【大学院入試 研究計画書の書き方】ー問題意識、研究テーマ、研究上の問いー
大学院進学2023.04.01
作成者:佐和 賢太郎 先生(早稲田大学政治学研究科博士課程修了・元河合塾KALS講師)
監修者:山下 徹 先生(熊本大学名誉教授)
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目次
はじめに
今回の記事では、研究計画書を構成する要素である問題意識と研究テーマ、研究目的、研究上の問いについて解説します。
研究計画書のレイアウトについては、特に指定がない場合は、以下のものを参考にすることをお勧めします。
研究計画書の基本事項についてはこちらの記事を参照にしてください。
問題意識
社会科学(一部、人文科学)の分野の研究計画書を作成する場合、問題意識が非常に重要になってきます。
なぜならば採点者である教員は、まず志願者の問題意識がどれだけ深くはっきりしているのかを見ているからです。問題意識が浅くあやふやであると、研究テーマや研究目的、研究上の問いも定まらず、定まったとしても、採点者である研究者からの評価は低いものになってしまいます。
裏を返せば問題意識を深くはっきりさせることができれば、自ずと研究テーマや研究目的、研究上の問いもしっかりと定まります。その結果、研究の内容全体が質の高いものになり、教員からも良い評価を得られる可能性が高まります。問題意識=良質な研究の土台と言っても言い過ぎではありません。
明確で深い問題意識を持つためには、以下の2つのことを行うとよいでしょう。
- 普段から自分の研究テーマに関連する新聞を読んだりニュースを見たりたりすること
- 自分の研究テーマに関連する論文や専門書などの最初の部分(序章など)を読むこと
後者について、なぜ論文や専門書の最初の部分を読む必要があるかということ、その部分に筆者の問題意識が書かれていることが多いからです
(裏を返せば、問題意識が書かれてない研究書は、良質な研究をしているとは言い難いと言えます)。
できる限り複数の研究書の問題意識に触れることは、自分の問題意識を先鋭化させることに役立ちます。
研究テーマ
まずは、何についての研究をしたいのか、すなわち研究テーマを決めなければいけません。
研究テーマとは、たとえば「EUとNATOの東方拡大」、「日本の老舗企業の事業継承」、「日本における#MeToo運動」のように、特定の研究領域で研究対象となっているテーマのことです。
ご自身が関心を持っている問題が、どの研究領域でいかなる形で研究対象となっているのかを把握する必要があります。
研究目的・研究上の問い(リサーチクエッション)
研究テーマを具体化したものが研究目的であり、
研究目的を問いの形式で表したものが研究上の問い(リサーチクエッション)です。
たとえば「冷戦史」という政治学/歴史学の研究領域があり、そこでは「冷戦の終結」が研究テーマの1つとして存在します。
その場合、研究目的は
「冷戦が終結した要因を、東欧における市民運動の役割に焦点をあてて明らかにすること」です。
一方、研究上の問いは、
「冷戦の終結に際して、東欧における市民運動はどのような役割を果たしたのか?」
というものになります。
(もっともこの研究目的や研究上の問いは、修士論文にしては大きすぎます。研究対象や分析時期などを絞るなどて、それらを具体化する必要があります)
研究上の問い
研究上の問いを立てることで、何を明らかにしたいのかを自分でも理解できることに加えて、読み手に即座に理解させることができます。
よく「日本におけるジェンダーの問題について研究したい」、「開発途上国における環境保全と経済発展の関係性について研究したい」というようなことを言う学生がいますが、それでは具体的に何を明らかにしたいの
相手は理解できません。研究上の問いを立て、自分の研究内容をはっきりさせましょう。
- 「なぜ〜なのか?」
- 「どのように〜するべきか?」
- 「どのように〜なっているか?」
「なぜ~なのか?」型の問いは、どの分野でも好まれて立てられる問いと言えます。
一方、「どのように~するべきか?」型の問いは、政策提言をするような分野(MBAや公共政策)で立てられることが多く「どのように~なっているか?」型の問いは自然科学の分野でよく立てられます。
立てるべきではない問い
問いを立てる際、以下のような問いは立てないようにしましょう。
- 大きすぎる/抽象的な問い
- 実証困難な問い
前者の大きすぎる問いについては、たとえば「なぜ日本は第二次世界大戦後、奇跡的な経済復興を遂げたのか?」という問いです。これは、論文のテーマとしては大き過ぎです。
また「日本のアニメはヨーロッパの若者の対日イメージに対してどのような役割を果たしているのか?」という問いは抽象的です。
これでは、いつの時点のことを研究したいのか分かりませんし、ヨーロッパの若者という部分についても、どこの国の若者を対象にしているのか分かりません。またアニメについても広すぎるため、対象を絞ったほうがよいかもしれません。たとえば、この問いは
「2000年代以降、日本の宮崎アニメはフランスの若者の対日イメージに対してどのような役割を果たしてきたのか?」
というもっと具体的な問いにすることができます。
後者の実証が困難な問いについては、たとえば「なぜ国際世論の反対があるにもかかわらず、プーチン大統領は、ウクライナ侵攻をやめないのか」という問いです。
この問いは、取り組むべき問いとしては、大変興味深いものですが、現在進行形の出来事であり実証が困難であるため、研究の問いとしてはふさわしくありません(この真相に迫るのは、ジャーナリストの仕事か、何十年か先の歴史家の仕事でしょう)。
メインクエッションとサブクエッションズを決める
メインクエッション(Main Question)とは中心的な問いのことです。
サブクエッションズ(Sub Questions)はメインクエッションを解き明かすために、立てなければならない複数の小さな問いのことです。
単純な例を挙げると、「2000年代以降、中国の自動車市場にて、日本の自動車メーカーは電気自動車のマーケティング戦略をどのように立てて実践してきたか?」というメインクエッションは、以下のようにサブクエッションズへと分けることが可能です。
- トヨタは、どのようなマーケティング戦略を立てて実践してきたか?
2. ホンダは、どのようなマーケティング戦略を立てて実践してきたか?
3. 日産は、どのようなマーケティング戦略を立てて実践してきたか?
このようにメインクエッションに加えてサブクエッションズを立てることで、研究内容がより精緻化されます。志望理由書には、サブクエッションズまで書き入れるためのスペースはないかもしれません。しかし、面接試験の際、サブクエッションズについても詳しく説明をすることができれば、面接官から高い評価を得られる可能性も高くなります。
おわりに
以上、今回は、研究内容の根幹である、問題意識と研究テーマ、研究目的、研究上の問いについて解説をしました。
次回は、先行研究、研究の独自性(オリジナリティ)、研究の意義という点に絞って、解説をしていきます。
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