【大学編入】英語の出題傾向とその対策
大学編入2023.03.16
目次
はじめに
大学編入学試において、受験生の間で点数に差が開きやすい傾向にあるのは、専門科目の試験よりも英語の試験においてです。そのため、英語の試験の出来は合否に大きく影響を与えると言われています。
そこで今回は、大学編入学試験における英語の試験の傾向とその対策の仕方について解説をしていきたいと思います。
試験の形式
大学編入学試験において、英語の試験の形式は大きく2つに大別されます。
独自試験
1つは、各々の大学が作成する独自試験です。
独自試験は、大学受験で言うところの、
国公立大学二次試験形式(英文和訳問題や内容説明問題などが中心)
私立大学形式(選択式問題、整序問題、正誤問題などが中心)
に大別されます。
国公立大学二次試験形式は、人文科学・社会科学の分野の難関大学で出題される傾向が強く、また法学政治学の分野でも、大半がこの形式で出題されます。
一方、私立大学形式の問題は、人文科学・社会科学と自然科学(理系)の各分野で出題されます。また、自然科学の分野では、この形式で出題される場合がほとんどです。
外部試験(TOEIC/TOEFL)のスコア提出
もう1つは、TOEICやTOEFLなどの外部試験のスコアを提出する形式です。
この形式の場合、独自試験は免除されます。
スコアは一定程度の点数をとることが募集要項などで明示されている場合と、そうでない場合があります。
いずれにせよ、MARCHレベルの大学では700点前後、難関大学では800点以上をとることが求められる傾向があります。
経済・経営の分野では、ほとんどの大学でこちらの形式が採用されています。
独自試験?外部試験(TOEIC/TOEFL)のスコア提出?
当然ですが、どうしても進学したい大学がある=志望校ありきの場合、その大学で求められる形式に従う必要があります。
しかし、もし
「旧帝国大学ならばどこでもいい」
「MARCHレベルの大学ならばどこでもいい」
というようにそれほど志望校にこだわりがない場合は、試験形式との相性に応じて志望校を決めることをお勧めします。
たとえば、独自試験との相性が良ければ、それを課す大学を志望校にし、外部試験との相性が良ければ、そのスコア提出を求める大学を志望校にするべきです。
その際、注意が必要なことは、英語を得意としない限り、独自試験を課す大学と外部試験のスコア提出を求める大学の両方を志望校にしないことです。
それは、それぞれの試験で求められる能力や対策の仕方が大きく異なってくるからです。
独自試験〜試験の傾向〜
外部試験についての解説は別稿に譲り、ここでは独自試験についての傾向とその対策の仕方について解説をしていきます。まずは、独自試験の傾向です。
専門性の高さ
大学受験でも早慶の一部の学部では、専門性が高い問題が出題されますが、大学編入学試験では、その傾向が強いと言えます。特に旧帝国大学やMARCHレベルでは、各専門分野に関する問題が出題されます。
その多くは、英字新聞(Japan TimesやNew York Timesなど)や各専門分野の英語で書かれた入門書の一部(たとえばOxford University PressのVery short introductionシリーズ)、専門書の序章などが引用元です。
専門性の高い単語、細かい文法、複雑な文構造
専門性が高い英文が問題として出題されるため、自ずとそこで使用される単語も専門的なものになります。
また、「of」や「in」、「for」などの前置詞の多様な意味を押さないと、編入レベルの英文和訳には対応できません。
文法については、「比較」など受験生にとってとっつきづらい単元が出題されるほか、「関係代名詞の二重限定」や「連鎖関係代名詞」、「関係形容詞」など、大学受験では理解が曖昧なまま終わるような知識も出題されます。
文構造についても、主語が長いため文型を捉えづらい場合や等位接続詞がどの語と語、句と句、節と節を並列関係に置いているのかを見抜きづらい場合、形容詞句や副詞句がどの箇所を修飾しているのか判断に困る場合など複雑な構造のものが問われることが多々あります。
英文量・問題数
英文量については、標準的であることが多く、大学受験の早慶上智で出題される超長文が出題されることは稀です。
問題数も長文については1~2題であるところが多く、それ以外は、選択式問題、整序問題、正誤問題などが出題されます。
辞書の持ち込みの可否
一部の大学では辞書の持ち込みが許されている大学があります。英単語や熟語の知識がそれほどなくても、英文解釈には自信があるという方は、辞書の持ち込みが可の大学を志望校として設定することをお勧めします。
合格基準
出題傾向ではありませんが、ここで合格基準についても併せて言及しておきます。
各大学が公表している訳ではないため、明確な合格基準は定かではありませんが、過去の合格者に聞く限り、いずれの大学も7~8割はとれている必要があります。
また旧帝国大学で出題されることが多い英文和訳については、正しい解釈に基づいた構造理解ができていれば、問題ない場合が多く、大学受験の最難関レベルと言われている京都大学や慶應義塾大学(文学部)ほどの和訳の質は求められていません。
独自試験〜対策方法〜
では、大学編入学の独自試験に合格するために、どのような対策を行えばよいのでしょうか?
