【大学編入】法学・政治学系 英語試験の傾向と対策
大学編入2023.04.08
目次
はじめに
法学編入について、専門科目や小論文についての情報は、ネット上で散見される一方、英語についての情報はそれほどでもありません。
しかし、編入学受験生にとって、試験情報はきわめて大切なものです。
そこで今回の記事では、大学編入学試験における法学政治学について、その傾向と対策方法についての記事をまとめました。
なお、本記事は、河合塾KALSなどで、長年、法学政治学系の英語の講義を担当された佐和先生からご助言を基に作成しました。
佐和先生は、10年以上に及ぶ指導を通じて、これまでに多くの大学生の方の大学編入学をサポートされてきました。
試験の形式
法学編入試験における英語の試験形式は、2つに大別されます。
独自試験
1つは、各々の大学が作成した独自試験です。法学編入における英語の試験形式は、大半がこの形式になります。
独自試験にて出題される試験内容は、英文和訳問題や内容説明問題が中心です。
たとえば、受験生の間で人気が高い北海道大学、筑波大学、名古屋大学、大阪大学がこれに当てはまります。
こちらは、大学受験で言うところの、国公立大学二次試験形式のものをイメージしていただければと思います。
英文和訳や内容説明の問題が出題されることから、英文解釈力と日本語表現力、論理的思考力などが問われます。
外部試験(TOEIC/TOEFL)のスコア提出
もう1つは、独自試験を課す代わりに、TOEIC Listening & Reading TestやTOEFLibtなどのスコア提出をする形式です。
大学編入学試験において、これらの試験のスコアは以下の3つの形で活用されます。
①スコアの提出を出願要件とする。
その大学が定めたスコアをとり、その証明書を願書のなかで提出しないと、足切りをされるというもの。
②スコアを大学独自の方法で、100点換算して、その英語の点数を英語の試験の得点とする。
100点換算の方法は、大学によって異なっていて、一般に公開されていない場合がある。
③一定以上の点数を取っている場合、受けるべき英語の試験が免除される。
たとえば京都大学の場合、1に該当し、TOEFLのスコア提出が出願要件とされています。
京都大学に合格するためには、最低でも70点以上、確実に合格するためには80点前後を取得する必要があると言われています。
一方で、例年受験者の間で人気が高い神戸大学の場合、1と2の混合型です。
すなわちTOEFLで40点以上のスコアの提出またはTOEICで500点以上のスコア提出が求められると同時に、提出したスコアは一定の方法により換算され、得点として算出されます。ちなみにTOEFLとTOEICの両スコアの提出も認められており、両方提出した場合、換算後の得点が高いほうが採用されます。
神戸大学に合格するためには、最低でも750点以上、確実に合格するためには800点台を取得する必要があると言われています。一方、TOEFLの場合、65点~70点台を取得することが理想的です。
一般的にTOEFLの方がTOEICよりも難易度ははるかに高いと言われています。
それは、TOEFLではリスニングとリーディングに加えてスピーキングとライティングが求められる上に、内容もアカデミック且つ専門性が高いからです。またTOEICについては、ある程度テクニックだけで高得点を狙える側面もありますが、TOEFLでは一筋縄では解けない問題が多数あります。TOEICで高スコアを持っている人でもTOEFLではそれほどのスコアを出せない人もいるほどです。
もし、英語に自信を持っていない場合、断然TOEICの勉強をすることをお勧めします。
独自試験〜傾向〜
外部試験についての解説は別稿に譲り、ここでは独自試験の傾向とその対策の仕方について解説をしていきます。まずは、独自試験の傾向です。
専門性の高さ
大学受験でも早慶の一部の学部では、専門性が高い問題が出題されますが、大学編入学試験では、その傾向が強いと言えます。特に旧帝国大学やMARCHレベルでは、法学政治学に関する専門性が高い問題が出題されます。その多くは、英字新聞や法学政治学分野の英語で書かれた専門書の序章などが引用元です。
専門性の高い単語、細かい文法、複雑な文構造
専門性が高い英文が問題として出題されるため、自ずとそこで使用される単語も専門的なものになります。
また「of」や「in」、「for」など前置詞が持つ多様な意味を押さないと、編入レベルの英文和訳には対応できません。
文法については、「比較」など受験生にとってとっつきづらい単元が出題されるほか、「関係代名詞の二重限定」や「連鎖関係代名詞節」、「関係形容詞」など、大学受験では理解が曖昧なまま終わるような文法知識も出題されます。
