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大学院進学を考え始めたら最初にすること|研究テーマの種の探し方【院試1年6ヶ月前】

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大学院入試はいつから始めるべきか、という質問に一言で答えるなら、参考書や過去問に取り組むよりも前の準備として「受験の1年半ほど前」から動き出すのが安心な目安です。ただしこの時期に最初にすべきなのは、英語のスコアアップでも専門科目の暗記でもありません。まず取り組みたいのは、自分がどんな研究テーマに向き合いたいのかという方向性、いわば「テーマの種」を探す作業です。多くの受験生は出願が近づいてから研究計画書に手をつけ、そこで初めて自分の関心と向き合うことになりますが、それでは時間的にも精神的にも余裕がありません。

研究テーマとは、大学院で自分が明らかにしたいと考える問いと、その対象・切り口を組み合わせたものを指します。出願の直前になって慌てて用意する人も少なくありませんが、テーマの土台となる興味や問題意識は、志望研究科や指導教員を絞り込む前の段階からじっくり育てておくほうが、その後の研究室選びや研究計画書の完成度に大きく影響します。付け焼き刃で用意したテーマは、面接で「なぜその問いなのか」を深掘りされた瞬間に答えに詰まってしまいがちです。逆に、時間をかけて育てたテーマは、多少質問の角度が変わっても自分の言葉で説明し続けられる強さを持っています。

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この記事では、大学院進学をぼんやりと考え始めたばかりの方に向けて、志望研究科や指導教員を具体的に絞り込む前の準備として、研究テーマの種をどう見つけるかを解説します。1年6ヶ月前というこの時期は、まだ何も決めなくてよい代わりに、自分の興味を広く掘り下げておける貴重な期間です。焦って一つのテーマに飛びつく必要はありません。学部の授業で得た知識や、日常生活の中で感じた小さな違和感も、すべて種の候補になり得ます。

すでに出願までの全体スケジュールを把握したい方は、姉妹記事で逆算計画をまとめていますので、あわせて参考にしてください。ここではその一歩手前、大学院入試の対策をいつから始めるかを考え、進学を意識し始めた瞬間に何をすればよいかに絞って具体的に見ていきます。内部進学を考えている方も、他大学への外部受験を考えている方も、社会人になってから大学院を目指す方も、この時期にやることの本質は変わりません。

研究テーマの種を探す作業は、一見すると受験対策から遠回りをしているように感じるかもしれません。しかし出願書類や面接で必ず問われる「なぜこの研究をしたいのか」という問いに、自分の言葉で答えられるようになるための土台づくりでもあります。遠回りに見えて、実は最短ルートの準備であることを念頭に置きながら読み進めてみてください。

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目次

大学院入試の「1年6ヶ月前」は何をする時期か

なぜ出願12ヶ月前ではなく1年6ヶ月前から動くのか

大学院入試の準備スケジュールというと、出願の1年前を起点に語られることが多くあります。募集要項の確認、語学スコアの取得計画、研究室訪問のアポイント取りなど、動き出したらやることは次々に出てくるため、多くの解説記事はこの12ヶ月前というタイミングを準備の出発点として説明しています。実際、募集要項の確認や研究室訪問、語学スコアの取得といった具体的なタスクは、出願12ヶ月前から本格化するのが一般的な流れです。1年前からの逆算計画を詳しくまとめた記事もありますので、全体像を先に知りたい方はそちらもご覧ください。

ではなぜ、その1年前よりもさらに半年早い1年6ヶ月前からこの記事で扱う準備を始める意味があるのでしょうか。理由は単純で、研究テーマの方向性が定まっていないまま志望研究科探しに入ると、比較の軸を持てないからです。どの研究科が自分に合うかを判断するには、まず自分がどんな問いに関心があるのかというおおまかな方向性が必要になります。方向性が曖昧なまま大学院のホームページを眺めても、良し悪しの判断がつきません。逆に方向性さえ定まっていれば、数多くある研究科の中から自分に合いそうな候補を効率よく絞り込めるようになります。

この時期のゴールは「決める」ことではなく「探す」こと

1年6ヶ月前の時点でやるべきことは、研究テーマを確定させることではありません。むしろ、確定させようと焦るとかえって視野が狭くなってしまいます。この時期のゴールは、興味のある領域をいくつか洗い出し、その中から「もう少し掘り下げてみたい」と思えるものを2〜3個に絞っておくことです。完成した研究テーマではなく、育てていける「種」を手元に持っておく状態を目指してください。

種の状態でよい理由は、この後に続く準備の中で種は何度も形を変えていくからです。研究室訪問で教員から意見をもらったり、関連する先行研究を読んだりするたびに、当初考えていたテーマは修正されていきます。1年6ヶ月前の段階で無理に完成形を作る必要はなく、むしろ変化する余地を残しておくことのほうが重要です。実際、最初に思い描いていたテーマと、出願時の研究計画書のテーマがまったく同じという受験生のほうがむしろ少数派です。

周りと比べて焦る必要はない

この時期になると、すでに研究室訪問を始めている同級生や、研究テーマを明確に語れる友人が周囲に現れ始め、焦りを感じる人もいるかもしれません。しかし進学を考え始めたタイミングは人それぞれで、早く動き出したかどうかと、最終的に納得のいく研究ができるかどうかは、必ずしも一致しません。今この瞬間に種探しを始めれば、1年6ヶ月というまとまった時間を確保できることのほうが重要だと捉えてください。