国公立大学二次試験形式と私立大学形式、それぞれについて解説をしていきます。
国公立大学二次試験形式
英文和訳と内容説明が中心に出題されるため、英文解釈力と日本語表現力が問われます。
対策としては、テキストを使って一文一文の構造を正確に捉え、こなれた日本語で正確に訳出していく訓練を繰り返すことです。
自分自身で英文和訳の精度や内容説明の正しさを判断することはどうしてもできませんので、各分野に明るく尚且つ英語力・日本語力を備えた講師からの指導は欠かせません。
私立大学形式
選択式問題、整序問題、正誤問題が中心に出題されるため、速読力や設問処理能力などが問われます。対策としては、限られた時間内で要領よく問題を解く能力を伸ばすことです。
難関大学に合格するような受験の成功者から指導を受けることで、要領良く問題を解くテクニックを学ぶことが必要です。
各試験形式 共通
■英単語
国公立大学二次試験形式、私立大学形式、いずれの形式で受験をするにせよ、英単語・英熟語の習得は欠かせません。
覚えるべき英単語の量は、下記①と②の両条件を満たすことが必要です。
①大学受験で早慶に合格できる程度の量
②その専門分野に関する基本的な内容を理解できる程度
①をクリアするために、スプリング・オンライン家庭教師は、Z会から出版されている『速読英単語』の使用を推奨しています。MARCH以下の大学レベルでは最低限、『速読英単語 必修編』、MARCH以上、旧帝国大学などの難関大学レベルでは必修編に加えて、『速読英単語 上級編』に載っている単語を全て覚えるようにしましょう。
『速読英単語』ですが、大学受験で東京大学や京都大学、早慶などの難関大学に合格する方の多くが使用する傾向にある単語帳です。文章を読みつつ、その中で単語を覚えることができるため、速読力と単語力を同時に鍛えるなど、効率的な学習をすることが可能です。
②をクリアするためには、大学受験レベルの英単語帳では不十分です。
しかし、各専門分野の単語帳は一部を除いて市販されていません。そこで考えられる対策方法は2つです。
1つは、編入予備校に通い、そこで配られている専門の単語帳を使用するという対策方法です。
しかし、大学受験レベル以上の英単語を覚えるにあたって、単語帳を使用するのは勉強の方法としては賢くありません。
大学受験にも当てはまることですが、そもそも英語が本当にできる人は、最初こそ、英単語帳を使って基本的な単語を覚えますが、ある程度覚えた後は、テキスト(問題集や過去問)を読みながら、その中で出てきた単語を逐一覚えるという勉強方法を採用している人が多いです。
それは、速読英単語を使用することをお勧めしている理由と同じで、英単語は文章を読みながら覚える方が効率的であるからです。また、文章を読みながら英単語を覚えるようにすれば、初見の単語でも文脈の中でその意味を推測できる力が身につきます。
そのため、各専門分野のテキストを使いつつ文章の中で英単語を覚えるというもう1つの対策方法をお勧めします。使用するべきテキストについては後述します。
■英熟語
英熟語についても、大学受験で言うところの東大、京大、旧帝国大学、早慶レベルで求められる量を覚えることが理想的です。
英熟語を覚えるにあたっては、選択式問題、整序問題などの問題が多く含まれ、解説も含まれている問題集を使用することを推奨しています。
イメージとしては桐原出版の『Next Stage 英文法・語法問題』のようなものです。このような問題集を2~3つ揃え、毎日、取り組む問題の数を決めて問題を解きながら英熟語を覚えていくとよいです。
■英文法
英文法については、1冊文法書を購入し、受験勉強の過程で理解が曖昧な文法に出会ったら、その都度、文法書の該当箇所を読んで、理解を深めるというやり方を推奨します。
大手予備校が出版している文法解説書を、1ページ目から隈なく読んでいくという勉強方法は、全くもって非効率ですので避けたほうがよいでしょう。
