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院試の志望理由書の書き方|研究計画書との違い・構成テンプレート・例文つき

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院試の志望理由書は、「なぜその大学院・その研究科・その教員のもとで学びたいのか」を自分自身の経験に基づいて語る書類です。一方で研究計画書は「何をどう研究するのか」を先行研究の引用など客観的な裏付けとともに示す書類であり、両者は役割がはっきりと分かれています。この違いを理解しないまま書き始めると、志望理由書に研究計画を詰め込みすぎて動機が見えなくなったり、逆に研究計画書が主観的な熱意だけの文章になってしまったりしがちです。

「何を書けばいいか分からない」「ネットの例文を参考にすると、みんな同じような文章になってしまう」という2つの悩みは、院試の志望理由書に取り組む多くの受験生に共通しています。とくに例文の丸写しや生成AIによる文章生成は、教員が大量の書類を読み比べる中で既視感として見抜かれやすく、かえって評価を下げるリスクがあります。さらに大学院入試の面接は、提出済みの志望理由書の内容をもとに質問が進むケースがほとんどのため、書類作成の段階から面接対策が始まっているという意識も欠かせません。

この記事では、志望理由書と研究計画書の役割分担の整理から、そのまま骨格として使える4ブロックの構成テンプレート、理系・文系・社会人それぞれの例文、そして「自分にしか書けない文章」に仕上げるための個別化のテクニックまでを順に解説します。あわせて生成AIの利用に関する大学ごとの方針の違いや、提出前に確認しておきたいチェックリストも取り上げます。なお、様式や字数、生成AIの取り扱いは大学院・研究科によって異なるため、実際に出願する際は必ず最新の募集要項で確認してください。

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目次

院試の志望理由書とは?合否への影響と大学院が見ているポイント

大学院入試で提出する書類には、願書や成績証明書のほかに、志望理由書、研究計画書、場合によっては推薦書などが含まれます。この中で志望理由書は「なぜこの研究科・この教員のもとで学びたいのか」という動機と経緯を、受験生自身の経験に基づいて語るための書類です。令和7年度学校基本調査(確定値)によると、大学(学部)卒業者のうち大学院等への進学率は12.7%であり、大学院入試は多くの学部生にとって身近な選択肢である一方、誰もが当たり前に選ぶ道ではないという位置づけも見えてきます。だからこそ、なぜ自分がその少数派の選択をするのかを言語化する作業が志望理由書には求められます。

志望理由書が実際に使われる場面は大きく3つあります。1つ目は書類審査そのもので、研究計画書とあわせて出願者の問題意識や研究への適性を判断する材料になります。2つ目は面接(口述試験)で、提出済みの志望理由書・研究計画書の内容に基づいて質問が進むことがほとんどです。3つ目は、合格後に指導教員がその学生をどう指導していくかを考えるための参考資料としての役割です。つまり志望理由書は、選考のためだけでなく、入学後の関係性の土台にもなる書類だといえます。

教員が志望理由書を読む際に重視しているのは、文章の巧拙そのものよりも「問題意識に一貫性があるか」「その研究室で指導可能な内容か」「2年間(あるいはそれ以上)研究をやり切れそうか」という点です。学部入試の志望理由書がアドミッションポリシーとの適合性を中心に見られるのに対し、院試の志望理由書では特定の教員・研究室を選んだ理由まで踏み込んで問われる点が決定的に違います。単に大学の知名度やブランドへの憧れではなく、「その研究室でなければならない理由」を具体的に示せるかどうかが問われるのです。

配点そのものが公開されていない大学院がほとんどですが、志望理由書は面接での質問の土台になる以上、内容を軽く扱ってよい書類ではありません。合格を保証するものではないにせよ、書類の完成度が低いまま面接に臨めば、想定外の質問に答えられず苦しくなる可能性は高くなります。まずはこの書類が「研究者としての適性」と「研究室とのマッチング」を伝えるための最初の一歩であるという前提を押さえておきましょう。