文系・理系で種の探し方に大きな違いはない

「文系と理系では研究テーマの探し方がまったく違うのでは」と思う方もいるかもしれませんが、この時期に限って言えば、進め方の本質に大きな差はありません。理系であれば実験・研究室でのゼミ活動や卒業研究の対象、文系であれば講義・演習で扱った文献やテーマが、それぞれ棚卸しの出発点になります。心理学のように文系・理系の境界にまたがる分野を志望している方も、これまでに履修した授業や関心を持ったトピックを振り返るという基本の作業は変わりません。

分野によって研究室訪問の頻度や実験設備の見学の有無など、後の段階でのプロセスに違いは出てきますが、「1年6ヶ月前の今は興味を広げ、言語化する」という優先順位はどの分野でも共通しています。自分の専攻が特殊だからと諦めず、まずはこの記事の手順を一通り試してみてください。

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大学院に進学するかどうかをどう決めるか

内部進学・外部受験・社会人からの受験の違い

研究テーマの種を探す前に、まず自分がどのような形で大学院進学を目指すのかを整理すると、その後の情報収集がぐっと楽になります。大学院を目指す人の状況は大きく分けて、今在籍している大学の大学院にそのまま進む「内部進学」、他大学の大学院を目指す「外部受験」、そして一度社会に出てから大学院を目指す「社会人からの受験」の3パターンに分かれます。どのパターンに近いかによって、研究テーマの探し方や情報収集の重点も変わってきます。

内部進学であれば、すでに所属している学部・学科の授業やゼミが直接のヒントになりますし、興味のある教員に相談しやすい環境も整っています。日頃から顔を合わせている教員であれば、研究室訪問という形式張ったアポイントを取らなくても、オフィスアワーや授業の後に気軽に関心を話しやすいという利点もあります。一方、外部受験や社会人からの受験の場合は、自分の専門と少し離れた領域に挑戦するケースも珍しくなく、興味の棚卸しをより広い範囲で行う必要がある点を意識しておくとよいでしょう。特に外部受験では、志望する大学院の研究科・専攻ごとに求められる基礎知識が異なる場合もあるため、早めに情報を集めておくことが安心材料になります。また、内部進学であっても油断は禁物です。所属先の大学院だからといって選考が簡単になるとは限らず、研究テーマの一貫性や志望動機の明確さが問われる点は外部受験と変わりません。

区分特徴この時期に意識したいこと
内部進学在籍する大学・学部の大学院にそのまま進むゼミ・卒論のテーマを土台に、関心を掘り下げる
外部受験他大学・他学部の大学院を新たに目指す志望先の研究室情報を早めに広く集めておく
社会人からの受験就職後、キャリアの中で得た問題意識から目指す実務での経験と学術的な問いのつながりを言語化する

迷っているなら「まず情報を集める」を選んでよい

「そもそも大学院に進学するかどうかまだ決めきれていない」という段階の方も少なくないはずです。その場合、無理にこの時点で結論を出す必要はありません。1年6ヶ月前という時期は、進学するかしないかの二択を急いで決めるための時間ではなく、情報を集めながら判断材料を増やしていく時期と捉えるのがおすすめです。研究テーマの種を探す作業自体が、進学の意思を固める材料にもなります。興味のあるテーマを掘り下げてみて初めて「もっと学びたい」という気持ちが確信に変わることも多いからです。

反対に、種を探す作業を進めていく中で「思ったほど関心が続かない」と感じることもあるでしょう。それも一つの重要な発見です。1年6ヶ月前というタイミングであれば、進学以外の進路に切り替える時間的な余裕も十分に残っています。逆に、種探しを進めるうちに「調べれば調べるほど面白い」と感じるテーマに出会えたなら、それは進学への意思を後押しする強い材料になります。

具体的な最初の一歩としては、まず自分の在籍状況(内部進学・外部受験・社会人受験のどれに近いか)を紙やメモアプリに書き出し、次に上の表を参考にしながら「この1週間でできること」を1つだけ決めてみることをおすすめします。授業を1つ振り返る、興味のある研究科のウェブサイトを1つ開いてみる、といった小さな一歩で十分です。小さな行動を積み重ねることで、進学するかどうかの判断材料は自然と増えていきます。

この時期に確認しておきたい3つの問い

大学院に進学するかどうかを考えるとき、次の3つの問いを自分に投げかけてみると、気持ちの整理がつきやすくなります。すぐに明確な答えが出なくても構いません。1年6ヶ月前の今は、問いを持っておくこと自体に意味があります。

  • 今の学びをもっと深く続けたいという気持ちがあるか、それとも別の理由(就職の先延ばしなど)が先に立っていないか
  • 大学院で2年前後の時間とコストをかけてでも、明らかにしたいと思える問いが自分の中にあるか
  • 進学した後の生活(研究中心の生活、経済的な負担など)を具体的にイメージできているか

