【大学編入】名古屋大学 情報学部 合格体験記

大学編入2023.07.29

はじめに

私はこの度、宮崎大学工学部から3年次編入試験を受け、名古屋大学の情報学部自然情報学科に合格しました。編入試験は受験者数が少ないこともあり、その情報が非常に少ないです。

本記事では私が合格するまでの過程、受験戦略、試験の点数のボーダー等、今後受験を考えている方々に必要な情報を余すことなく全て記載しています。本記事で受験生の方は早々に情報収集を終え、勉強に集中することができるかと思います。

受験を決意した当時のスペック

地方国立大学理系の1年、専門は情報系、1浪経験有り、共通テストは7割前後でした。専門は情報系でしたが私が在籍していた大学では、本格的な内容(編入試験で問われるような)は2年の後期からなので、編入試験の科目としての情報学は、全くの0からのスタートでした。

工学系の編入試験の多くは、数学、TOEIC、専門科目によって決まります。前知識はほぼゼロ、アドバンテージになるような経験もありませんでした。

受験をしようと思った経緯

浪人時、前期試験の大学に落ち、後期試験で受かった大学に進学しましたが、どうしても満足に大学生活を楽しむことができませんでした。

その時編入試験の存在を知り、このモヤが掛かったような生活から抜け出せるかもしれないと感じ、受験しようと決めました。大学1年の時の自分と同じように、通っている大学に自身が持てず、コンプレックスのように感じている学生は多いと思います。個人的にそんな人達の最後のチャンスが編入試験だと考えています。学歴による自信の喪失は学歴によってのみ払拭され、その最後の砦が編入試験だからです。

もし、今この記事を読んでいる方に編入試験を受けようか迷っている人がいれば、ぜひ受験することをお勧めします。

3年次編入について

編入試験は全ての大学で行われているわけではなく、実施されている大学には限りがあります。

特に理系(医学系を除く)の編入試験は主に高専生向けに実施されており、別の大学(または短大、専門)からの受け入れは非常に少ないです。しかし、令和5年度入試で実施された大学(別の大学からの受け入れを行なっている)を挙げると、北海道大学、東北大学、名古屋大学、神戸大学と等が挙げられ、旧帝大やそれらに次ぐ難関国立大学も、受け入れを行なっています。

受験勉強開始

私が編入試験の存在を知り、勉強を開始したのは大学1年の10月あたりでした。今思えば、正直スタートは少し遅めだったと感じます。

私が受験を決めた大学は、筑波大学の情報学群名古屋大学の情報学部でした。筑波大学はTOEIC、情報学、数学で、名古屋大学は、TOEIC、数学、小論文が試験科目でした。

ここで、受験校を決めるときの注意ですが、なるべく受ける教科が被るようにすると、対策がしやすくなると思います。編入試験では定石となっていますが、早い段階でTOEICのスコアを取り、専門科目の勉強に時間を当てると有利になります。私も例に漏れず、まずはTOEICの勉強から始めました。

TOEICのスコアについてですが、筑波大学では730点で満点(年によって変動の可能性有)、名古屋大学では990点を満点(募集要項に記載)となっています。筑波大学では、受験生の多くが730点以上をとってくるので、これを超えるのはマストだと思います。名古屋大学では、合格者のTOEICの平均が830点(個人的主観)ほどでした。

私はTOEICを3回受験しスコアは、780、800、860でした。名古屋大学の受験を考えていて、英語を武器にしたい場合は、900点を目標にすると大きく合格に近づくと思います。これはあくまでも一つのボーダーですので、越えられないから受からない訳ではありません(800点前後で合格されている方もいます)。

私は3月までにTOEICで900点をとって専門の勉強に集中しようと考えていたので(実際は取れませんでしたが)、逆算して勉強計画を立てていました。使用した参考書を紹介します。

金のフレーズ

TOEICの単語帳はこれ1冊で十分です。基本的で重要な単語だけが集められたTOEIC全振りの単語帳です。

TOEIC文法問題でる1000問(パート5対策)