院試の志望理由書と研究計画書の違い|2つの書類の役割分担

志望理由書と研究計画書は、しばしば混同されがちですが、目的も文体も異なる書類です。志望理由書は「なぜ」を語る書類で、本人の経験や問題意識に基づく主観的な記述が許容されます。一方、研究計画書は「何を・どのように」研究するのかを示す書類で、先行研究の引用など客観的な裏付けが求められます。研究計画書はA4用紙1枚(およそ1000字)程度から数枚程度にまとめるのが一般的とされ、単なる提出書類の1つにとどまらず、大学院側が選考で最も重視する書類の1つとされています。この役割の違いを理解せずに書き始めると、志望理由書が研究計画の説明に偏って動機が見えなくなったり、逆に研究計画書に個人的な思い入ればかりが書かれて客観性を欠いたりする失敗につながります。

項目志望理由書研究計画書
目的なぜ学びたいかを伝える何をどう研究するかを示す
視点主観(自分の経験・問題意識)客観(先行研究に基づく裏付け)
中心となる問いWhy(なぜこの研究科・教員か)What・How(研究テーマと方法)
分量の目安研究科により様々(募集要項要確認)A4 1枚(約1000字)〜数枚程度
評価者が見る点問題意識の一貫性・志望の必然性研究の妥当性・実行可能性

両方の提出を求められる研究科では、志望理由書と研究計画書の内容が食い違わないよう「一貫性チェック」を行うことが重要です。具体的には、研究テーマの名称、キーワード、志望する教員名がすべての書類で一致しているかを突き合わせます。志望理由書の中で語った問題意識と、研究計画書で示す具体的な研究方法が、読み手から見て自然につながっているかを確認しましょう。詳しい研究計画書の書き方や先行研究の扱い方については、研究計画書の書き方を徹底解説|大学院入試で通る構成・例・添削の使い方もあわせて参考にしてください。

一方で、志望理由書のみの提出を求める研究科もあります。この場合でも、志望理由書の中に「研究したいテーマの要点」を1段落程度盛り込み、動機と研究内容の両方が伝わるようバランスを取る必要があります。ただし、研究計画の詳細まで書き込みすぎると本来の主役である「なぜ」の部分が埋もれてしまうため、あくまで要点にとどめることが大切です。どちらの書類が求められているかは研究科によって異なるため、出願前に募集要項を必ず確認してください。

書き始める前の準備|募集要項の確認と研究室リサーチ

志望理由書を書き始める前に、まず確認すべきなのが募集要項です。様式・字数の指定、手書きかパソコン作成か、提出方法(郵送・Web出願システムなど)、締切日の5点は最低限チェックしましょう。志望理由書は志望する大学院・研究科によってフォーマットや字数の指定が異なり、指定フォーマットを使わないと受理されないケースもあります。字数についても、研究科によって数百字から2000字程度まで幅があるとされ、大学院入試に限定した統一的な基準は存在しないため、必ず出願年度の募集要項で確認する姿勢が欠かせません。

  • 様式:指定のフォーマット・書式があるか
  • 字数:上限・下限、目安の文字数
  • 作成方法:手書き指定かパソコン入力か
  • 提出方法:郵送・Web出願・メール添付など
  • 締切:出願期間と提出書類の締切日

募集要項の確認と並行して欠かせないのが、志望する研究室・教員のリサーチです。researchmapや大学の紀要、研究室の公式サイトを使って、教員の直近の論文・著書・科研費のテーマを調べておきましょう。加えてCiNii、J-STAGE、KAKEN(科学研究費助成事業データベース)なども、その分野の研究動向や教員の研究実績を把握するのに役立ちます。志望理由書の中で「読んだ論文を1本も挙げられない」状態では、志望動機が抽象的な憧れの域を出ず、他の受験生と似た文章になってしまう構造的な原因になります。