3つの問いすべてに自信を持って答えられなくても、この時期は問題ありません。種探しを進めながら、少しずつ答えを育てていく姿勢で臨んでください。

この時期によくある誤解

大学院進学を考え始めた段階でよく見られる誤解の一つが、「まだ研究テーマが何もないのに、進学を検討していいのだろうか」というためらいです。しかし実際には、研究テーマを持たないまま情報収集を始めるのはごく自然なことで、順番としてはむしろ正しいといえます。テーマがあるから進学を考えるのではなく、進学を考えながらテーマを育てていくという流れのほうが、この時期には現実的です。

もう一つの誤解は、「大学院に進学すること自体が目的化してしまう」ケースです。大学院はあくまで研究を深めるための手段であり、進学すること自体がゴールではありません。この点を意識しておくと、種探しの過程で自分の本当の関心と向き合いやすくなります。

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研究テーマの「種」とは何か

研究計画書との違い

研究テーマの種と、出願書類として提出する研究計画書は、混同されがちですが別のものです。研究計画書は、研究の背景・目的・方法・意義までを具体的な文章として組み立てた完成品であり、先行研究を踏まえた問い立てが求められます。研究計画書の書き方や構成要素については大学院入試対策の完全ガイドで詳しく解説していますので、出願が近づいてきたタイミングで参照してください。

これに対して種は、まだ言葉としてまとまりきっていない興味や問題意識そのものです。「地域の高齢化と交通インフラの関係が気になる」「子どもの言語発達と家庭環境の関わりに興味がある」といった、ざっくりとした方向性で構いません。種は研究計画書の材料であって、それ自体が完成品である必要はないという違いを押さえておくと、この時期に何を目指せばよいかが明確になります。研究計画書を書く段階になって初めて種を探し始めると、先行研究を読み込む時間も、教員に相談する時間も足りなくなってしまいます。

「種」に求められる3つの要素

種として最低限持っておきたい要素は3つあります。1つ目は「対象」で、何について考えたいのかという範囲です。2つ目は「問い」で、その対象について自分が知りたい・明らかにしたいと感じている疑問です。3つ目は「関心の理由」で、なぜ自分がその対象や問いに惹かれるのかという背景です。この3つが揃っていれば、種としては十分に機能します。

逆に言えば、この段階で対象・問い・関心の理由のどれか一つでも欠けていると、その後の研究室選びで方向性がぶれやすくなります。3つの要素を意識しながら興味を言語化していくことが、次章以降で紹介する自己分析の目的地になります。3つすべてを一度に埋めようとせず、まずは対象だけ、次に問いだけというように、段階的に埋めていく進め方でも問題ありません。

たとえば「対象は地方都市の商店街」「問いはなぜ後継者不足が解消されないのか」「関心の理由は自分の地元の商店街がシャッター街化していくのを見てきたから」というように、3つを並べて書き出してみると、種としての形が一気に具体的になります。最初から美しい文章にまとめる必要はなく、箇条書きの状態で構いません。書き出した後は、対象・問い・関心の理由のそれぞれについて、もう少し具体的にできないかを自分に問いかけてみると、種の輪郭がさらにはっきりしてきます。

種は複数持っておいてよい

研究テーマの種は、一つに絞り込む必要はありません。むしろこの時期は、性質の異なる種をいくつか手元に持っておくほうが、後の比較検討がしやすくなります。たとえば「教育格差」と「地域コミュニティの変化」のように、一見関連の薄いテーマを並行して育ててみるのもよい方法です。どちらか一方が、研究室訪問や先行研究の学習を通じて自然と有力な候補として残っていきます。目安としては、2〜3個の種を並行して持っておき、情報収集を進めながら少しずつ有力な候補を残していくイメージを持っておくとよいでしょう。

指導教員との相性は今は気にしなくてよい

研究テーマを考え始めると、「この分野を教えられる先生が近くにいるだろうか」という不安が先に立ってしまう人もいます。しかし指導教員との相性や、志望する研究室で実際に指導を受けられるかどうかは、次回取り上げる志望研究科・指導教員のリサーチの段階で検討すべき事柄です。1年6ヶ月前の今の時点では、「教えてもらえるかどうか」より先に「自分は何を知りたいのか」を固めておくことを優先してください。順番を逆にしてしまうと、指導教員の専門に自分の興味を無理やり合わせることになりかねません。

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自己分析で種を見つける①学部での学びを棚卸しする

授業・ゼミ・卒論のテーマを振り返る

研究テーマの種を見つける最初のステップは、これまで自分が学んできた内容を棚卸しすることです。1年生から現在までに受講した授業の中で、特に印象に残っている科目やレポート課題を思い出してみてください。単位を取るためだけに受けた授業ではなく、「もっと知りたい」と感じた瞬間があった授業に注目するのがポイントです。シラバスや過去のレポートを見返すと、当時は気づかなかった共通のテーマが浮かび上がってくることもあります。

ゼミに所属している場合は、ゼミで扱ってきたテーマの中で自分が担当した発表や、議論が盛り上がった回を振り返るとよいヒントが見つかります。卒業論文にすでに取り組んでいる、あるいはこれから取り組む予定がある方は、その仮テーマも重要な手がかりです。卒論のテーマと大学院での研究テーマは必ずしも一致しなくてよいものの、関心の連続性を確認する材料にはなります。むしろ卒論をきっかけに新しい問いが生まれ、それが大学院での研究テーマに発展するケースも多く見られます。

