ご質問やお問い合わせはお気軽に
小論文の例文と解説|合格答案はどこが違うのか

小論文の例文は、書き写して覚えるためのものではなく、評価の差が生まれている場所を見つけるために読むものです。良い答案を10本読んでも、なぜそれが良いのかを説明できなければ、自分の答案は変わりません。反対に、同じ設問に対する2つの答案を並べて「どの一文が効いているか」を言葉にできれば、例文は1組でも役に立ちます。
小論文の例文とは、設問に対して書き手が何をどう判断し、どの順番で並べたかという過程が、文章の形で見えるようになったものです。完成した文章そのものよりも、その裏側にある判断のほうが再現可能な部分です。この記事では、人文・社会科学・理工・医療看護・教育の5つの学部系統について、同じ設問に対する「評価されにくい答案」と「評価されやすい答案」を全文で並べ、どの一文がどう違うのかを解説します。掲載している設問・資料・答案はすべてこの記事のために書き下ろした自作で、他サイトや大学の解答例を転載したものではありません。
まずは無料相談で、合格までの最短ルートを確認しませんか?
スプリング・オンライン家庭教師のプロ講師が、現在の学力・志望校・残り期間に合わせて、必要な対策を個別に整理します。
- 大学編入のプロ講師が最適な受験戦略を提案
- 今後の大学編入の勝ち筋が見える。
- 志望校が決まっていなくてもOK
\ 合格がグッと近づく/
(費用は一切かかりません)
評価の視点は、書き手の好みではなく公的な文書に紐づけています。文部科学省の令和9年度大学入学者選抜実施要項が小論文に求めている力と、大学が実際に公表している「出題の意図」の文言を根拠に、答案を読むときの4つの視点を先に決めてから読み比べに入ります。総合型選抜と学校推薦型選抜では、令和9年度から面接による評価が必ず行われることになっており、小論文で書いた内容は書類や面接とも地続きになります。
なお、この記事は「答案を読む」ことに徹します。序論・本論・結論の型、設問分析から見直しまでの手順、400字から1200字までの段落設計といった書き方の一般論は、姉妹記事の小論文の書き方|総合型選抜で評価される構成と手順にまとめてあるため、そちらを先に読んでから戻ってくると理解が早くなります。どちらから読んでも構いませんが、型を知ってから答案を読むほうが差分は見えやすいはずです。
小論文の例文は「読み比べ」で使う|写して覚えても書けるようにならない理由
例文を集めること自体は難しくありません。難しいのは、集めた例文を自分の答案の改善につなげることです。多くの受験生が例文を読んでも書けるようにならないのは、読み方が「鑑賞」で止まっているためです。ここでは、例文の使い方を先に決めておきます。
例文を読んでも書けるようにならない3つの理由
第一に、完成した答案には、書き手が捨てた選択肢が残っていません。良い答案は、複数あった書き出しのうち一つを選び、思いついた根拠のうち弱いものを落とした結果です。読者が目にするのは選ばれたほうだけなので、「なぜそれを選んだか」は答案の外側にあります。選択の理由が見えないまま形だけをまねると、設問が変わった瞬間に使えなくなります。
第二に、良い答案は読みやすいために、難しさが見えません。すらすら読める文章ほど、書くときの負荷は見えなくなります。「これくらいなら書ける」と感じたまま本番に臨み、原稿用紙を前にして手が止まるのは、読む負荷と書く負荷を取り違えているからです。
第三に、例文が1本だけだと基準が作れません。ある答案が良いと言われても、比較対象がなければ「どの程度良いのか」「どこまでが必須でどこからが上乗せか」が判断できません。基準は1本の答案ではなく、2本の差から生まれます。
例文は「1本」ではなく「2本セット」で読む
この記事が採用しているのは、同じ設問に対して、評価されにくい答案と評価されやすい答案を並べて読む方法です。設問が同じであれば、字数も条件も同じ土俵に乗るため、違いは書き手の判断だけに絞られます。読むときの手順は次のとおりです。
- 先に設問だけを読み、自分ならどう書き出すかを頭の中で決める
- 評価されにくい答案を読み、どこに違和感があるかを自分の言葉でメモする
- 解説を読み、自分が気づけた点と気づけなかった点を分ける
- 評価されやすい答案を読み、直っている箇所を一文ずつ確認する
- 最後に、自分の最初の書き出しがどちらに近かったかを判定する
この5手順のうち、効果が大きいのは3番目です。気づけなかった点が、あなたの答案に残っている癖です。気づけた点をいくら確認しても伸びしろにはなりません。読み比べのたびに気づけなかった項目を記録しておくと、自分専用のチェックリストが数回で完成します。
この記事の例文をすべて自作にしている理由
掲載している設問文・資料・答案は、すべてこの記事のために新しく書いたものです。実在の大学の入試問題や、他社が公開している解答例を転載してはいません。理由は二つあります。
一つは、他者が作成した問題文や答案には著作権があり、無断で転載することが権利の侵害になりうるためです。もう一つは、転載された模範解答は、出題した大学が「これが正解だ」と認めたものとは限らないためです。多くの大学は小論文の解答例を公表していません。公表されていない以上、外部の解答例はあくまで一つの書き方の例であり、正解の写しではありません。