可能であれば研究室訪問やオープンキャンパス、説明会に参加し、実際に教員や在学生から話を聞く機会を作ることも有効です。訪問時には、研究室の指導スタイル、使用している設備・データ、修了後の進路、他の院生の研究テーマなどを聞いておくと、志望理由書に固有の情報を盛り込みやすくなります。準備段階では、原体験・学部での学び・研究に興味を持ったきっかけ・卒業論文のテーマ・将来のキャリア像といった要素を、ワークシート形式で書き出しておくと、後の構成づくりがスムーズになります。

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院試の志望理由書に盛り込むべき5つの要素

院試の志望理由書には、大きく分けて5つの要素を盛り込む必要があります。1つ目は「結論としての志望理由」、2つ目は「きっかけ・問題意識の原点」、3つ目は「その研究科・研究室でなければならない理由」、4つ目は「入学後に取り組みたいこと(研究計画の要点)」、5つ目は「修了後の展望・キャリア」です。これらを結論から先に述べるPREP的な構成で書くことが推奨されています。教員は出願期間中に大量の書類に目を通すため、冒頭で方向性を明確に示すことで、その後の記述を読みやすくする効果があります。

きっかけ・問題意識の原点については、エピソードの珍しさよりも「その経験がどのように問題意識につながったか」という接続の説得力が評価されます。単に印象的な出来事を語るだけでなく、そこから生まれた疑問や課題意識を、研究テーマへの関心にどうつなげたかを示すことが重要です。

「その研究室でなければならない理由」は、面接で頻出する「なぜこの大学院か」「同分野の教員の中でなぜこの教員の指導を希望するのか」という質問への布石にもなります。教員の研究内容、指導体制、研究室の設備、カリキュラムなど、固有名詞を使って具体的に書くことで、他の研究室でも通用するような一般論から抜け出せます。入学後に取り組みたいことについては、研究計画書と内容が矛盾しないよう整合性を保ちながら、志望理由書ではあくまで要点をまとめる程度にとどめます。

修了後の展望は、研究者を志す場合、企業就職を考えている場合、社会人としてキャリアアップを図る場合とで書き方が変わります。研究者志望なら学会発表や博士後期課程への接続、就職を考えているなら研究で培った能力の実務での活かし方、社会人であれば現職への還元という具合に、自分の立場に合わせて具体化しましょう。5つの要素の分量配分は絶対的な決まりではありませんが、目安として結論1割・きっかけ2割・固有の理由3割・入学後の計画3割・展望1割程度で構成すると、バランスの取れた文章になりやすいという考え方があります。

院試の志望理由書の構成テンプレート|4ブロックでそのまま組み立てる

ここまでの要素を実際の文章に落とし込むために、4つのブロックで構成するテンプレートを紹介します。【1】志望の結論、【2】問題意識に至った経緯、【3】貴学・貴研究科を志望する固有の理由、【4】入学後の計画と修了後の展望、という流れです。この骨格に沿って書くことで、結論を先に示しつつ、経緯・固有の理由・将来像を過不足なく盛り込むことができます。

  • 【1】志望の結論:「私は◯◯という課題を◯◯の手法で研究するため、◯◯研究科◯◯専攻を志望します。」
  • 【2】問題意識に至った経緯:「学部在学中に◯◯に取り組む中で、◯◯という問題に直面しました。」
  • 【3】固有の志望理由:「貴研究科の◯◯教授が取り組まれている◯◯という研究に強い関心を持ち、◯◯の環境で学びたいと考えました。」
  • 【4】入学後の計画と展望:「入学後は◯◯について研究を進め、修了後は◯◯として◯◯に取り組みたいと考えています。」

字数指定が短い場合(600字程度まで)は、【2】の経緯部分を簡潔に圧縮し、【3】の固有の理由を厚めに書くことを優先しましょう。教員が最も知りたいのは「なぜこの研究室か」という部分であり、ここが薄くなると他の受験生との差別化ができなくなります。逆に字数指定が長い場合(1200字以上)は、【2】の経緯や【4】の入学後の計画・展望を掘り下げ、具体的なエピソードや研究の見通しを詳しく書くことで、内容に厚みを持たせられます。