「なぜ面白いと感じたか」を言語化する

棚卸しをする際に大切なのは、「何が面白かったか」だけでなく「なぜ面白いと感じたのか」まで一段深く言葉にしてみることです。たとえば「地方創生の授業が面白かった」で止めてしまうと、それはただの感想にとどまります。「地方創生の授業で、政策と住民の実感にずれが生じる仕組みに興味を持った」というところまで掘り下げると、種としての輪郭が見えてきます。

この「なぜ」を掘り下げる作業は、一人で頭の中だけで完結させようとすると案外難しいものです。友人や家族に「この授業のどこが面白かったの」と聞かれたつもりで、口に出して説明してみる、あるいは実際にノートやスマートフォンのメモに書き出してみることをおすすめします。言葉にしてみて初めて、自分の関心の輪郭がはっきりすることは少なくありません。うまく言葉にできないときは、「好き」「嫌い」ではなく「気になる」「引っかかる」という感覚に注目してみるのも一つの方法です。好き嫌いよりも、心に引っかかった違和感のほうが、研究テーマの種としては育てやすい傾向があります。

項目振り返る内容
印象に残っている授業・科目科目名/学年/何が印象的だったか
ゼミ・演習での発表テーマ扱ったテーマ/自分が担当した部分
卒論・卒業研究の仮テーマ現時点での仮テーマ/迷っている点
レポート課題で深掘りしたこと課題名/自分なりに調べた範囲
アルバイト・インターンでの気づき業務内容/感じた課題や疑問

この表のように項目ごとに書き出していくと、複数の授業や経験に共通するキーワードが浮かび上がってくることがあります。共通するキーワードこそが、種の候補として最も有望な手がかりです。1回で終わらせず、思い出すたびに追記していく作業として、ノートやメモアプリの1ページを専用に使いながら続けてみてください。

一人で抱え込まず友人と一緒に取り組むのも一つの方法

棚卸しの作業は一人で黙々と進めることもできますが、同じように進学を考えている友人と一緒に取り組むと、思わぬ発見があることも多くあります。お互いの棚卸しシートを見せ合い、「なぜそれが気になったの」と質問し合うだけで、自分では気づけなかった関心の傾向を指摘してもらえることがあります。他人からの問いかけは、自分一人では出てこない視点を与えてくれるという点で、種探しの心強い助けになります。

身近に同じ状況の友人がいない場合は、ゼミの教員や指導を受けている先生に、雑談の延長として自分の関心を話してみるのもよい方法です。相手からの何気ない一言が、種を育てるきっかけになることは珍しくありません。

棚卸しから種が見つかるまでの一例

たとえばある学生は、1年生の一般教養で受けたメディア論の授業と、3年生のゼミで扱った地域活性化のケーススタディが、どちらも記憶に強く残っていることに気づきました。一見バラバラなテーマですが、「なぜ印象に残っているのか」を掘り下げていくと、どちらも「情報が特定の人にしか届かず、意思決定の格差を生んでいる」という共通の関心につながっていることが見えてきました。ここまで来て初めて、「情報アクセスの地域差」という種の候補が姿を現します。

このように、棚卸しの段階では一見無関係に見える経験同士が、後になって一つの興味につながることが少なくありません。複数の経験を並べて眺める作業自体に、種を見つける力があると考えてよいでしょう。

棚卸しに使える質問リスト

何から手をつければよいか分からない場合は、次のような質問に一つずつ答えてみてください。答えを書き出していくだけで、自分でも気づいていなかった関心の傾向が浮かび上がってきます。

  • これまで受けた授業の中で、テスト前でなくても内容を思い出せる授業はどれか
  • レポートを書くときに、指定の文字数を超えてまで書きたくなったテーマはあったか
  • 友人との会話で、自分だけが熱心に語ってしまった話題は何だったか
  • ニュースを見ていて、続報が気になって調べてしまったことはあるか
  • 「もっと時間があれば調べたかった」と感じたレポート課題はあるか
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自己分析で種を見つける②興味をキーワードに変える

ニュース・社会課題・日常の違和感から広げる

学部での学びだけでなく、日常生活の中で感じた違和感やニュースで目にした社会課題も、研究テーマの種になり得ます。アルバイト先で感じた業務の非効率さ、家族や友人との会話の中で出てきた疑問、報道で取り上げられていた制度の矛盾など、学問の枠にとらわれずに関心の幅を広げてみましょう。研究は必ずしも授業で扱ったテーマの延長線上にある必要はありません。

ここで意識したいのは、「なんとなく気になる」で終わらせず、なぜ気になるのかを一歩掘り下げることです。趣味や日常の気づきであっても、その背後にある構造や仕組みへの関心を言語化できれば、立派な研究テーマの種になります。たとえば「SNSでの発言の炎上がなぜ起きるのか気になる」という日常的な疑問も、掘り下げ方次第でコミュニケーション研究や社会心理学の種として育てられます。趣味の話であっても軽視せず、なぜ自分がそこに惹かれるのかを丁寧に言語化する姿勢を持っておくと、思いがけないところから有望な種が見つかることがあります。