この点は受験生の側にも関わります。インターネット上の例文をそのまま覚えて書くことは、自分の思考を提出していないことになりますし、同じ文章を書く受験生が複数現れる可能性もあります。例文は、自分の言葉に置き換えるための素材として使ってください。
答案を採点する4つの視点|大学が公表する「出題の意図」から逆算する
読み比べを始める前に、何を見るかを決めておきます。ここで使う視点は、書き手の主観ではなく、文部科学省の通知と、大学が自ら公表している文書から取り出したものです。
文部科学省の実施要項が小論文に求めていること
大学入学者選抜の共通ルールを定めた文書に、文部科学省の「令和9年度大学入学者選抜実施要項」があります。この要項では、大学教育を受けるために必要な力として学力の三要素が示されています。①基礎的・基本的な知識・技能、②知識・技能を活用して自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等、③主体性を持ち、多様な人々と協働しつつ学習する態度、の三つです。
そのうえで小論文については、「自らの考えを論理的・創造的に形成する思考・判断の能力」や「思考・判断した過程や結果を的確に、更には効果的に表現する能力」を含む能力・適性等を多角的に評価・判定するために活用することが望ましい、とされています。同じ箇所には、専ら教科・科目に係る知識を問うことにならないよう留意するという条件も置かれています(出典: 文部科学省 令和9年度大学入学者選抜実施要項)。
ここから読み取れるのは、小論文が測ろうとしているのが知識の量ではなく、考えを形にする過程と、それを相手に届く形にする力だということです。知識を書き並べた答案が伸びないのは、採点者の好みではなく、試験の設計がそもそもそこを見ていないためです。
大学が公表している「出題の意図」を読む
より具体的な手がかりは、大学が試験後に公表する「出題の意図」にあります。たとえば兵庫県立大学は、令和8年度の学校推薦型選抜について学部ごとに出題の意図を公表しています。理学部の小論文では、理科に関する課題6題から2題を選び各500字以内で書く形式をとり、「その課題の意図するところを指定された字数にて正確に正しい日本語にて表現、記述できるか」を問うと明記しています。物理の課題については、歴史的な知識だけでなく、工夫点や特徴について考察し論理的に記述できるかを問う、と説明されています(出典: 兵庫県立大学 令和8年度 理学部 小論文 出題の意図)。
同じ大学の環境人間学部では、英文の課題文を使った問題について、問1で「本文(英文)の読解力、要約文章の正確性ならびに表現力を問うた」、問2で「人間や地域から地球規模に至る課題と解決策について多面的な視点から思考し、自分の考えをまとめ、日本語として適切に表現できるかどうかを問うた」と述べられています(出典: 兵庫県立大学 令和8年度 環境人間学部 小論文 出題の意図)。工学部の女子学生特別選抜では、「論理的に説明できるか、正しい日本語で記述できるか」をみたうえで、学びたいこと、社会課題に関する基礎的な知識、学びを通じた社会貢献への意欲の3点を挙げています(出典: 兵庫県立大学 令和8年度 工学部 小論文 出題の意図)。
募集要項の段階で評価する力を明記している大学もあります。福岡教育大学は令和8年度学校推薦型選抜の学生募集要項で、個別学力試験等で課す小論文について「本学が期待する学習の到達度を基礎とした思考力・判断力・表現力、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度等も評価します」と記載しています(出典: 福岡教育大学 令和8年度学校推薦型選抜学生募集要項)。学力の三要素の言葉がそのまま使われている点に注目してください。
答案を読むときの4つの視点
これらの文言に共通しているのは、設問の要求を正確につかむこと、考えを論理的に形にすること、その過程を適切な日本語で書くこと、という3層です。実際の答案を読むときには、これを4つの視点に分けたほうが使いやすくなります。
| 視点 | 見るところ | 根拠となる文言 |
|---|---|---|
| 設問要求との一致 | 問われた対象・条件・字数に答えているか。要約指示があるなら要約があるか | 「課題の意図するところを指定された字数にて」正確に記述できるか(兵庫県立大学 理学部) |
| 主張の明確さ | 自分の立場が一文で取り出せるか。最初と最後で立場が変わっていないか | 「自らの考えを論理的・創造的に形成する思考・判断の能力」(実施要項 第6の3) |
| 根拠の具体性 | 根拠が主張の言い換えになっていないか。確認できる範囲の事実か | 「多面的な視点から思考し、自分の考えをまとめ」(兵庫県立大学 環境人間学部) |
| 表現の正確さ | 一文の主語と述語が対応しているか。話し言葉が混ざっていないか | 「正しい日本語で記述できるか」(兵庫県立大学 工学部) |
この4視点は、以降の読み比べで繰り返し使います。答案を読むときは上から順に見て、上でつまずいたら下は見ないという運用にしてください。設問に答えていない答案の表現を整えても、評価は動きません。
小論文は全員に課される試験ではない