TOEIC公式問題集4〜8

本番のレベル感と時間感覚がわかるので必ず解きましょう。形式慣れするだけでもスコアは大きく変わります。

精選模試シリーズR•L 1〜2集

本番より少し難しい模試が5セット乗っています。高地トレーニングとして有効で、本番の試験が少し簡単に思えるようになります。

専門科目の勉強

数学は12月の末から、情報は2月頭から対策を始めました。

まず数学についてですが、これは受ける大学によって範囲が異なります。必ず受ける大学の範囲は把握しておきましょう。例年筑波大学と名古屋大学では、微積分と線形代数が範囲となっています。数学の勉強方法は大学受験時の勉強とさほど変わりはありません。まずは基本的な公式や概念の理解、基本問題の演習、そして応用問題、過去問といった具合で進めていきます。微積分は数Ⅲの延長として考えられますが、線形代数(特にベクトル空間)は馴染みのない人がほとんどだと思います。根気強く概念の理解を深めることが大切です。

使用した参考書を紹介しますが、独学で進めるのはなかなか困難だと思われるので、家庭教師等を利用して進めることをお勧めします。

編入数学徹底研究

編入受験生は誰もが通る一冊です。基本的な公式、例題、類題から過去問まで載っていて、基礎固めにもってこいの参考書です。本の形式がチャート式に似ているので扱いやすく感じました。

編入数学過去問特訓

レベル別でA、B、C問題に分かれていて、C問題は非常に難しいです。最終的に全て解けるようにしましたが、筑波大学や名古屋大学の数学の難易度では少しオーバーワークだと思います。それよりもA問題B問題をしっかりと理解し、素早く解けることを意識すべきだと感じました。

大学編入のための数学問題集

過去問特訓と同様にレベル別で分けられていますが、そこまで難しい問題はなかったように思えます。演習の量を重ねるのに打って付けの問題集です。

大学編入試験問題 数学/徹底演習

これも演習量を積むために使用しました。程よい難易度で、1〜3の参考書を終えた後に解くと、ほとんど初見で解けると思います。私はこれで自信がついたのを覚えています。

マセマシリーズ (微積分と線形代数学それぞれ)

教科書代わりに使っていました。

次に情報についてです。

私は情報専攻でしたが、前述した通り編入試験で出題されるような問題の知識はありませんでした。

筑波を受けられた方々の合格体験記を読み、どのような問題が出され、どのように対策すれば良いのかを練りました。筑波大学の情報学は、C言語を用いてアルゴリズムとデータ構造に関する知識、またはプログラムのコードを読んで、しっかり追えるかなどの問題が出題されます。

初学の方は、まずはC言語の文法をしっかりと覚える→アルゴリズムとデータ構造について理解を深める→過去問演習というステップを踏むことになります。ここでも使用した参考書を紹介しますが、独学で進めるのはなかなか困難だと思われるので、家庭教師等を利用して進めることをお勧めします。

やさしいC

C言語の文法をわかりやすく勉強できます。文法の勉強は退屈ですので、実際にコードを書きながら学ぶといいかと思われます。

定本C

筑波大学受験生御用達の本です。C言語を用いてアルゴリズムとデータ構造、計算量について理解を深めることができます。しかし個人的にはコードが読みづらく、参考書としても扱いづらかったと感じました。その上、今年の問題にはあまり有効ではなかったように思えます。数年前までは絶対必須の一冊として挙げられていましたが、最近の問題の傾向的に必ずしも必要ではないと思います。

C言語による初めてのアルゴリズム

C言語を用いてアルゴリズムとデータ構造を勉強できる本です。私はこの本で大きく理解が深まったように感じました。初学者にわかりやすく書かれており、写経練習にはもってこいの一冊です。

競技プログラミングコンテスト攻略のためのアルゴリズムとデータ構造

通称螺旋本と呼ばれる競プロ対策の本です。R3年度のDPの問題がそのまま載っていたり、筑波対策として有効な本です。

プログラミングコンテクストチャレンジブック

通称蟻本と呼ばれる競プロ対策の本です。実装力が鍛えられ、蟻本と同様に筑波対策として有効な本です。

小論文の対策は4月に入ってからでした。

小論文は独創的な意見を述べたりすることよりも、型にハマった書き方を覚え、いかに減点を防ぐかがポイントになるように感じました。これも使用した参考書を紹介します。

小論文書き方これだけ!超基礎編

基本的な小論文の書き方を学べ、型を学ぶことができます。

2022新小論文

さまざまなタイプの小論文の演習ができます。私は情報系と400字要約の問題だけ取り組みました。

小論文の完全ネタ本 自然科学系

基本的な用語の説明から小論文を書くときの注意まで載っているネタのための本です。私は名古屋大学で使える分野のみ読みました。

受験直前期(5〜9月)