文体は「です・ます調」が一般的ですが、研究科によって「だ・である調」を求められる場合もあるため、募集要項の指示があればそれに従います。一文はできるだけ短く区切り、段落ごとに1つの主張を置くことを意識すると読みやすくなります。手書き指定かパソコン作成かによっても体裁の整え方は変わるため、募集要項の指示が最優先です。なお、このテンプレートはあくまで骨格であり、次章で紹介する例文と、その後の個別化のテクニックを組み合わせて初めて「自分にしか書けない文章」に仕上がる点を意識しておいてください。

【例文つき】院試の志望理由書の書き方|理系・文系・社会人別

ここでは理系・文系・社会人という3つの立場別に、オリジナルの例文を紹介します。いずれも架空の大学名・教員名を用いた例であり、実在の大学院を示すものではありません。そのまま流用せず、あくまで構成の参考として活用してください。

理系(内部進学・実験系)の例文
「私は学部の卒業研究で◯◯材料の耐久性について実験的に検討し、既存の評価手法では長期劣化の予測精度に限界があるという課題に直面しました。この課題を解決するには、◯◯大学大学院◯◯研究科の◯◯教授が進める新しい評価手法の研究に参加し、実験データと理論モデルの両面からアプローチする必要があると考え、貴研究科を志望します。入学後は◯◯教授のもとで得られた知見をもとに、より汎用性の高い評価モデルの構築に取り組み、修了後はメーカーの研究開発職として社会実装につなげたいと考えています。」

  • 卒論で直面した具体的な課題から出発している
  • 解決に必要な手法・設備を持つ研究室へと論理的に接続している
  • 修了後のキャリアまで一貫した流れになっている

文系(外部受験・人文社会系)の例文
「学部では◯◯についての先行研究を読み進める中で、既存の議論が◯◯という視点を十分に扱っていないことに気づきました。この問いをより深く検討するためには、◯◯大学大学院◯◯研究科において◯◯教授が専門とされる◯◯の観点からの分析が不可欠であると考え、貴研究科を志望します。学部では◯◯大学に所属していますが、この分析視点を持つ教員が在籍する貴研究科でなければ、この問いを深めることはできないと判断しました。入学後は◯◯教授の指導のもと、◯◯という対象を事例に研究を進めたいと考えています。」

  • 先行研究の読解から自分固有の問いを立てている
  • 外部受験であっても現所属を批判せず、志望先固有の理由に焦点を当てている
  • 指導教員の専門性と自分の問いの一致を明示している

社会人(キャリア接続型)の例文
「私は◯◯業界で◯◯年間、◯◯業務に携わる中で、現場の勘や経験則だけでは解決しきれない◯◯という課題に直面してきました。この課題を理論的に整理し解決策を導くためには、◯◯大学大学院◯◯研究科の社会人向けコースで、◯◯教授の指導のもと体系的に学ぶ必要があると考え、志望いたします。入学後は実務で得たデータをもとに◯◯について研究し、修了後は学んだ知見を職場に還元し、◯◯分野の専門性を高めたキャリアを築きたいと考えています。」

  • 実務上の課題を出発点にしている
  • 理論的な学びが必要な理由を具体的に説明している
  • 修了後に実務へ還元する視点を示している

これら3つの例文に共通するのは、抽象的な憧れではなく、具体的な経験や課題から出発し、志望先固有の理由へと論理的につなげている点です。ただし、同じような構成の例文は多くの受験生が参照しており、文面をそのまま流用すれば教員に既視感を与え、かえって評価を下げかねません。次章では、例文の構造を活かしつつ「自分にしか書けない一文」に仕上げるための個別化のテクニックを解説します。社会人受験生特有の論点については、社会人 大学院入試を徹底解説|出願資格・研究計画書・英語・面接対策も参考にしてください。