視点を決めたところで、前提を一つ確認します。総合型選抜や学校推薦型選抜で小論文が課されるかどうかは、大学・学部によって異なります。文部科学省が令和8年2月に公表した調査(21,692の選抜区分が対象)では、これらの選抜における評価方法の利用率は面接が86.5%、志望理由書等が77.7%、評定平均が63.8%、探究活動に関する資料が38.1%で、小論文は34.3%でした(出典: 文部科学省 令和7年度大学入学者選抜実施要項等に関する調査)。
小論文を課す区分は全体の3分の1程度である一方、面接はほとんどの区分で行われます。令和9年度からは、総合型選抜・学校推薦型選抜ともに志望する学問分野への意欲や適性に係る面接による評価を必ず行うことになりました。つまり、小論文で書いた内容は面接で掘り下げられる前提で準備するのが自然です。自分の志望校で小論文が課されるかどうかは、必ず最新の募集要項で確認してください。
【人文系】課題文型の例文|同じ設問に対する2つの答案を読み比べる
最初は、文学部・人文学部などで多い課題文型です。課題文を読み、要約と意見の両方を求められる形式を想定します。以下の課題文の要旨と設問は、この記事のための自作です。
設問と条件
課題文の要旨(自作):近年、読書は「何冊読んだか」「何分で読めたか」という量と速度で語られることが増えた。しかし読書の価値は、読み手が自分の考えを組み替えていく時間のなかにあり、その時間は数値に置き換えにくい。効率を尺度に据えると、置き換えにくい価値が評価の対象から静かに外れていく。
設問(自作):筆者の主張を150字以内で要約したうえで、読書を効率で測ることの是非について、あなたの考えを600字以内で述べよ。
この設問には指示が二つあります。要約と、是非についての意見です。指示が二つある設問は、片方を落とすだけで大きく減点されます。読み比べの前に、自分ならどちらから書くかを決めておいてください。
評価されにくい答案(自作)
私は読書が好きだ。小学生のころからたくさんの本を読んできたので、筆者の言っていることはとてもよくわかる。最近はスマートフォンばかり見ている人が多く、若者の読書離れが進んでいると言われている。読書には想像力を育てる効果があり、心を豊かにしてくれる。それを効率で測るのは寂しいことだと思う。たしかに忙しい現代人にとって時間は貴重であるが、それでも本を読む時間は大切にすべきだ。私はこれからも読書を続けていきたいと思う。
この答案を、先ほどの4視点で一文ずつ見ていきます。1文目の「私は読書が好きだ」は、設問が聞いていない情報です。好き嫌いは是非の判断材料になりません。2文目の「よくわかる」は共感の表明であり、150字の要約という第一の指示が実行されていません。この時点で、設問要求との一致という最上位の視点で引っかかります。
3文目の「若者の読書離れ」は、課題文に書かれていない話題です。しかも出典が示されないまま一般論として持ち込まれています。4文目の「想像力を育てる」は読書一般の効能であり、「効率で測ることの是非」という論点からずれています。5文目の「寂しい」は感情の表明で、根拠として機能しません。最終文の「続けていきたい」は決意表明であり、主張の確認になっていません。
結果として、この答案には是非のどちらを選んだのかを示す一文が存在しません。「寂しい」から否定寄りだと推測はできますが、推測させる時点で主張の明確さを欠いています。
評価されやすい答案(自作)
要約(約130字):筆者は、読書の価値は読み手の考えが組み替わる時間にあると述べる。この時間は数量化しにくいため、冊数や速度という効率の尺度を用いると、価値の中心が評価の外に置かれてしまう。効率化そのものではなく、測れないものを測れないままにしておく姿勢が必要だと主張している。
本論(約590字):私は、読書を効率で測ることは部分的には有効だが、評価の中心に据えるべきではないと考える。理由は二つある。
第一に、効率の尺度は読書を始める段階では役に立つ。読む習慣がない人にとって、月に何冊という目標は行動の基準になる。私の学年でも、朝の読書時間が設けられてから本を開く生徒が増えた。行動を促す道具としての効率まで否定する必要はない。
第二に、読み終えたあとの評価に同じ尺度を持ち込むと、読み方そのものが変わる。冊数を増やすことが目的になれば、途中で立ち止まって考える時間は無駄と見なされる。筆者が価値の中心に置いたのはまさにその立ち止まりであり、効率の尺度とは両立しにくい。
たしかに、考えた深さも要約や感想として言語化すれば測れる、という反論がある。しかし言語化できた部分は理解の一部にすぎず、言葉にならなかった引っかかりが次の読書を動かすこともある。測れる部分だけを評価すれば、測れない部分は放置される。
以上より、効率は読書を始めるための道具として使い、読んだ内容の評価には別の尺度を置くべきだと考える。たとえば読了後に自分の考えがどう変わったかを短く記述させるなど、変化を言葉で残す方法が考えられる。
2つの答案は何が違ったのか
差分を4視点で整理します。文章のうまさではなく、判断の有無が差になっていることを確認してください。
| 視点 | 評価されにくい答案 | 評価されやすい答案 |
|---|---|---|
| 設問要求との一致 | 要約がない。是非を明示していない | 要約を独立させ、本論冒頭で是非を明示 |
| 主張の明確さ | 「寂しい」から推測させる | 「部分的には有効だが中心に据えるべきではない」と限定つきで宣言 |
| 根拠の具体性 | 読書一般の効能と、出典のない一般論 | 自分の学年という確認できる範囲の観察と、尺度が読み方に及ぼす影響 |