広いテーマを具体的なキーワードに絞り込む

「環境問題に興味がある」「教育格差が気になる」といった大きなテーマは、そのままでは種として扱いにくいという特徴があります。範囲が広すぎると、後の研究室選びで比較対象が膨大になり、絞り込みが難しくなるためです。大きなテーマを持っている場合は、そこからさらに一段階、二段階と具体的なキーワードに分解していく作業をおすすめします。

たとえば「環境問題」であれば「地域単位のごみ削減施策」「若年層の環境行動と情報接触」のように、対象と切り口をセットにして具体化していきます。1つの大きなテーマから3〜5個ほどキーワードの組み合わせを作ってみると、そのうちのいくつかが自分の関心により近いことに気づけるはずです。キーワードを2〜3語の組み合わせで書き出せる状態まで来ていれば、種としてはかなり完成度が高いといえます。この段階でまだ一語のままでも問題はなく、次の章で紹介する情報収集を通じて徐々に絞り込んでいけば十分です。

絞り込みすぎに注意する

一方で、この段階からキーワードを絞り込みすぎるのも避けたい落とし穴です。「◯◯大学の△△学部の学生を対象にした調査」のように対象や条件まで細かく限定してしまうと、その後の研究室探しで候補が極端に狭まってしまいます。この時期のキーワード化は、方向性を示す羅針盤のようなものだと捉え、多少の幅を残しておくくらいがちょうどよいバランスです。

書き出すときに使える簡単な工夫

興味をキーワードに変える作業がうまく進まないときは、紙の中央に大きなテーマを書き、そこから連想する言葉を放射状に書き足していくやり方が役に立ちます。関連しそうな言葉を思いつくままにどんどん書き出し、後から見返して線でつなげたり、グループ分けしたりしてみましょう。思いついた順に書き出し、後から整理するという順番を守ると、最初から論理的にまとめようとするよりも幅広い候補が出てきやすくなります。

書き出したキーワードは一度で終わらせず、数日おきに見返す習慣をつけると効果的です。時間を置いて見返すと、当初は気づかなかった組み合わせや、逆にしっくりこないキーワードが見えてくることがあります。

キーワードを書き出すときに避けたい表現

キーワード化の作業でつまずきやすいのが、「なんとなく」「いろいろ」「社会全体の」といった、範囲も対象も定まらない表現に頼ってしまうことです。こうした表現は書いた時点では満足感がありますが、後から読み返しても具体的な行動につながりません。できるだけ「誰の」「何についての」「どんな場面での」という具体的な言葉に置き換えることを意識してみてください。

たとえば「若者の意識について」よりも「大学生の就職活動における情報収集の方法について」のほうが、後の研究室探しで比較検討がしやすくなります。最初から正確な表現でなくても構わないので、まずは具体化する練習を重ねてみましょう。

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論文や研究室の情報に軽く触れてみる

関連する先行研究に触れる

興味のある領域やキーワードがいくつか出そろったら、それに関連する論文を軽く眺めてみる段階に進みます。この時点では論文を隅々まで精読する必要はなく、タイトルと要旨(アブストラクト)に目を通すだけでも十分です。同じキーワードで検索したときに、すでにどのような研究が行われているのかをざっくり把握しておくと、自分の興味が学術的にどのあたりに位置づけられるのかが見えてきます。

先行研究に触れる中で、「似たような研究はすでにたくさんある」と気づくこともあれば、逆に「あまり扱われていない切り口」を発見することもあります。どちらの気づきも次のステップに進むための貴重な材料になるので、悲観する必要はありません。むしろ、すでに多くの研究がある領域は、それだけ資料が豊富で研究計画を立てやすいという利点もあります。反対に、あまり扱われていない切り口を見つけた場合は、それだけ独自性のある研究テーマに育てられる可能性がある一方、参考にできる先行研究が少なく調査に時間がかかるという側面もあることを頭に入れておいてください。

研究室・教員の情報を眺めてみる

関心のあるキーワードで検索すると、そのテーマを扱っている研究室や教員の情報にも自然と行き当たります。この段階ではまだ志望校を絞り込む必要はなく、「こういうテーマを専門にしている先生がいるのか」という気づきを集めるだけで構いません。研究室のウェブサイトや教員の研究業績一覧は、多くの大学で公開されています。

ここで集めた情報は、次の段階である志望研究科・指導教員のリサーチで本格的に活用します。この時期はあくまで「眺める」段階であり、研究室訪問のアポイントを取るのはもう少し先で構いません。まずは自分の興味と実際の研究がどうつながっているのかの土地勘を養うことを優先してください。同じキーワードでも、研究室によって扱い方や重視する視点が異なることに気づくはずです。その違いを比較する材料を集めておくだけでも、この時期の情報収集としては十分な成果といえます。

検索の仕方の一例

先行研究や研究室の情報を探す方法に、特別な技術は必要ありません。学術論文の検索サービスや大学院・研究室のウェブサイトで、自分が書き出したキーワードをそのまま入力して検索してみるだけで十分です。ヒットした論文のタイトルを眺めるだけでも、同じテーマに対して研究者がどのような角度から切り込んでいるのかがなんとなく見えてきます。専門用語が並んでいて内容が理解できなくても、この段階では気にする必要はありません。