大学編入学受験のレベルでお勧めの文法書は、文英堂から出版されている『EARNEST英文法・語法 英文法・語法の徹底理解(シグマベスト)』です。
なお英語を得意とする人向けには、これと併せて旺文社の『徹底例解ロイヤル英文法』や金子書房の『英文法解説』などがあります。しかし、外国語学部や文学部英文学科への進学を検討されていない限り、背伸びをしてこれらの2冊には手出す必要はありません。
■使用テキスト
最後に長文で使用する教材の選び方について解説します。こちらは4通りの方法があります。
①志望校の過去問
まず、教材としてもっとも最適なものは、志望校の過去問です。
出題傾向や難度も知ることができるため、できる限り早めに入手して取り組むと良いでしょう。
その際、自分の志望校のものだけでなく、同じ分野の他の大学の過去問を入手して、それを教材として使用するべきです。なぜならば他の大学の過去問で出題された問題の中で取り上げられていたテーマが、自分の志望校でも出題される可能性があるからです。
なお、各専門分野の過去問の入手方法についての記事もありますので、ご参考にしてください。
②過去問の原典
次に、志望校の過去問で出題された英文の原典です。
過去問の英文の最後には、引用元が記載されていますので、所属大学の図書館を通じて、原典を入手し、該当箇所の前後などを読んでみるとよいでしょう。原典は、専門書や論文、新聞/雑誌の一部であることがほとんどです。専門書や論文に比べて、新聞/雑誌の方が難易度は下がりますので、まずはそちらを使用し、余裕が出てきたら、専門書や論文にもあたってみるとよいでしょう。
③Oxford University PressのA Very Short Introductionシリーズ
3つ目にご紹介したいのは、Oxford University PressのA Very Short Introductionシリーズです。
こちらですが、法学政治学、経済学、経営学、社会学、文学、教育学、工学、数学、物理学などほぼあらゆる分野をカバーした英語の入門書です。専門分野のことを英語で学びたい入門者向けに書かれた書籍で、大変定評があります。
実際に、編入学試験の英文はこのシリーズから出題されることがよくあります。なおペーパーバック以外にもKindle版(電子書籍版)もあるため、気軽に購入もできます。
④大学受験の問題集
英語に苦手意識を持っている方は、大学受験の問題集を使用してみることも一つの手です。
非常に多くの問題集が出版されていることに加えて、相性もありますので、どの問題集が良いかということについてここでは言及は控えますが、まずはこちらを使用し、慣れてきたら、編入試験の過去問などを使用して対策をすることをお勧めします。
その際、早稲田大学の政治経済学部や法学部、慶應義塾大学の法学部など、各難関大学法学部の過去問が収録された問題集を使用するとよいでしょう。それは各学部に在籍する教員が自らの専門分野から問題を出題しているからです。
⑤大学院入試の過去問
英語が得意であり、編入試験の問題では物足りない人、編入試験の過去問を全て解き終わってしまった人は、大学院入試の過去問を解いてみるのも良いでしょう。
もちろん編入試験よりは難易度は上がりますが、専門性が高いため、英語力を鍛えるにもってこいです。
一段階、二段階レベルが高い問題を解くことで、脳に負担をかけ続ければ、編入試験で出題される問題を簡単に感じるようになります。
おわりに
いかがでしたか?
以上のように、大学に編入するためには、事前に試験の形式や傾向を押さえたうえで対策を練る必要があります。
本記事が少しでも皆さんの受験勉強に役立ってくれると幸いです。
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