5月あたりにはTOEICのスコアを取り終え、各科目の基礎が出来上がっていたので過去問に取り組み始めました。筑波大学は20年分、名古屋大学は6年分の過去問を解きました。ネット上で過去問を探すと解答がなかったり、ある年度が抜け落ちていたりするので、ここでも家庭教師等を使って解答を添削してもらったりすると効率的に進めることができると思います。

一般的な大学入試と同様に編入試験にも、その大学の傾向があります。私が受けた2校にも例外なく傾向が存在しました。

まず、名古屋大学の傾向についてです。

名古屋大学の数学は、3問構成で制限時間60分です。今年は微積1問、線形代数2問で出題されました。

微積の最近の傾向としては、ラグランジュの未定乗数法や2重積分などの典型的な編入試験の問題は出題されておらず、グラフの増減や単調数列の極限等の高校数学風な問題が出されています。線形代数の最近の傾向としては、行基本変形、マルコフ連鎖、対角化等の編入試験でよく見る顔ぶれが出題されています。

次に小論文についてですが、名古屋大学の小論文は直近3年間は60分で400字記述が2問出題されています。課題分が与えられ、400字要約と400字論述がパターン化されています。対策がし易く、課題文も平易な文章なので、コスパ良く高得点を狙うことができる科目だと思います。

【© DrKssn / Wikimedia Commons, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=48525887による

次に筑波大学の傾向についてです。

筑波大学は数学2問情報2問を制限時間120分で出題されます。数学は微積1問、線形代数1問です。

微積の傾向としては、工学系の人間には馴染みの薄いεーN論法によるチェザロ平均の証明などの鬼門から2変数関数の極地を求める典型問題まで幅広く出題されています。合格するためには、全てを解けるようになる必要はないので、典型問題をいかに落とさないかが重要になります。

線形代数も同様に、正射影やベクトル空間を範囲に難問が出題されています。しかし微積が難問の年は、線形代数は基本問題になったり、線形代数が難問の年は、微積が基本問題になったりしています。このようにおそらく大学側が難易度調整を行なっているので、基本的な問題さえ解ければ合格することができます。後述しますが筑波大学はおそらくボーダー制をとっており、ある一定の点数を超えると合格できるようになっています。

続いて情報についての傾向ですが、一昔前までは基本的なアルゴリズムとデータ構造を知っていれば解ける問題がほとんどでした。しかし最近では文章から問題の意図することを読み取り、プログラムに書き起こせるか、またはプログラムの動きを追えるかといったニュアンスの問題に変わっています。これらを対策するには過去問を通じてアルゴリズムの理解を深めたり、競技プログラミングの問題を通じて苦手意識を払拭する必要があります。

前述した通り筑波大学はおそらくボーダー制をとっています。毎年合格者定員が、情報科学類と情報メディア創成学類を合わせて20名としていますが、実際は30数名ほど合格しています。過去の受験者や合格体験記を見たところ、ボーダーは年によって変動し、情報科学類の方が高くなる傾向にあるようです。今年の成績はまだ開示されていませんが、昨年の合格者ボーダーは情報科学類が230〜240、情報メディア創成学類が220〜230あたりの可能性が高そうです。絶対的な情報ではありませんが、過去問演習で採点するときの一つの指標になればと思います。

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受験当日と発表

筑波大学は7月9日、名古屋大学は8月18、19日に試験がありました。理系の編入試験は夏頃にある場合が多いので、志望校を決めたらすぐに入試日程を確認するようにしましょう。

筑波大学の入試は前日入りして、ホテルから大学までのルートや時間の確認をしました。前日にはもう受験番号と受験会場の紙が張り出されていたのですが、情報科学類と情報メディア創成学類合わせて220人ほどいて、驚きました。併願のことも考慮しても倍率は10倍近くになります。例年7〜8倍くらいでしたので、今年は受験者が多かったのだと思います。

受験当日は緊張もありましたが、今までの勉強や過去問の手応え的にも受かるだろうと思って臨みました。数学の1問目は漸化式の証明だったり、単調数列の極限の問題でした。問題を開いた瞬間、全く見たことない問題だったので、すぐに飛ばしました。1周解いた後に戻ってきましたが、半分しか解けず4〜5割の手応えでした。2問目は状態遷移を行列で表し、対角化や逆行列を求める問題でした。落ち着いて考えれば難しいものでもなく、少々時間を取られましたが完答することができました。おそらく10割。情報の1問目は文字列をに二分木で符号化する問題。エントロピーやらなんやらで、あまり馴染みのない単語で困惑しましたが落ち着いて問題文に従えば解ける問題でした。しかし、焦って問題文の意図することが汲み取れず2〜3割程しか取れませんでした。4問目はオイラーの分割高等式を確認する問題でした。第3問が後を引き、問題を読解するまでにかなりの時間を使ってしまいました。記述で取れそうなところを書いて6割程だったと思います。

