の「医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る緊急調査」により、複数の大学で年齢・性別・浪人年数等による不適切な得点調整があったことが指摘され、その後は入試における公正確保が求められるようになりました。これは「年齢による不利益が一切ない」ことを保証するものではありませんが、少なくとも制度的には公正な選抜が要請されている、という文脈として理解しておくとよいでしょう。年齢そのものよりも、その年齢までに積み重ねた経験を医師像にどう接続して語れるかが、面接では重視される傾向にあります。
年齢を軸に置いた進路選びでは、家族の理解、資金の見通し、そして体力・健康の3条件を事前にチェックしておくことをおすすめします。特に離職を伴う受験の場合、家族の合意なしに突き進むと、受験期間中の関係悪化や、合格後の生活設計でつまずく原因になりかねません。資金面では、前章で見た予備校費用と入学後の学費を合算した総額を家計の中でどう捻出するかを具体的にシミュレーションしておく必要があります。体力面では、特に社会人からの再受験・編入は長時間の学習を続ける体力が合否だけでなく入学後の実習・国家試験対策にも直結するため、無理のない学習計画を立てることが大切です。
経歴別おすすめ診断|文系・理系・医療系・社会人
経歴によっても、編入と再受験のどちらが取り組みやすいかは変わってきます。
文系出身者
文系出身でも医学部編入の合格例はあります。試験科目が数学を課さない大学もあるため、数学から距離を置きたい人には選択肢になり得ます。ただし生命科学はゼロからの学習になるため、1年以上のまとまった準備期間を見込んでおくのが現実的です。文系大学生ならではの編入への向き合い方についてはこちらの記事も参考になります。
理系出身者(生物・化学・薬学・農学系)
大学で生物学・生化学・薬学・農学系を学んだ経験がある人は、生命科学の既習範囲を最大の武器にできるため、編入が最有力候補になりやすい経歴です。物理・工学系出身の場合は生命科学こそ初学であっても、理科に物理・化学まで含む4科目型を採用する大学であれば、その学力を活かせる可能性があります。
医療系資格者・研究職・社会人
看護師や薬剤師などの医療系資格を持つ人は、志望動機の説得力や臨床現場での経験知が面接で活きやすい経歴です。研究職の経験がある人は、論文を読み書きしてきた英語力や研究実績そのものが書類選考・面接での武器になります。いずれの経歴であっても、「その経験を医師としてどう活かすか」を言語化できるかどうかが、編入・再受験どちらの面接でも問われる共通のポイントです。
経歴と科目適性を掛け合わせて大まかに整理すると、次のような傾向が見えてきます。理系(生物・薬学・農学)出身者は生命科学の素地があるため編入適性が高く、文系出身者は数学を回避できる編入にメリットがある一方で生命科学の初期投資が必要です。医療系資格者は面接での説得力が武器になり編入・再受験どちらにも通用しますが、臨床知識をそのまま活かせる編入との相性がやや高いとされます。物理・工学系出身者は、生命科学は初学でも理科3科目型の編入試験や、再受験の理数科目でどちらも力を発揮しやすい経歴です。あくまで一般的な傾向であり、実際の適性は個人の学習スタイルや準備期間によって変わってくる点には留意してください。
併願戦略とリスク管理|両にらみで進める現実的なプラン
編入試験は大学ごとに出願・試験の時期が分散しており、複数校の併願が一般的です。例えば鹿児島大学の場合、出願期間は2026年4月30日〜5月8日、第1次試験は2026年6月6日、第2次試験(面接)は2026年7月4日という日程でした(2027年度入学分)。このように編入シーズンは春から秋にかけて分散するため、共通テスト(1月)を起点とする再受験の日程とは基本的に重なりません。この時期のずれを活かし、編入と再受験を並行して視野に入れる「ハイブリッド型」の戦略も選択肢になります。なお、国公立大学の一般選抜は分離分割方式のため、同一日程内では前期・後期それぞれ1校のみの出願となります。詳細な日程は各大学の募集要項で必ず確認してください。
英語力は編入・再受験の両方で活きる共通の資産です。TOEIC・TOEFLのスコアは編入の出願要件になり得ると同時に、再受験の二次試験における英語力の土台にもなります。一方で、生命科学と高校生物には重複する領域と重複しない領域があり、学習を始める前にその範囲を整理しておくと無駄が減ります。
ただし、二次試験の数学対策と生命科学の論述対策を同時に完成度高く仕上げようとすると学習負荷が非常に大きくなり、共倒れのリスクがあります。主軸とするルートに7割、保険とするルートに3割程度の時間配分を決めておくことをおすすめします。加えて、「編入に2年挑戦して合格できなければ再受験に切り替える」といった撤退基準をあらかじめ決めておくと、感情に流されず軌道修正しやすくなります。
リスクの面では、編入は志望校の募集停止という制度変更のリスクがあります。実際に福井大学は2026年度実施試験から募集を停止しており、志望校が突然選択肢から消える可能性はゼロではありません。再受験側では、6教科8科目を維持し続けるコストや、多浪による費用の累積、国公立に届かなかった場合の私立進学時の学費負担(前述のとおり6年で1,850万円〜4,740万円)がリスクとして挙げられます。編入のリスクや向き不向きについてはこちらの記事でも詳しく取り上げていますので、判断材料の一つにしてください。
後悔を防ぐには、出願前にチェックしておきたい項目をあらかじめリスト化しておくのが有効です。志望校の募集停止・出願資格変更の有無、TOEIC・TOEFLスコアの有効期限、併願する大学同士の試験日程の重複、学習の主軸と保険の時間配分、離職する場合の家族との合意、資金計画と学費の捻出方法、多浪した場合の年数と費用の上限、そして「ここまでやってダメなら次のルートに切り替える」という撤退基準——これらを出願シーズンに入る前に一つずつ確認しておくことで、勢いだけで出願して後から後悔するパターンを避けやすくなります。
最終的な意思決定に迷う場合は、次のようなシンプルな流れで考えると整理しやすくなります。まず「学士号を持っているか、あるいはこれから取得見込みがあるか」を確認します。持っていなければ再受験一択です。次に「英語・生物系の素地があるか」を確認し、あれば編入が有力候補になります。続いて「フルタイムで学習できる時間を確保できるか」を確認し、確保が難しければ科目数の少ない編入の方が両立しやすい傾向にあります。最後に「学費・予備校費用の上限はどこまでか」を確認し、国公立中心で費用を抑えたいなら編入、私立進学も視野に入れられるなら再受験も選択肢が広がります。この4つの分岐を通すことで、編入本命・再受験本命・併願型のいずれに近いかが見えてきます。実際の判断は、27歳で理系出身の社会人であれば編入本命、22歳の文系大学生であれば在学中の学力を活かした再受験、35歳の看護師であれば臨床経験を活かせる編入本命、というように個人の経歴によって最適解は変わります。
よくある質問(FAQ)
医学部編入と再受験はどちらが簡単ですか?