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コピペで死なないための個別化テクニック|生成AI利用の注意点も

教員は毎年、膨大な数の志望理由書に目を通しています。そのため「貴学の充実した研究環境に魅力を感じ」「先生の研究に強い関心を持ち」といった頻出フレーズは、内容が伴っていない文章として見抜かれやすい構造があります。例文をなぞっただけの文章や、生成AIがそのまま書いたような無難な表現は、他の受験生の書類と似通ってしまい、結果として「この人でなければならない理由」が伝わらなくなってしまいます。

個別化のためには、次の3つの質問に自分自身で答えてみることが有効です。「その問題意識はいつ・どこで生まれたのか」「その研究室の何を、論文名やプロジェクト名のレベルで具体的に知っているか」「自分のこれまでの経歴のどの部分が、その研究に活きるのか」。これらの質問に具体的に答えられれば、抽象的な言葉を固有名詞に置き換える作業がしやすくなります。例えば「環境問題に関心がある」という抽象的な表現は、「◯◯教授の論文で示された◯◯という課題に着目した」というように、具体的な論文名や課題名に置き換えることで、格段に説得力が増します。

生成AIの利用については、大学によって方針がまったく異なる点に注意が必要です。山梨大学は、出願時に自ら作成する書類(志望理由書・研究計画書等)について、生成AIによって生成された文章等をそのまま使用することは一切認めず、判明した場合は不正行為とみなし合格を取り消すと明示しています。一方で東京農工大学は、出願書類(志望理由書・活動報告書等)の作成において生成AI利用の有無自体は問わないものの、生成した内容に関する責任はすべて出願者本人が負うとしています。さらに文部科学省は「大学入学者選抜における生成AIの取扱いについて」(令和6年)で、志願者本人が記載する出願書類を求める場合、生成AIの取扱いを募集要項等に示すよう各大学に周知しています。

  • 大学により生成AIへの方針は正反対になりうる
  • 志望校の募集要項・公式サイトでの確認が唯一の正解
  • 許容される場合でも、構成の壁打きや誤字チェックといった補助的な使い方にとどめるのが無難
  • 本文をそのまま生成させて提出するような使い方は、大学の方針次第で重大なリスクを伴う

仮に生成AIの利用が認められている大学であっても、AIが出力する文章は一定の傾向に収束しやすく、他の受験生の文章と似通ってしまうリスクがあります。結果として、既視感のある文章として受け取られたり、最悪の場合は盗用が疑われたりする可能性も否定できません。生成AIを使う場合も使わない場合も、最終的に固有名詞・一次体験・自分が実際に読んだ論文といった要素で肉付けし、「自分にしか書けない文章」に仕上げる意識を持つことが重要です。

院試の志望理由書でやりがちなNG例と書き直しのコツ

志望理由書にはいくつかの典型的な失敗パターンがあります。ここでは代表的な5つのNG例と、その書き直しの方向性を紹介します。いずれも「絶対に不合格になる」と断定するものではありませんが、教員視点で見たときに評価しづらくなる要因になり得るものです。

NG1:大学の魅力の羅列で「自分」が不在
Before:「貴学は研究設備が充実しており、多くの著名な教授が在籍しているため志望しました。」
After:「貴研究科の◯◯教授が取り組む◯◯という研究手法は、自分が学部で直面した◯◯の課題を解決する鍵になると考え、志望しました。」大学の魅力を並べるだけでは、なぜ自分がそれを必要としているのかが見えません。

NG2:学部入試の志望理由書の焼き直し
学部受験時に使った「憧れ」や「イメージ」中心の書き方をそのまま流用すると、研究者としての問題意識が伝わりません。院試では特定の教員・研究内容への接続まで踏み込む必要があります。