| 表現の正確さ | 「思う」で終わる文が続く | 主張は言い切り、留保は「たしかに〜しかし」で処理 |
特に効いているのは、主張に「部分的には有効だが」という限定をつけた点です。全否定でも全肯定でもない立場を取ると、反論への備えが自然に本文へ組み込まれます。是非を問う設問で満点に近い答案を目指すなら、どこまでは認め、どこからは認めないかの線を引くのが最短です。
【社会科学系】テーマ型の例文|賛否を述べる設問で差がつく場所
経済学部・経営学部・法学部・社会学部などでは、社会の具体的な問題について賛否や方策を問うテーマ型が多くなります。課題文がないぶん、自分で論点を切り出す必要があります。
設問と条件
設問(自作):地方都市の中心部で空き店舗が増えている。この状況に対し、行政が公費を用いて介入すべきかどうか、あなたの考えを800字以内で述べよ。
この設問で問われているのは「活性化の方法」ではなく、公費を用いた介入の是非です。誰が、何の財源で、どこまで関与するかという条件が設問文に埋め込まれています。設問の中の限定語を拾えるかどうかが最初の分岐点になります。
評価されにくい答案(自作)
私の住む町でも商店街のシャッターが閉まっている店が増え、とても寂しく感じる。かつては人でにぎわっていたと祖父から聞いたことがある。地域の活性化は重要な課題であり、行政も企業も住民も協力して取り組むべきである。空き店舗を活用したイベントを開催したり、若者が起業しやすい環境を整えたりすることが求められる。行政の支援があれば商店街は再びにぎわうはずだ。誰もが住みやすい町をつくることが大切である。
一文ずつ確認します。1文目の「寂しく感じる」は感情の記述で、介入の是非の根拠にはなりません。2文目の祖父からの伝聞は、現在の判断材料としては弱い情報です。3文目の「行政も企業も住民も協力して」は、主体を広げることで責任の所在をぼかしています。設問は行政に限定して聞いているため、この一文は答えになっていません。
4文目は具体策のように見えますが、公費を使うかどうかには触れていません。5文目の「にぎわうはずだ」は根拠のない見通しです。最終文の「誰もが住みやすい町」は、反論の余地がない標語で、反論の余地がない標語は、書いても情報量が増えません。
この答案の本質的な弱点は、是か非かを選んでいないことです。介入に前向きな雰囲気はありますが、どこまで介入してよいかの線が引かれていないため、賛成の理由も反論への備えも書きようがありません。
評価されやすい答案(自作)
私は、行政が公費を用いて介入すべきだと考える。ただし介入の対象は、個々の店舗の経営支援ではなく、空き店舗を貸し借りしやすくする仕組みの整備に限るべきである。
第一の理由は、空き店舗の増加が、当事者の努力だけでは解けない問題を含むためである。中心部の店舗は所有者と利用者が分かれていることが多く、所有者が高齢で貸し出しに消極的な場合、借りたい人がいても取引は成立しない。当事者間の交渉に委ねるかぎり、空き店舗は空いたまま残る。所有者情報の整理や契約書式の標準化といった調整は、中立的な立場にある行政が担うほうが早い。
第二の理由は、空き店舗が増えること自体が周囲に不利益を及ぼすためである。人通りが減れば残った店舗の売上も落ち、次の閉店を招く。ある店の廃業が別の店の条件を悪化させる関係にあるなら、個別に合理的な判断の合計が、地域全体にとって望ましくない結果になりうる。この種の問題には、当事者以外が関与する余地がある。
たしかに、公費で特定の商店を支えることは、税を負担する住民のあいだに不公平を生むという指摘がある。この指摘は、支援の対象が個々の店舗の売上補填である場合には当たる。しかし、貸し借りの仕組みを整えることは、特定の誰かの利益ではなく、これから店を開こうとする人全体に開かれた条件の整備である。介入の範囲を仕組みに限れば、不公平の問題は小さくできる。
以上より、行政は空き店舗の貸借を成立させる仕組みの整備に限って介入すべきだと考える。残る課題は、どこまでを仕組みと呼ぶかの線引きであり、支援の内容ごとに住民へ説明できる基準を用意することが必要になる。
2つの答案は何が違ったのか
この読み比べで最も重要なのは、主張に「ただし」がついているかどうかです。介入すべきかを問われて「すべきだ」とだけ答えると、公費の使い道すべてを肯定したことになり、不公平という反論に耐えられません。範囲を限定した瞬間に、反論への回答も同時に用意されます。
| 視点 | 評価されにくい答案 | 評価されやすい答案 |
|---|---|---|
| 設問要求との一致 | 行政に限定せず「みんなで協力」に広げた | 行政・公費という条件を保ったまま範囲を限定 |
| 主張の明確さ | 是非を選んでいない | 冒頭2文で立場と限定を提示 |
| 根拠の具体性 | 感情と伝聞、根拠のない見通し | 所有者と利用者の分離、廃業が連鎖する関係という構造の説明 |
| 表現の正確さ | 標語で締めている | 結びに残された課題を一文で提示 |
社会科学系では、身近な体験を書くこと自体は問題になりません。問題になるのは、体験が感想の材料のまま置かれている場合です。詳しく言えば、体験が感想の材料のまま置かれている場合です。同じ「私の町では」でも、シャッターの様子を寂しいと述べるのか、所有者が貸し出しに消極的だという事実を挙げるのかで、機能はまったく変わります。
まずは無料相談で、合格までの最短ルートを確認しませんか?