キーワードを少しずつ変えながら何度か検索してみると、同じ関心でも表現の仕方によって見つかる研究の幅が変わることに気づくはずです。この試行錯誤自体が、自分の興味をより正確な言葉に近づけていく作業になります。

情報収集の記録を残しておく

論文や研究室の情報を眺めるときは、気になったタイトルや教員名、印象に残った一文などを簡単にメモしておくことをおすすめします。1年6ヶ月前の時点で見た情報は、志望研究科を本格的に絞り込む数ヶ月後には記憶が薄れてしまいがちです。後から見返せる形で記録を残しておくだけで、次の段階でのリサーチが格段にスムーズになります。

毎日たくさんの時間を割く必要はありません。週に1回、30分だけでも「気になるキーワードで検索して、タイトルを5件眺める」という小さな習慣を続けるだけで、半年後には見え方が大きく変わってきます。継続すること自体が、この時期における最大の武器になります。

専門用語につまずいたときの向き合い方

論文や研究室のウェブサイトを眺めていると、聞き慣れない専門用語や理論の名前に何度も出会います。ここでつまずいて読むのをやめてしまう人も少なくありませんが、この時期に専門用語をすべて理解する必要はありません。分からない用語が出てきたら名前だけメモしておき、意味を調べるのは後回しにして構いません。まずは「どんなテーマが、どんな切り口で扱われているか」という全体像をつかむことを優先してください。

専門用語の意味を本格的に理解する作業は、志望研究科が絞り込まれ、実際に授業や文献に取り組む段階で自然と進んでいきます。この段階では、用語の壁を理由に興味そのものを諦めてしまわないことのほうが重要です。

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この時期にありがちな失敗

テーマを早く固めすぎてしまう

1年6ヶ月前というこの時期にもっとも起こりやすい失敗が、研究テーマを早々に一つに絞り込んでしまうことです。真面目な人ほど「早く決めなければ」という焦りから、最初に思いついたテーマに固執してしまいがちです。しかし、この段階でのテーマの確定は、その後の研究室訪問や先行研究の学習を通じて得られるはずの新しい視点を、自ら閉ざしてしまうことにつながります。

複数の候補を並行して持っておき、情報が増えるたびに候補を入れ替える柔軟さを持っておくほうが、結果的に納得度の高いテーマにたどり着きやすくなります。一度決めたテーマに義理立てする必要はまったくありません。周囲に「テーマはもう決まったの」と聞かれても、「今はいくつか候補を比較している段階です」と答えて構わないのです。

興味と実行可能性を混同してしまう

もう一つよくあるのが、「面白そう」という興味だけでテーマを選び、実際に研究として成立するかどうかを考えないまま突き進んでしまうケースです。データが手に入りにくい、指導できる教員が少ない、調査に膨大な時間がかかるといった実行可能性の問題は、研究室選びの段階で本格的に検討することになりますが、1年6ヶ月前の時点でも「この興味は調べれば調べるほど深掘りできそうか」を意識しておくと後が楽になります。

ただし、この時期から実行可能性を厳密に検討しすぎるのも本末転倒です。興味の幅を広げることが優先課題であるこの段階では、実行可能性は「頭の片隅に置いておく程度」で十分だと考えてください。実行可能性の精査は、志望研究科や指導教員が具体的に見えてきた後で行うほうが、より正確な判断ができます。

動き出しが遅れてしまう

そして、シンプルながら影響の大きい失敗が「まだ早いだろう」と考えて動き出しを先送りしてしまうことです。研究テーマの種を探す作業は、机に向かって短時間で終わるものではなく、日々の学びや気づきを積み重ねながら少しずつ形になっていくものです。出願直前になってから慌てて種探しを始めると、掘り下げる時間が足りなくなるため、この記事を読んでいるタイミングこそが動き出す好機だと捉えてください。

周囲の評価を気にしすぎてしまう

最後に、友人や家族、あるいはSNSで見かける他の受験生の反応を気にしすぎて、自分の本当の興味とは違うテーマを選んでしまうケースもよく見られます。「その研究テーマは就職に役立つの」「もっと分かりやすいテーマにしたら」といった周囲の声は、悪意なく発せられることがほとんどですが、真に受けすぎると自分の関心から離れたテーマを選んでしまいかねません。研究を最後まで続けるのは自分自身であることを忘れず、周囲の意見は参考程度にとどめ、最終的な判断は自分の興味に基づいて行うようにしてください。周囲からの評価が気になったときは、いったんその意見をメモに書き留めておき、時間を置いてから自分の考えと照らし合わせて検討し直すという方法も有効です。

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1年6ヶ月前から1年前までの過ごし方

時期ごとにやることの目安

ここまで紹介してきた種探しの作業を、1年6ヶ月前から出願12ヶ月前にかけての大まかな流れとして整理すると、次のようになります。大学院によって選考日程や出願時期は異なりますので、あくまで進め方の目安として参考にしてください。表の期間はあくまで大まかな区切りであり、必ずしもこのペース通りに進める必要はありません。自分の生活リズムや学業の状況に合わせて、無理のない範囲で調整してください。