NG3:研究計画書と内容が矛盾
志望理由書で述べたテーマと、研究計画書で示す研究内容がずれていると、一貫性のなさを指摘されかねません。提出前に両書類のキーワード・テーマ名を突き合わせましょう。

NG4:熱意だけで根拠がない
「絶対に頑張ります」「強い熱意があります」といった宣言だけでは、なぜその研究室でなければならないのかという根拠が伝わりません。熱意は具体的な経験や論文の引用で裏付ける必要があります。

NG5:ネガティブな志望動機(今の環境批判・就職逃避)
Before:「今の大学の研究環境に不満があり、外部の大学院を受験しました。」
After:「現所属で◯◯という基礎を身につけましたが、◯◯をさらに深めるには貴研究科の◯◯という環境が必要だと考えました。」現環境への批判ではなく、「現所属で得たもの→さらに必要なもの→志望先にしかない資源」という前向きな構成に翻訳することが重要です。

大学名そのものへの憧れ、いわゆる学歴的な動機が本音にある場合でも、それを正直に書くのではなく、研究環境や指導体制といった観点に翻訳して表現する工夫が求められます。また、就職からの逃避やモラトリアム的な動機が透けて見える表現も避けるべきです。このほか、誤字脱字、「貴学」「貴研究科」といった敬称の使い分けの誤り、志望する教員名の誤記といった初歩的なミスも、内容以前の信頼性を損なう要因になるため、提出前に必ず確認しましょう。

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志望理由書と面接(口述試験)の一貫性を保つ方法

大学院入試の面接では、志望理由を聞かれるケースがほとんどであり、事前に提出した志望理由書・研究計画書の内容に基づいて質問され、深掘りされるのが一般的です。つまり面接は、志望理由書の「答え合わせ」の場だと捉えることができます。書類を提出した時点で気を抜くのではなく、そこからが面接対策の本番だという意識を持つことが大切です。

面接では「なぜこの大学院か」「同分野の教員の中でなぜこの教員の指導を希望するのか」「研究を通して何を学び・身につけたいか」といった質問が頻出するとされています。これらはいずれも志望理由書に書いた内容と直接対応しているため、提出前に志望理由書の各段落から想定質問を3つずつ作っておくワークが効果的です。例えば固有の志望理由を書いた段落からは「その教員の研究の何に具体的に惹かれたのか」「他の研究室ではなぜだめなのか」といった質問を想定できます。

  • 各段落から想定質問を作成し、口頭で答えられるか確認する
  • 引用した論文・専門用語は、自分の言葉で説明できるものだけを書く
  • 提出書類のコピー(またはデータ)を必ず手元に残しておく
  • 出願から面接までの間に、提出した内容を定期的に読み返すスケジュールを組む

「書いた内容を口頭で説明できない」という事態を防ぐには、引用した論文や専門用語は、自分が実際に理解し説明できるものだけを書くという原則を守ることが重要です。背伸びして知らない専門用語を並べたり、他人の言葉を借りたまま提出したりすると、面接での深掘りによってその弱さが露呈しやすくなります。この点は前章で触れた個別化のテクニックとも重なるところで、自分の経験と言葉で書いた文章であれば、面接で問われても自然に答えられるはずです。志望理由書と面接の関係については志望理由書と面接試験の重要性、具体的な面接準備の進め方は面接試験に向けた準備の仕方は!?ー大手編入予備校の講師が解説!で詳しく解説しています。

外部進学・社会人など状況別の志望理由書の書き方

受験生の置かれた状況によって、志望理由書で意識すべきポイントは変わってきます。ここでは外部受験、内部進学、社会人、分野転向という4つの状況別に整理します。

外部受験(他大学院への進学)の場合、面接では「なぜ今の大学院ではないのか」という質問にほぼ確実に対応する必要があります。ここで現所属への批判に終始すると印象が悪くなりやすいため、「現所属で得たもの→それだけでは足りない理由→志望先固有の資源」という3段構成で前向きに説明しましょう。