自己採点では数学65〜75点、情報40〜50点で、TOEICを合わせて全体で205〜225点でした。去年の難易度と比較しても非常に難しかったと思いますし、Twitterを見ても、多くの方が難化したと言ってました。ボーダーはおそらく情報メディア創成学類は210〜220点あたりになるだろうと思っていました。自己採点的にはおそらく落ちたなと思い、すぐに名古屋の対策にシフトしました。結果は不合格でした。原因は試験本番での立ち回りだったと思います。初見の単語や問題に臆さず、落ち着いて解答することができれば結果は変わっていたと思います。一般的な受験と異なり模試がない編入試験は、本番のシミュレーションを練習する必要があります。名古屋ではこの反省を活かして対策に臨むことができたので、本番の立ち回りは完璧だったと思います。

名古屋大学の入試も前日入りして、ホテルから大学までのルートや時間の確認をしました。名古屋大学は徒歩圏内にホテルがないので、前日に下見は必ずしたほうがいいと思います。

受験当日は受験番号が張り出されており、私が受験した自然情報学科は倍率が5、5倍でした。おおよそ例年並みです。

数学1問目はタンジェントの積分と二重積分を用いて大小関係を証明する問題でした。証明問題はぱっと見分かりませんでしたが、戻って解いてみると誘導に従ってとくだけでした。別解としてe^xをマクローリン近似することでも証明できそうです。手応えはおそらく10割。2問目は簡単な行列計算してでした。計算量は少し多めなので、計算ミスに気をつけなければいけません。手応えは10割。3問目はアリの確率的行動を行列で考えるマルコフ連鎖の問題でした。最初の条件設定を丁寧に整えれば、そのまま計算するだけです。これも計算量が多いので、多少工夫して計算しなければ時間内に解き終わらないと思います。手応えはおそらく10割。

小論文は直近の傾向通り、課題文が与えられ、400字要約と400字論述の出題でした。課題文も平易な文章で、時間にも余裕を持って解答することができました。ただ400字論述は記述に細かな条件があり、情報学について周辺知識を蓄えておく必要があると感じました。

翌日一次試験(筆記試験)の合格者発表で自分の番号があるのを確認し、面接に向かいました。一次試験の合格者は6人で、思ったより絞られていて驚きました。面接では4人の面接官の方に質問されました。質問は以下の通りです。

面接試験で聞かれたこと

①現在の所属の大学についてキーワードを上げながら説明してください

あなたが名古屋大学を志望する理由をキーワードを上げながら説明してください

筆記試験の手応えは

データサイエンティストになりたいということだが、具体的に社会でどのように貢献したいのか

データサイエンティストになるために何か活動しているか

⑥〇〇先生の研究室を志望する理由は

(理由を聞いて)〇〇先生である必要性があるのか

研究室に配属に向けて何か活動は行っているか

⑨合否とは関係ないが、併願校はあるのか

圧迫面接とは程遠く、最後まで和やかな面接でした。体感では12〜13分で終了しました。面接は志望理由書を元に行われるので、面接を見越した志望理由書の作成を心がけると有利に進めることができると思います。

2次試験を終え、8月31日の合格発表で無事に合格することができました。

名古屋大学は過去問を解いていた段階から自信はありましたし、本番の手応え的にも受かるだろうなと思っていました。発表後はホッと安心した記憶があります。

受験生へのメッセージ

私が名古屋大学に受かった勝因は、情報収集と分析、圧倒的勉強量だと思います。

情報収集は上記のように徹底的に調べていましたし、勉強を開始してから殆ど毎日10時間以上勉強していました。編入試験は孤独との戦いです。大学の友人からの誘いや自堕落な自分の自己コントロールが合否を分けます。この記事を読んでいる方がこれらに留意して合格を掴み取ることを切に願っています。

おわりに

いかがでしたか?

本記事が、名古屋大学情報学部を目指される皆さんの理解に少しでも役立ってくれれば幸いです。

スプリング・オンライン家庭教師には、情報系の編入試験対策の指導を得意とする指導者が多数在籍しています。

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運営会社:株式会社Spring Knowledge

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