時期やること
1年6ヶ月前(今回)進学するかどうかの整理/学部での学びの棚卸し/興味のキーワード化
1年5〜4ヶ月前ごろ先行研究・研究室情報を眺める/興味の候補を2〜3個に絞る
1年3ヶ月前以降志望研究科・指導教員の具体的なリサーチへ移行

次に取り組むべきこと(志望研究科選びへ)

研究テーマの種がいくつか見えてきたら、次のステップは志望研究科と指導教員を具体的にリサーチしていく段階に入ります。どの大学院のどの研究室であれば、自分が見つけた種を育てられるのかを、研究室訪問なども視野に入れながら比較検討していくことになります。種を先に持っているかどうかで、この後のリサーチの精度は大きく変わります。何も持たずに研究室を眺めるのと、自分なりの問いを持って眺めるのとでは、得られる気づきの質がまったく違うからです。

志望研究科の選び方や指導教員・研究室のリサーチ方法については、次回改めて詳しく取り上げます。まずはこの記事で紹介した棚卸しとキーワード化を、焦らず自分のペースで進めてみてください。

この時期に完璧を目指さなくてよい理由

ここまで紹介してきた作業のどれ一つとして、完璧に仕上げる必要はありません。棚卸しシートが空欄だらけでも、キーワードが一語のままでも、この時期であれば十分に間に合います。大切なのは完成度ではなく、種を探すという行為そのものを習慣にしておくことです。日々のちょっとした気づきをメモする習慣が身につけば、次の段階に進んだときの伸びしろが大きく変わってきます。

記録は1冊のノートやメモアプリにまとめておく

この記事で紹介した棚卸しシート、キーワードの書き出し、先行研究や研究室で気になった情報は、できるだけ1冊のノートや1つのメモアプリにまとめておくことをおすすめします。バラバラの場所に記録してしまうと、数ヶ月後に見返すときに情報を探すだけで時間がかかってしまいます。1つの場所に集約しておけば、志望研究科を絞り込む段階になったときにすぐ振り返れます。形式は手書きのノートでもスマートフォンのメモアプリでも構いません。自分が続けやすい方法を選んでください。

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よくある質問(FAQ)

ここでは、大学院進学を考え始めたばかりの方からよく寄せられる質問をまとめました。1年6ヶ月前という早い時期ならではの疑問を中心に取り上げていますので、志望研究科を具体的に絞り込む段階の疑問は次回の記事もあわせてご確認ください。

大学院入試の勉強はいつから始めればいいですか?

専門科目や語学の本格的な対策は、出願12ヶ月前から始めるのが一般的な目安です。ただしその前段階として、1年6ヶ月前ごろから研究テーマの種を探しておくと、志望研究科選びや研究計画書作成がスムーズに進みます。大学院や専攻によって選考時期は異なるため、志望先の募集要項でスケジュールを確認することも並行して行ってください。焦って専門科目の勉強だけを先取りするよりも、まずは自分の関心の方向性を固める時間に充てるほうが、結果的に効率のよい準備につながります。研究テーマの種が定まっていない状態で専門科目の勉強だけを進めても、何のためにその知識を学んでいるのかが見えにくくなり、モチベーションを保ちづらくなる点にも注意してください。また、1年6ヶ月前の時点でこの記事の内容に取り組んでおくと、専門科目の学習が本格化する出願12ヶ月前を迎えたときに、迷いなくスタートダッシュを切れるという利点もあります。

研究テーマは大学院に入ってから決めても間に合いますか?

入学後にテーマが多少変わること自体は珍しくありませんが、出願時点でまったく方向性を持たずに臨むのは避けたほうが安全です。研究計画書や面接では、なぜその大学院・その研究室を志望するのかを、自分の興味と結びつけて説明する必要があります。方向性の種だけでも早めに持っておくと、出願書類の準備が格段に楽になりますし、面接での受け答えにも一貫性が生まれます。面接では研究テーマの中身そのものだけでなく、なぜその関心にたどり着いたのかという経緯も聞かれることが多いため、早い段階から自分の言葉で説明する練習を積んでおくことにも意味があります。

研究テーマがなかなか決まりません。どうすればいいですか?

1年6ヶ月前の段階で決まっていないのはむしろ自然なことです。焦って一つに絞ろうとせず、学部での学びの棚卸しと、日常で感じた興味の言語化を並行して進めてみてください。複数の候補を並べて眺めているうちに、共通するキーワードや関心の方向性が見えてくることが多くあります。決められないこと自体を問題視するのではなく、材料を集める作業を淡々と続けることを優先してください。頭の中だけで考えるより、紙に書き出す、声に出して説明してみる、信頼できる人に話を聞いてもらうなど、アウトプットの方法を変えてみるのも効果的です。

内部進学と外部の大学院受験、どちらを考えればいいですか?

どちらが良いかは、研究したい内容と現在の所属先で学べる範囲が一致しているかによって変わります。今のゼミや学部で扱っているテーマに強く関心があるなら内部進学が選択肢になりますし、他大学でしか学べない切り口に魅力を感じるなら外部受験も検討する価値があります。まずは種を探す作業を通じて、自分の関心がどちらに近いかを確かめるとよいでしょう。両方の可能性を残したまま情報収集を進めても問題ありません。所属する大学に興味のあるテーマを専門とする教員が見当たらない場合は、外部受験も含めて視野を広げることになります。

社会人から大学院を目指す場合も同じ時期に動き出すべきですか?