文構造についても、主語が長いため文型を捉えづらい場合や等位接続詞がどの語と語、句と句、節と節を並列関係に置いているのかを見抜きづらい場合、形容詞句や副詞句がどの箇所を修飾しているのか判断に困る場合など、複雑な構造のものが問われることが多々あります。
英文量・問題数
英文量については、標準的であることが多く、大学受験の早慶上智で出題される超長文が出題されることは稀です。大問数は2〜3題であるところが多いです。
辞書の持ち込みの可否
北海道大学や名古屋大学、新潟大学、香川大学など一部の大学では辞書の持ち込みが許されている場合があります。英単語や熟語の知識がそれほどなくても、英文解釈には自信があるという方は、辞書の持ち込みが可の大学を志望校として設定することをお勧めします。
合格基準
出題傾向ではありませんが、ここで合格基準についても併せて言及しておきます。
各大学が公表している訳ではないため、明確な合格基準は定かではありませんが、過去の合格者に聞く限り、いずれの大学も7~8割はとれている必要があります。
また旧帝国大学で出題されることが多い英文和訳については、正しい解釈に基づいた構造理解ができていれば、問題ない場合が多く、大学受験の最難関レベルと言われている京都大学や慶應義塾大学(文学部)ほどの和訳の質は求められていません。
独自試験~対策の仕方~
前述したように、英文和訳と内容説明が中心に出題されるため、英文解釈力と日本語表現力、論理的思考力が問われます。
一文一文の構造を正確に捉えた上、こなれた日本語で正確に訳出する訓練、文章全体を論理的に読んでいく訓練を繰り返す必要があります。
自分自身で英文和訳の精度や内容説明の正しさを判断することはどうしてもできませんので、各分野に明るく尚且つ英語力・日本語力を備えた講師からの指導は欠かせません。
それではもう少し詳しく対策の仕方を見ていきましょう。
英単語
覚えるべき英単語の量は、下記①と②の両条件を満たすことが必要です。
①大学受験で早慶に合格できる程度の量
②その専門分野に関する基本的な内容を理解できる程度
①をクリアするために、スプリング・オンライン家庭教師は、Z会から出版されている『速読英単語』の使用を推奨しています。MARCH以下の大学レベルでは最低限、『速読英単語 必修編』、MARCH以上、旧帝国大学などの難関大学レベルでは必修編に加えて、『速読英単語 上級編』に載っている単語を全て覚えるようにしましょう。
『速読英単語』ですが、大学受験で東京大学や京都大学、早慶などの難関大学に合格する方の多くが使用する傾向にある単語帳です。文章を読みつつ、その中で単語を覚えることができるため、速読力と単語力を同時に鍛えることができるため、効率的な学習をすることが可能です。
②をクリアするためには、大学受験レベルの英単語帳では不十分です。しかし、法学政治学分野の単語帳は市販されていません。そこで考えられる対策方法は2つです。
1つは、編入予備校に通い、そこで配られている専門の単語帳を使用するという対策方法です。
しかし、大学受験レベル以上の英単語を覚えるにあたって、単語帳を使用するのは勉強の方法としては賢くありません。
大学受験にも当てはまることですが、そもそも英語が本当にできる人は、最初こそ、英単語帳を使って基本的な単語を覚えますが、ある程度覚えた後は、テキスト(問題集や過去問)を読みながら、その中で出てきた単語を逐一覚えるという勉強方法を採用している人が多いです。
それは、速読英単語を使用することをお勧めしている理由と同じで、英単語は文章を読みながら覚える方が効率的であるからです。また、文章を読みながら英単語を覚えるようにすれば、初見の単語でも文脈の中でその意味を推測できる力が身につきます。
そのため、法学政治学のテキストを使いつつ文章の中で英単語を覚えるというもう1つの対策方法をお勧めします。使用するべきテキストについては後述します。
英熟語
英熟語についても、大学受験で言うところの東大、京大、旧帝国大学、早慶レベルで求められる量を覚えることが理想的です。
英熟語を覚えるにあたっては、選択式問題、整序問題などの問題が多く含まれ、解説も含まれている問題集を使用することを推奨しています。
イメージとしては桐原出版の『Next Stage 英文法・語法問題』のようなものです。このような問題集を2~3つ揃え、毎日、取り組む問題の数を決めて問題を解きながら英熟語を覚えていくとよいです。
英文法
英文法については、1冊文法書を購入し、受験勉強の過程で理解が曖昧な文法に出会ったら、その都度、文法書の該当箇所を読んで、理解を深めるというやり方を推奨します。