一概には言えません。編入は公表倍率が10〜20倍と高めですが試験科目は少なく、再受験は倍率自体は編入ほど極端ではないものの、共通テスト6教科8科目という総合的な学力が求められます。英語力と生物系の学習経験があるなら編入、数学・理科の学力がまだ残っているなら再受験の方が取り組みやすい傾向にあります。
医学部編入は何歳まで受験できますか?
年齢制限を設けている大学は基本的にありません。2018年の文部科学省調査以降、年齢等による不公正な選抜是正が求められるようになりましたが、年齢別の合格率に関する公的な統計は存在しません。30代以降で挑戦する場合は、面接でその年齢までの経験と医師像を結びつけて語れるかが重要になります。
文系出身でも医学部編入に合格できますか?
可能です。試験の中心は生命科学と英語であり、数学を課さない大学も少なくありません。ただし生命科学はゼロからの学習になるため、1年以上の準備期間を見込んでおくのが現実的です。
医学部編入と再受験は併願できますか?
制度上は可能です。編入試験は春から秋にかけて大学ごとに分散して実施されるため、1月の共通テストとは時期が重なりにくい構造になっています。ただし両方を高い水準で仕上げるのは学習負荷が大きいため、主軸となるルートをあらかじめ決めた配分が必要です。
費用はどちらが安く済みますか?
受験準備費用は、編入対策の予備校が総合コースでおよそ140万円〜150万円、再受験向けの医学部専門予備校は年間100万円〜400万円が相場です。入学後については、編入は国公立中心のため学費(標準額ベースで6年総額約350万円、2年次編入なら実質5年分)を抑えやすい構造があります。再受験で私立に進学する場合は6年総額1,850万円〜4,740万円と、進学先によって大きな差が生じます。
TOEICは何点あれば医学部編入に出願できますか?
大学により基準は異なります。例として鹿児島大学(2027年度入学分)はTOEIC L&R 720点以上(出願期間初日から2年以内のスコア)を出願要件としており、680点前後を求める大学の例も見られます。基準は年度によって変わる可能性があるため、必ず志望校の最新の募集要項でご確認ください。
まとめ|医学部編入と再受験は「自分の適性」で選ぶもの
医学部編入と再受験は、どちらが優れているという単純な優劣の関係にはありません。ここまで見てきた比較を整理すると、次のようになります。
- 難易度:編入は倍率の高さと情報の見えにくさが特徴、再受験は科目範囲の広さと総合学力が問われる
- 試験科目:編入は英語+生命科学が中核で共通テスト不要、再受験は6教科8科目+二次試験
- 費用:編入は国公立中心で入学後の学費を抑えやすく、再受験は私立進学時の学費差が大きい
- 年数:編入は原則5年(2年次編入)、再受験は6年だが、準備期間を含めた総年数で比較すべき
- 年齢:20代前半は再受験も選べる有利な世代、20代後半〜30代前半は編入のボリュームゾーン、30代後半以降は公的統計がない前提での経歴の語り方が鍵
- 経歴:理系出身者は編入が有力候補、文系出身者は数学回避のメリットと生命科学の初期投資を天秤にかける
科目適性チャートで自分の傾向をつかみ、費用と年数を家計とキャリアプランに照らし合わせ、必要であれば編入と再受験を両にらみで進める併願戦略も検討する——この一連の意思決定プロセスこそが、後悔しない進路選択につながります。募集停止や制度変更が起こり得る分野でもあるため、最終的な判断の前には必ず志望校の最新の募集要項を確認してください。
どちらのルートを選ぶにしても、生命科学の論述対策や共通テスト6教科8科目の維持、面接での経歴の語り方など、独学だけで完結させるのが難しい領域は少なくありません。独学での対策に不安がある場合は、専門の指導を活用するのも一つの方法です。
専門講師による個別指導をご希望の方は、医学部学士編入対策コースの詳細をご覧ください。