スプリング・オンライン家庭教師のプロ講師が、現在の学力・志望校・残り期間に合わせて、必要な対策を個別に整理します。
- 大学編入のプロ講師が最適な受験戦略を提案
- 今後の大学編入の勝ち筋が見える。
- 志望校が決まっていなくてもOK
\ 合格がグッと近づく/
(費用は一切かかりません)
【理工系】資料・グラフ型の例文|読み取りと解釈を混ぜない書き方
理学部・工学部などでは、資料やグラフを読み取らせたうえで考えを述べさせる形式がよく使われます。兵庫県立大学の理学部が出題の意図で述べていたように、ここで問われるのは知識の量ではなく、考察を論理的に記述できるかです。
設問と資料
次の表は、この記事のために作成した架空の資料です。実在の自治体の数値ではありません。
| 年度 | 1人1日あたり家庭ごみ排出量 | 資源ごみの分別品目数 | 資源化率 |
|---|---|---|---|
| 2018年度 | 620g | 5品目 | 18% |
| 2020年度 | 585g | 7品目 | 22% |
| 2022年度 | 560g | 9品目 | 25% |
| 2024年度 | 552g | 12品目 | 26% |
設問(自作):上の表から読み取れることを述べたうえで、家庭ごみの排出量をさらに減らすために有効と考える取り組みを、その根拠とともに600字以内で述べよ。
評価されにくい答案(自作)
表を見ると、家庭ごみの排出量は年々減っている。これは資源ごみの分別品目数が増えたからである。分別を増やせば排出量が減ることがわかる。したがって、分別品目数をさらに増やせば排出量はもっと減るはずだ。ごみを減らすことは地球環境のために重要であり、一人ひとりが意識を高める必要がある。私も家庭でごみの分別を心がけたい。
1文目は方向を述べただけで、数値が一つも引用されていません。資料型の設問で数値を書かないのは、資料を読んだ証拠を出していないのと同じです。2文目は、同時に起きた二つの変化のうち片方を原因と断定しています。表からわかるのは同時に動いたことだけで、因果関係は示されていません。
3文目の「わかる」は、断定の重ね塗りです。4文目の「もっと減るはずだ」は、直近2年の減少が8gにとどまっている事実を見落としています。表の中で最も注目すべき変化を読み落としたまま外挿しているため、結論が資料と食い違います。5文目以降は一般論と決意表明で、設問が求めた「取り組み」と「根拠」の両方が欠けています。
評価されやすい答案(自作)
表から読み取れることは三点ある。第一に、1人1日あたりの排出量は2018年度の620gから2024年度の552gへ、6年間で68g減少している。第二に、減少幅は前半に偏っている。2018年度から2022年度までの4年間で60g減ったのに対し、2022年度から2024年度までの2年間の減少は8gにとどまる。第三に、分別品目数は5から12へ増え続けている一方、資源化率は2022年度の25%から2024年度の26%へと、直近ではほとんど動いていない。
これらから、品目数を増やす手法は効果が頭打ちに近づいていると解釈できる。ただし、品目数の増加が排出量の減少を引き起こしたと断定することはできない。人口構成や事業者の回収体制など、表に現れていない要因も同じ期間に変化しうるためである。
そのうえで有効と考えるのは、分別の種類を増やす方向ではなく、分別されずに残っている量を把握する取り組みである。具体的には、収集された家庭ごみから一定量を抽出して組成を調べ、資源化できるのに混入している品目を特定する。特定した品目に絞って、表示の変更や回収日の見直しを行う。
根拠は、資源化率が26%にとどまる一方で品目数が12まで増えている点にある。選択肢が増えても資源化が進んでいないのであれば、制約は選択肢の数ではなく、住民が分別を判断する場面の側にあると考えられる。混入の実態を測らないまま品目を追加しても、判断の難しさは残る。
2つの答案は何が違ったのか
資料型で差がつくのは、ほぼ次の3点に集約されます。数値を引くこと、読み取りと解釈を分けること、因果を断定しないことです。
| 作業 | 評価されにくい答案 | 評価されやすい答案 |
|---|---|---|
| 読み取り | 「年々減っている」と方向だけ | 620g→552g、68g減、直近2年は8gと数値で提示 |
| 解釈 | 読み取りと混ざり、因果を断定 | 段落を分け、「解釈できる」「断定できない」を明示 |
| 提案 | 「意識を高める」で終わる | 組成調査で混入品目を特定し、表示と回収日を変える |
| 根拠 | 提示なし | 品目数と資源化率の乖離を根拠として明示 |
解釈の段落で「断定することはできない」と書くのは、逃げではありません。資料に書かれていないことを書かない態度そのものが、思考の質として読まれます。反対に、限られた資料から強い結論を出す答案は、資料の限界を認識していないと判断される可能性があります。
【医療・看護系】の例文|共感で終わる答案と、判断まで書く答案
看護学部・医療系学部の小論文では、現場で起こりうる場面を示し、どう考えるかを問う設問が出ます。この系統でいちばん多い失敗は、志望理由書の内容をそのまま書いてしまうことです。
設問と条件
設問(自作):医療の現場では、患者本人が望む療養の場と、家族が望む療養の場が食い違うことがある。このような場面で、医療者はどのような姿勢で関わるべきか。あなたの考えを600字以内で述べよ。
問われているのは「どのような姿勢で関わるべきか」であり、なりたい医療者像ではありません。また、正解の医学的判断を答えさせる設問でもないため、専門知識の不足を心配する必要はありません。対立の構造をどう整理するかが評価の対象になります。
評価されにくい答案(自作)