内部進学の場合、同じ研究室に上がるケースでは「書くことがない」と感じやすいのが特徴です。この場合は、卒業論文で到達した地点と、修士課程でさらに発展させたい内容との差分を明確に書くことで、油断による定型文化を避けられます。単に「引き続き同じ研究を続けます」ではなく、何が新しく加わるのかを具体的に示すことが重要です。

社会人の場合は、実務経験と研究テーマとの接続を軸に据えます。実務で直面した課題を、どのように研究上の問いへ翻訳するかがポイントです。勤務との両立計画や学費計画に触れる場合は、長期履修制度など研究科ごとに異なる制度もあるため、各研究科の募集要項で必ず確認するようにしてください。

分野転向(専攻変更)の場合は、これまで学んできた分野のスキルが新しい分野でどう転用できるかを具体的に示す必要があります。例えば情報系から計算社会科学へ転向する場合、プログラミングやデータ分析のスキルが新分野でどう活きるかを説明することで、「学び直しの覚悟」だけでなく「接続点」があることを伝えられます。

  • 外部受験:面接で「なぜ移るのか」が必ず問われる
  • 内部進学:面接で「なぜ同じ研究室のままでよいのか」が問われうる
  • 社会人:「なぜ今なのか」「仕事と両立できるのか」が問われやすい
  • 分野転向:「なぜ専攻を変えるのか」「新分野でやっていけるのか」が問われやすい

いずれの状況であっても、共通するのは自分の背景を隠したり偽ったりするのではなく、その背景をどう研究への動機に接続するかを具体的に語ることです。社会人の出願資格や研究計画書の書き方、面接対策の詳細については社会人 大学院入試を徹底解説|出願資格・研究計画書・英語・面接対策で詳しく取り上げています。

提出前チェックリストと添削の活用法

志望理由書を書き終えたら、提出前に必ずセルフチェックを行いましょう。以下のような項目を確認することで、初歩的なミスや内容の矛盾を防げます。

チェック項目確認内容
様式・字数募集要項の指定フォーマット・文字数を守っているか
締切提出方法・提出期限を再確認したか
固有名詞の正確性教員名・研究科名・専攻名に誤りがないか
研究計画書との整合テーマ名・キーワードが一致しているか
結論先行の構成冒頭で志望理由の結論を示せているか
頻出NGフレーズ「充実した環境」等の抽象表現が残っていないか
誤字脱字・敬称「貴学」「貴研究科」の使い分けを含め誤りがないか
面接想定問答各段落から想定質問を作り、口頭で説明できるか

添削を依頼する相手としては、学部の指導教員、志望研究室の先輩、予備校や家庭教師など複数の選択肢があります。学部の指導教員は研究内容そのものを深く理解していますが、志望先の研究科事情には詳しくない場合があります。志望研究室の先輩は内部事情に詳しい一方、必ずしも第三者的な視点でのアドバイスが得られるとは限りません。予備校や家庭教師などの第三者は、書類の見せ方や表現面に慣れている点が強みです。それぞれに得意分野と限界があるため、可能であれば複数の立場の人に見てもらい、最終的な言葉は自分自身のものに戻すという意識を持ちましょう。

添削を依頼する際は、締切の2〜3週間前には依頼し、丸投げにせず「ここを重点的に見てほしい」といった依頼の仕方をすると、より的確なフィードバックが得られます。また、添削を何度も重ねるうちに、直しすぎて自分の言葉が失われてしまう「添削あるある」にも注意が必要です。最終的には自分自身が面接で説明できる文章であることを最優先にしましょう。出願の1〜2か月前からリサーチ→初稿作成→添削1周目→面接想定問答の作成→清書、という流れで逆算したスケジュールを組んでおくと、余裕を持って準備を進められます。

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よくある質問(FAQ)

院試の志望理由書は何文字くらい書けばいいですか?