社会人の場合は仕事との両立で使える時間が限られるため、むしろ早めに種探しを始めておくメリットが大きいといえます。実務の中で感じた問題意識を学術的な問いに翻訳する作業には時間がかかることが多いため、1年6ヶ月前よりも早い段階から少しずつ考え始めておくのも一つの方法です。休日や通勤時間を使って、これまでの仕事で感じた疑問をメモに残しておくところから始めてみてください。勤務先の業種や職種によっては、研究テーマの種と実務経験を結びつけやすいという強みもあるため、これまでのキャリアを振り返る作業も棚卸しの一環として取り組んでみてください。

研究テーマの種と研究計画書は同じものですか?

同じものではありません。種は対象・問い・関心の理由をざっくりと言語化した段階のもので、研究計画書は先行研究を踏まえた背景・目的・方法・意義までを具体的な文章として組み立てた出願書類です。1年6ヶ月前の時点では種を育てることに集中し、研究計画書の作成は志望研究科が固まった後の段階で本格化させれば十分です。両者を混同して、この時期から完成度の高い計画書を目指す必要はありません。研究計画書を書く段階になって初めて種を探し始めると、先行研究を読み込む時間や教員に相談する時間が足りなくなってしまうため、この順序を逆にしないことが重要です。

まだ興味のある分野が定まらない場合、何から始めればいいですか?

分野そのものが定まっていない場合は、まず学部で受けてきた授業やレポート課題を一通り振り返ることから始めてみてください。印象に残っている科目や、成績には関係なく熱心に取り組めた課題を洗い出すと、自分でも気づいていなかった関心の傾向が見えてくることがあります。焦らず時間をかけて向き合うテーマなので、じっくり取り組んで問題ありません。友人や家族との会話の中で興味の話題が出た瞬間をメモしておくのも有効です。

文系・理系や専攻によって種の探し方は変わりますか?

基本的な進め方に大きな違いはありません。理系であれば実験やゼミ活動、文系であれば講義や演習で扱った文献が棚卸しの出発点になる点は異なりますが、「興味を広げてから言語化する」という優先順位は分野を問わず共通しています。心理学のように文理の境界にまたがる分野を志望している場合も、まずはこれまでの学びを一通り振り返ることから始めれば問題ありません。

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まとめ|研究テーマの種は「決める」のではなく「探す」もの

大学院入試の対策を1年6ヶ月前から始める最大の目的は、専門科目や語学の勉強を前倒しすることではなく、研究テーマの種を焦らず探しておくことにあります。種を先に育てておくことで、志望研究科選びも研究計画書の作成も、土台がある状態でスタートできるようになります。この記事で紹介したポイントを振り返ります。

  • 大学院入試の準備は出願12ヶ月前が一つの起点だが、その前段階として1年6ヶ月前から研究テーマの種を探しておくと後の準備が楽になる
  • 内部進学・外部受験・社会人からの受験のどれに近いかを整理すると、情報収集の重点が見えてくる
  • 研究テーマの種とは「対象」「問い」「関心の理由」の3要素をざっくり言語化したもので、研究計画書とは別物
  • 学部での授業・ゼミ・卒論の棚卸しと、日常の違和感やニュースからの興味の言語化を並行して進める
  • 先行研究や研究室の情報に軽く触れることで、自分の興味の学術的な位置づけが見えてくる
  • この時期にテーマを早く固めすぎない、興味と実行可能性を混同しない、動き出しを先送りしないことが大切
  • 種が見えてきたら、次は志望研究科・指導教員の具体的なリサーチに進む段階に入る
  • 文系・理系・内部進学・外部受験・社会人受験のいずれであっても、この時期にやるべきことの本質は変わらない

1年6ヶ月前という時期は、大学院入試全体のスケジュールの中では準備期間の入り口にすぎません。しかしこの入り口でどれだけ自分の興味と向き合えたかは、その後に続く研究室選びや研究計画書の作成、そして面接での受け答えにまで長く影響します。逆算のスケジュールだけを追いかけて種探しを飛ばしてしまうと、後になって「なぜこのテーマを選んだのか」を説明する言葉に困ることになりかねません。急いで結論を出すのではなく、この記事で紹介した棚卸し・キーワード化・情報収集という3つのステップを、自分のペースで繰り返してみてください。研究テーマの種探しは、正解が一つに決まっているものではなく、人によって進め方も速度も異なります。一人で抱え込んで悩み続けるよりも、途中経過を誰かに話しながら整理していくほうが、思いのほか早く方向性が見えてくることも少なくありません。周囲に相談できる教員や先輩が身近にいない場合や、進学するかどうかの判断そのものに迷いがある場合は、大学院入試対策の個別指導のように、研究テーマの掘り下げから相談できる専門の指導を活用するのも一つの方法です。まずは自分のペースで、興味の棚卸しから始めてみてください。

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この記事を書いた人

千葉大学 法政経学部を首席で卒業後、都内国公立大学の法科大学院(ロースクール)を修了し、司法試験に合格。法律・政治・経済分野の専門知識をもとに、スプリング・オンライン家庭教師の大学編入・大学院入試分野の指導および記事監修を担当。

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