大手予備校が出版している文法解説書を、1ページ目から隈なく読んでいくという勉強方法は、全くもって非効率ですので避けたほうがよいでしょう。
大学編入学受験のレベルでお勧めの文法書は、文英堂から出版されている『EARNEST英文法・語法 英文法・語法の徹底理解(シグマベスト)』です。
なお英語を得意とする人向けには、これと併せて旺文社の『徹底例解ロイヤル英文法』や金子書房の『英文法解説』などがあります。しかし、外国語学部や文学部英文学科への進学を検討されていない限り、背伸びをしてこれらの2冊には手出す必要はありません。
使用テキスト
最後に長文で使用する教材の選び方について解説します。こちらは4通りの方法があります。
①志望校の過去問
まず、教材としてもっとも最適なものは、志望校の過去問です。
出題傾向や難度も知ることができるため、できる限り早めに入手して取り組むと良いでしょう。
その際、自分の志望校のものだけでなく、同じ分野の他の大学の過去問を入手して、それを教材として使用するべきです。なぜならば他の大学の過去問で出題された問題の中で取り上げられていたテーマが、自分の志望校でも出題される可能性があるからです。
なお、各専門分野の過去問の入手方法についての記事もありますので、ご参考にしてください。
②過去問の原典
次に、志望校の過去問で出題された英文の原典です。
過去問の英文の最後には、引用元が記載されていますので、所属大学の図書館を通じて、原典を入手し、該当箇所の前後などを読んでみるとよいでしょう。原典は、専門書や論文、新聞/雑誌の一部であることがほとんどです。専門書や論文に比べて、新聞/雑誌の方が難易度は下がりますので、まずはそちらを使用し、余裕が出てきたら、専門書や論文にもあたってみるとよいでしょう。
ちなみに、英文和訳が課せられる主要な大学では、下記のように出典される新聞/雑誌にもある程度の傾向がありますので、志望校に合わせて教材を選ぶとよいでしょう。
大学名 | 出典 | 年度 |
---|---|---|
名古屋大学 | New York Times | 平成27、平成28、令和3 |
北海道大学 | Foreign Affairs | 平成30、令和2 |
筑波大学 | Japan Times | 平成30、令和2、令和5 |
③Oxford University PressのA Very Short Introductionシリーズ
3つ目にご紹介したいのは、Oxford University PressのA Very Short Introductionシリーズです。
こちらですが、法学政治学、経済学、経営学、社会学、文学、教育学、工学、数学、物理学などほぼあらゆる分野をカバーした英語の入門書です。専門分野のことを英語で学びたい入門者向けに書かれた書籍で、大変定評があります。
実際に、法学政治学の編入学試験の英文はこのシリーズから出されたこともあります。なおペーパーバック以外にもKindle版(電子書籍版)もあるため、気軽に購入もできます。
法学政治学分野では、以下のものを参考にすることができます。
④大学受験の問題集
英語に苦手意識を持っている方は、大学受験の問題集を使用してみることも一つの手です。
非常に多くの問題集が出版されていることに加えて、相性もありますので、どの問題集が良いかということについてここでは言及は控えますが、まずはこちらを使用し、慣れてきたら、編入試験の過去問などを使用して対策をすることをお勧めします。
その際、早稲田大学の政治経済学部や法学部、慶應義塾大学の法学部など、各難関大学法学部の過去問が収録された問題集を使用するとよいでしょう。それは各学部に在籍する教員が自らの専門分野から問題を出題しているからです。
⑤大学院入試の過去問
英語が得意であり、編入試験の問題では物足りない人、編入試験の過去問を全て解き終わってしまった人は、大学院入試の過去問を解いてみるのも良いでしょう。
もちろん編入試験よりは難易度は上がりますが、専門性が高いため、英語力を鍛えるにもってこいです。
一段階、二段階レベルが高い問題を解くことで、脳に負担をかけ続ければ、編入試験で出題される問題を簡単に感じるようになります。
おわりに
いかがでしたか?
以上のように、法学政治学系の大学に編入するためには、事前に試験の形式や傾向を押さえたうえで対策を練る必要があります。
本記事が少しでも皆さんの受験勉強に役立ってくれると幸いです。
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