私は患者さんに寄り添える看護師になりたい。患者さんの気持ちを第一に考え、家族の方の不安にも耳を傾けることが大切だと思う。私は高校時代に祖母の入院に付き添った経験があり、そのとき看護師さんの優しさに救われた。だから私も、患者さんと家族の両方に信頼される看護師になりたいと考えている。そのためには、コミュニケーション能力を磨き、日々努力していきたい。
1文目から、答案ではなく志望理由になっています。設問は姿勢を問うており、なりたい像を聞いてはいません。2文目は一見もっともらしいのですが、「気持ちを第一に」と「不安にも耳を傾ける」が並置されているだけで、食い違う場面での優先順位が示されていません。両方大切だという答えは、対立を前提とした設問への回答になりません。
3文目の経験は、根拠ではなく動機の説明として置かれています。同じ経験でも、そこから何が観察できたかを書けば根拠になりますが、「救われた」で終わると感想のままです。最終文の「努力していきたい」は決意表明であり、主張の確認にはなりません。
評価されやすい答案(自作)
私は、医療者は結論を代わりに決めるのではなく、双方が判断に必要な情報を共有できる場をつくる姿勢で関わるべきだと考える。
第一の理由は、こうした食い違いの多くが、価値観そのものの対立ではなく前提の違いから生じるためである。本人が自宅を望む理由が「家族に負担をかけたくない」であり、家族が入院を望む理由が「自宅では急変時に対応できない」である場合、二人は別々のことを心配している。前提が共有されないまま話し合えば、どちらが折れるかという形になりやすい。
第二の理由は、療養の場の選択が、選んだあとの生活が続いていく決定だからである。医療者が説得して一方の希望を通した場合でも、その後の生活を支えるのは本人と家族である。納得のないまま決まった選択は続きにくく、途中で変更が必要になることもある。決定の主体を当事者に残すことには、実務上の意味がある。
たしかに、本人の意思を尊重する原則からすれば、本人の希望を優先すべきだという意見がある。原則としては同意する。しかし、本人が家族の状況を踏まえて希望を変えることもあり、意思は固定されたものではない。原則を守るためにも、意思が形づくられる過程に必要な情報が届いている必要がある。
以上より、医療者に求められるのは、それぞれが何を心配しているのかを言葉にできるよう働きかけ、選択肢ごとに何が起こりうるかを具体的に示す関わりだと考える。残る課題は、話し合いに使える時間が限られる現場でこの関わりをどう成り立たせるかであり、職種間の分担が手がかりになる。
2つの答案は何が違ったのか
後者の答案には、医学的な専門知識はほとんど使われていません。使われているのは、対立を前提と価値観に分けて考える整理の仕方だけです。知識がなくても書けるが、整理ができないと書けないという設計になっています。
| 視点 | 評価されにくい答案 | 評価されやすい答案 |
|---|---|---|
| 設問要求との一致 | なりたい像を書いた(志望理由書の内容) | 関わり方の姿勢を冒頭で定義 |
| 主張の明確さ | 両方大切だと並置して終わる | 決めるのではなく場をつくる、と役割を限定 |
| 根拠の具体性 | 経験を感想として提示 | 前提の違いを具体例で示し、決定後の生活まで射程を延ばす |
| 表現の正確さ | 決意表明で締める | 主張の確認と残された課題で締める |
医療・看護系を志望する人は、志望理由書と小論文を同じ材料で書いてしまいがちです。両者は評価の対象が違います。志望理由書の書き方については総合型選抜に受かる人の特徴|評価される5つの共通点で扱っている評価方法の全体像とあわせて確認すると、役割の違いが整理しやすくなります。
【教育系】の例文|体験談で終わる答案と、体験を根拠に変える答案
教育学部の小論文では、学校現場に関する話題が扱われます。受験生自身が学校生活を送っているため体験は豊富ですが、その豊富さが逆に弱点になることがあります。
設問と条件
設問(自作):学校で一人一台の情報端末が使われるようになった。端末の活用が児童生徒の学びを深めるために、教員にはどのような工夫が求められるか。あなたの考えを800字以内で述べよ。
この設問の要求は「教員に求められる工夫」です。端末の良い点と悪い点を並べる問題ではありません。先に触れたとおり、福岡教育大学は小論文で思考力・判断力・表現力に加えて主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度等も評価すると明記しています。教育系では、他者と一緒に何かを成立させる視点があるかどうかも読まれると考えてよいでしょう。
評価されにくい答案(自作)
私の高校でも一人一台のタブレットが配られ、授業で使っている。調べ学習が便利になり、資料をすぐに見つけられるようになった。先生が動画を見せてくれる授業は分かりやすく、楽しかった。しかし、授業に関係のないことを見ている生徒もいて、集中できないこともある。だから先生は、生徒が端末を正しく使えるようにルールを決めることが大切だと思う。私は将来、ICTを活用できる教員になりたい。
1文目から4文目までは体験の羅列です。便利、分かりやすい、楽しいはすべて印象の記述で、学びが深まったかどうかの判定にはなっていません。設問は「学びを深めるために」と条件をつけているため、深まりの有無を何で判断するかを示さないかぎり、答えにたどり着けません。
5文目でようやく工夫が一つ出てきますが、「正しく使える」の中身が定義されていません。ルールを決めることが工夫だとしても、それは逸脱を防ぐ工夫であって、学びを深める工夫ではありません。最終文はここでも志望の表明で、設問への回答を弱めています。
評価されやすい答案(自作)
私は、端末の活用が学びを深めるためには、教員が「端末でしかできない学習場面」を授業のなかに位置づける工夫が求められると考える。