研究科ごとに様式・字数の指定が異なります。指定がある場合は、その字数の9割以上を埋めるのが一つの目安とされています。指定フォーマット以外は受理されない場合もあるため、出願年度の募集要項を必ず確認してください。

志望理由書と研究計画書、両方出す場合は内容が重複してもいいですか?

テーマの一貫性は必須ですが、内容が丸かぶりするのは望ましくありません。志望理由書は動機・経緯(Why)、研究計画書は研究の内容と方法(What・How)というように役割を分担し、志望理由書の中では研究内容について要点のみに留めるのが基本的な考え方です。

志望理由書はChatGPTなどの生成AIで書いてもいいですか?

大学によって方針が正反対になることがあります。山梨大学のように生成AIによる文章のそのまま使用を不正行為とみなし、判明した場合は合格取消を明示している大学がある一方、東京農工大学のように利用の有無自体は問わないが責任はすべて出願者本人が負うとする大学もあります。志望校の募集要項・公式サイトで生成AIの取扱いを必ず確認してください。仮に利用が許容されている場合でも、丸写しに近い使い方は他の受験生と似た文章になりやすく、不利に働く可能性があります。

研究室訪問をしていなくても志望理由書は書けますか?

書くこと自体は可能ですが、教員の論文やresearchmap、研究室サイトなどのリサーチを通じて、固有の情報を補うことが重要になります。訪問済みであれば、そこで得た情報を1〜2文程度自然に盛り込むと、志望理由書の固有性が高まりやすくなります。

「今の大学に不満があるから外部の院を受ける」と正直に書いていいですか?

現所属への批判的な表現は、マイナスの印象を与えやすい傾向があります。「現環境で得たもの→それだけではさらに必要なもの→志望先にしかない資源」というように、前向きな3段構成に言い換えることをおすすめします。

志望理由書に書いた内容は面接でどう使われますか?

面接は提出済みの書類の内容に基づいて質問が進むのが一般的です。提出前に書類のコピーを取っておき、段落ごとに想定質問を作成して、口頭でも同じ内容を説明できるように準備しておきましょう。書けることと話せることを一致させておくことが大切です。

まとめ|院試の志望理由書は「役割分担の理解」と「個別化」で仕上げる

院試の志望理由書は、研究計画書とは異なる役割を持つ書類であり、「なぜこの研究科・この教員のもとで学びたいのか」を自分の経験に基づいて語ることが核心にあります。役割分担を理解した上で、4ブロックの構成テンプレートに沿って結論から先に述べ、理系・文系・社会人それぞれの状況に応じた例文を参考にしながら、自分固有の経験や具体的な論文名・研究室の情報で肉付けしていくことが、コピペで終わらない志望理由書への近道です。

  • 志望理由書は「Why(動機)」、研究計画書は「What・How(研究内容)」という役割分担を意識する
  • 様式・字数・生成AIの取扱いは研究科ごとに異なるため、出願年度の募集要項を必ず確認する
  • 4ブロック構成(結論→経緯→固有の理由→計画と展望)を骨格として使う
  • 例文はそのまま流用せず、固有名詞・一次体験・読んだ論文で個別化する
  • 面接は志望理由書ベースで進むため、各段落から想定質問を作り口頭で説明できるようにしておく
  • 提出前はチェックリストで様式・整合性・誤字を確認し、複数の立場の人に添削を依頼する

志望理由書は一度書いて終わりではなく、リサーチ・初稿・添削・面接想定問答づくりを繰り返しながら磨き上げていくものです。締切から逆算したスケジュールを立て、余裕を持って準備を進めてください。独学での対策に不安がある場合は、大学院入試対策コースのように、専門の指導を活用するのも一つの方法です。

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この記事を書いた人

千葉大学 法政経学部を首席で卒業後、都内国公立大学の法科大学院(ロースクール)を修了し、司法試験に合格。法律・政治・経済分野の専門知識をもとに、スプリング・オンライン家庭教師の大学編入・大学院入試分野の指導および記事監修を担当。

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