第一の理由は、端末が最も使われやすいのは、紙でもできる作業を置き換える場面だからである。板書を写す、資料を配る、答えを提出する。これらは端末で速くなるが、速くなった分だけ考える時間が増えるとはかぎらない。私の高校でも、配付資料が紙から画面に変わった授業と、変わらなかった授業とで、考える時間の長さに違いは感じられなかった。手段の置き換えだけでは、学びの深さは動かない。
第二の理由は、端末には紙では成立しにくい学習場面があるためである。他の生徒の解答を同時に一覧できること、書き直しの過程が記録として残ること、教室の外にいる人と意見を交換できること。これらは紙の授業では成立しにくい。たとえば、同じ問いに対する学級全員の考えを並べて表示すれば、自分の考えがどの位置にあるかを各自が確かめられる。これは端末があるから生まれた場面である。
たしかに、機器の操作に不慣れな教員にとって、新しい学習場面を設計する負担は小さくないという指摘がある。この負担は現実のものである。しかし、負担を減らす方向は、活用を控えることではなく、成立した場面を教員のあいだで共有することにある。ある授業で機能した並べ方や問いの立て方は、他の教科でも使える形に整理できる。
以上より、教員に求められる工夫は、端末を使う頻度を上げることではなく、端末があることで初めて成立する学習場面を選び、そこに時間を配分することだと考える。今後の課題は、その場面をどう記録し共有するかであり、校内で授業を見せ合う機会が手がかりになる。
体験を根拠に変える一手
二つの答案は、どちらも自分の高校の話を使っています。違うのは使い方です。前者は「便利だった」という印象を述べ、後者は「紙から画面に変わっても考える時間は変わらなかった」という観察を述べています。印象は反論できませんが、観察は検討の対象になります。
体験を根拠に変えるときの手順は単純です。まず、その体験のなかで自分が実際に見たこと・数えられることだけを取り出します。次に、そこから何が言えて何が言えないかを分けます。最後に、言える範囲だけを主張の支えとして使います。言える範囲だけを主張の支えとして使うのがこつです。この3手順を通すと、体験談は確認できる範囲の事実に変わります。
例文を自分の答案に変える3回の書き直し|一文単位で直すポイント
読み比べで基準ができたら、次は自分の答案に適用します。ここで大切なのは、一度にすべてを直そうとしないことです。設問との一致、根拠の具体性、表現の三つを同時に見ると、どれも中途半端になります。
1回目|設問との一致だけを見る
最初の書き直しでは、内容の良し悪しをいっさい判断しません。見るのは次の点だけです。設問文の動詞に線を引き、それに対応する記述が答案にあるか。指示が複数あるなら、そのすべてが実行されているか。字数・形式の条件を守っているか。
1回目の確認で落ちる答案は少なくありません。人文系の例で見たように、要約の指示があるのに要約がない答案は、内容の質を問う前の段階で評価が下がります。設問の動詞と、結論の一文を並べて読むのが確実な確認方法です。
2回目|根拠の具体性を上げる
2回目は根拠だけを見ます。各段落の根拠を取り出し、それが主張の言い換えになっていないかを確認します。「重要だからである」は言い換えであって根拠ではありません。同様に「大切だと考えるからだ」も根拠にはなりません。
次に、根拠の主語の大きさを見ます。「日本人は」「若者は」といった大きな主語は、例外を挙げられるだけで崩れます。自分が確認できる範囲まで主語を縮めると、反論されにくい記述に変わります。試験会場で出典を確認できない統計を持ち出すより安全です。
3回目|表現を整える
3回目でようやく文章の面を見ます。一文が長すぎないか、主語と述語が対応しているか、話し言葉が混ざっていないか、同じ接続詞が続いていないか。ここは機械的な作業なので、時間がないときは音読で代替できます。読みながら息が続かない文が、長すぎる文です。
書き直しの前後を一文で比べる
この記事で扱った答案から、書き直しの効果が分かりやすい箇所を抜き出して並べます。いずれも自作の文です。
| 直す対象 | 書き直し前 | 書き直し後 | 何が変わったか |
|---|---|---|---|
| 主張 | 地域の活性化は重要な課題である。 | 行政は空き店舗の貸借の仕組みの整備に限って介入すべきである。 | 誰が何をするかが決まった |
| 根拠 | 若者は本を読まなくなった。 | 私の学年では、朝の読書時間以外に本を開く生徒をほとんど見かけない。 | 確認できる範囲に縮まった |
| 読み取り | 排出量は年々減っている。 | 620gから552gへ6年間で68g減り、直近2年の減少は8gにとどまる。 | 数値と変化の速さが入った |
| 反論の想定 | いろいろな意見がある。 | 公費で特定の店を支えるのは不公平だという指摘がある。 | 反論の内容が特定された |
| 結び | これから努力していきたい。 | 支援の内容ごとに住民へ説明できる基準が必要になる。 | 決意から課題の提示に変わった |
表の右列を見ると、共通しているのは抽象度を一段下げていることだと分かります。小論文の改善は、新しいことを思いつく作業ではなく、すでに書いたことを一段具体にする作業として進めるほうが再現性があります。
自分の答案を自己採点するときの手順
書き直しを一人で回すなら、次の順番でチェックしてください。上でつまずいた項目があれば、下は見ずにそこを直します。
- 設問の動詞と結論の一文を並べ、対応しているかを確認する
- 指示が複数ある設問なら、実行されていない指示がないかを数える
- 各段落の根拠を1文に要約し、主張の言い換えになっていないかを見る
- 根拠の主語が、自分の確認できる範囲に収まっているかを見る
- 反論の想定が、内容を特定した形で書かれているかを見る
- 結びが主張の確認になっているか、決意表明で終わっていないかを見る
- 音読して、息が続かない文と話し言葉を拾う
ただし、自己採点には限界があります。自分の答案は、書いたときの意図が頭に残ったまま読んでしまうためです。書いた本人には通じている接続が、初めて読む人には飛んで見えることは珍しくありません。第三者に読んでもらう機会を練習の後半で作っておくと安心です。書き方の型や練習量の目安は小論文の書き方の記事で詳しく扱っています。
よくある質問(FAQ)
小論文の例文はそのまま覚えて本番で使ってよいですか
おすすめしません。設問は大学ごと・年度ごとに異なり、覚えた文章がそのまま当てはまる場面はほとんどないためです。加えて、他者が作成した文章をそのまま書き写す行為は、自分の思考を提出していないことになります。覚えるなら文章そのものではなく、主張に限定をつける、反論の内容を特定するといった判断の手順にしてください。
例文は何本くらい読めばよいですか
本数よりも読み方が効きます。良い答案だけを20本読むより、同じ設問の2本セットを5組読んで差分を言語化するほうが、自分の答案は動きます。目安としては、志望する学部系統で2〜3組、それ以外の系統で2組ほど読み比べれば、評価の視点は共通していると分かるはずです。
インターネット上の模範解答をそのまま書き写すとどうなりますか
入試での取り扱いは大学の判断によるため一般化できませんが、リスクは二つあります。一つは、同じ文章を書く受験生が複数現れる可能性です。もう一つは、面接での深掘りに答えられなくなることです。令和9年度からは総合型選抜・学校推薦型選抜で面接による評価が必ず行われるため、書いた内容の理由を自分の言葉で説明できる状態にしておく必要があります。
自分の志望学部と違う系統の例文を読む意味はありますか
あります。この記事の5つの読み比べで使った視点は、いずれも設問要求との一致・主張の明確さ・根拠の具体性・表現の正確さの4つで共通しています。系統をまたいで読むと、評価の視点がテーマに依存しないことが体感でき、初見のテーマへの不安が小さくなります。
例文と似たテーマが本番で出たらどう書けばよいですか
テーマが似ていても、設問の動詞と条件は違うのが普通です。「是非を述べよ」と「方策を述べよ」では、書くべき中身が変わります。準備してきた内容を思い出す前に、まず設問文の限定語に印をつけてください。準備した答えを設問に合わせる作業が最初の関門になります。
自分の答案を自分で評価することはできますか
ある程度まではできます。設問との一致、指示の実行漏れ、主語の大きさ、結びの形は、チェックリストで機械的に確認できる項目です。一方、根拠が本当に主張を支えているか、読み手が引っかからずに読めるかは、書いた本人には見えにくい部分です。前半は自己採点、後半は第三者という分担が現実的です。
例文を読んでも書き出せないときはどうすればよいですか
書き出しで止まるのは、立場が決まっていないことが原因である場合がほとんどです。文章の書き出しを考える前に、設問に対する答えを一文で書いてみてください。「私は◯◯すべきだと考える。ただし△△に限る」という形が作れれば、その前に問いの確認を一文置くだけで序論が完成します。書き出しの型については小論文の書き方の記事にまとめています。
まとめ|例文は「良い答案」ではなく「差分」を読む
この記事の要点を整理します。
- 小論文の例文は、書き写すためではなく、評価の差が生まれる場所を特定するために読む。1本ではなく、同じ設問に対する2本の差分を読む
- 答案を読む視点は、設問要求との一致・主張の明確さ・根拠の具体性・表現の正確さの4つ。上からたどり、上でつまずいたら下は見ない
- この4視点は、文部科学省の令和9年度大学入学者選抜実施要項が示す学力の三要素と、兵庫県立大学や福岡教育大学が公表している出題の意図・評価する力から取り出したもの
- 学部系統が変わっても評価の視点は共通する。人文系は要約と意見の分離、社会科学系は主張への限定、理工系は読み取りと解釈の分離、医療看護系は対立の整理、教育系は体験の根拠化が要になる
- 書き直しは3回に分ける。1回目は設問との一致だけ、2回目は根拠の具体性だけ、3回目は表現だけを見る
- 改善の方向は、いずれも抽象度を一段下げること。主張には限定を、根拠には確認できる範囲を、反論には具体的な内容を与える
- 総合型選抜・学校推薦型選抜で小論文を課す区分は全体の34.3%で、面接の86.5%より少ない。令和9年度からは面接による評価が必ず行われるため、書いた内容は口頭で説明できる状態にしておく
小論文の例文を「読める」ようになると、自分の答案を読み返す目も変わります。うまく書けたかどうかという曖昧な感覚ではなく、設問の動詞に答えているか、根拠が確認できる範囲に収まっているかという具体的な問いで、自分の文章を点検できるようになるためです。この記事の読み比べを、自分の答案に対して繰り返してみてください。
なお、字数の指定や試験時間、評価の配点は大学・学部によって異なります。志望校の条件は、必ず最新の募集要項で確認してください。制度の日程についても、令和9年度入試では総合型選抜の出願受付が令和8年9月1日以降、合格発表が令和8年11月1日以降と定められており、逆算できる時間には限りがあります。
読み比べと書き直しをひととおり回しても、自分の答案に残る癖は自分では見えにくいものです。独学での対策に不安がある場合は、第三者に読んでもらえる環境を用意するのも一つの方法です。総合型選抜・学校推薦型選抜に特化した対策については総合型選抜専門オンライン塾アドミのページや、無料相談で相談内容を確認できます。大学編入を検討している方は、対象が異なるため大学編入対策完全ガイド|英語・小論文・面接の勉強法や大学編入コースをご覧ください。
まずは無料相談で、合格までの最短ルートを確認しませんか?
スプリング・オンライン家庭教師のプロ講師が、現在の学力・志望校・残り期間に合わせて、必要な対策を個別に整理します。
- 大学編入のプロ講師が最適な受験戦略を提案
- 今後の大学編入の勝ち筋が見える。
- 志望校が決まっていなくてもOK
\ 合格がグッと近づく/
(費用は一切かかりません)



