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九州大学の編入学試験を徹底解説|学部別の募集人員・試験科目・日程・倍率と対策【2027年度】
九州大学は12学部のうち、学部の一般編入学試験を実施しているのは文学部・法学部・経済学部・理学部・工学部・芸術工学部の6学部だけです。しかも6学部とも「3年次編入学」のみで、2年次編入学の制度はありません。さらに厄介なのは、同じ「編入学試験」という名前でも、学部によって試験の中身がまったく別物だという点です。法学部と理学部は論述・筆記試験を課す学力選抜、経済学部と工学部は筆記試験を課さない学校推薦制、芸術工学部は英語スコア・数学・実技・小論文をコースごとに組み合わせる方式と、対策の方向性が学部間でまったく共有できません。
この記事では、九州大学の各学部が公表している2027年度の学生募集要項と、学部が公開している範囲での志願者数・合格者数の実績、そして法学部・理学部物理学科が公式に公開している過去問題をもとに、6学部の募集人員・受験資格・試験科目・日程・倍率を整理します。あわせて、公開されている過去問から読み取れる出題テーマまで、学部別に踏み込んで解説します。
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先に結論を言うと、「九州大学に編入したい」という漠然とした志望のままでは対策の立てようがありません。自分の今の身分(大学在学中か、高専生か、学士保有者か)で出願できる学部がどこかを最初に絞り込み、そのうえで筆記試験があるのか、倍率は公表されているのか、過去問は入手できるのかを学部単位で確認する。この記事はその手順を、公式資料に基づいて一つずつたどれるように構成しています。
九州大学で学部の編入学試験を実施しているのは6学部だけ
九州大学は文学部・教育学部・法学部・経済学部・理学部・医学部・歯学部・薬学部・工学部・芸術工学部・農学部・共創学部の12学部で構成されています。このうち、九州大学の学部入試サイト「3年次編入学試験」ページに募集情報が掲載されているのは次の6学部だけです。
| 学部 | 編入学試験の実施 | 実施年次 | 選抜方法の性格 |
|---|---|---|---|
| 文学部 | 実施(人文学科) | 3年次のみ | 筆記試験+口述試験 |
| 法学部 | 実施 | 3年次のみ | 書類審査(1次)+筆記・面接(2次) |
| 経済学部 | 実施(経済工学科のみ) | 3年次のみ | 学校推薦制・筆記試験なし |
| 理学部 | 実施(物理学科・数学科) | 3年次のみ | 筆記試験+口頭試問 |
| 工学部 | 実施(11学科+融合基礎工学科) | 3年次のみ | 学校推薦制・口頭試問中心 |
| 芸術工学部 | 実施(芸術工学科5コース) | 3年次のみ | 英語スコア+数学/実技/小論文+面接 |
| 教育学部 | 募集なし | ― | ― |
| 医学部 | 募集なし | ― | ― |
| 歯学部 | 募集なし | ― | ― |
| 薬学部 | 募集なし | ― | ― |
| 農学部 | 募集なし | ― | ― |
| 共創学部 | 募集なし | ― | ― |
この表から確認できる重要な点を整理します。2年次編入学という制度自体が九州大学には存在しません。私立大学に多い「2年次と3年次のどちらかを選べる」という発想は九州大学には当てはまらず、志望学部が決まった時点で年次は自動的に3年次に確定します。
経済学部は経済工学科のみ、理学部は物理学科と数学科のみが対象です。経済・経営学科、化学科、地球惑星科学科、生物学科は編入学生を募集していません。「経済学部に編入したい」「理学部に編入したい」という志望の立て方では対象学科を誤る可能性があるため、必ず学科単位で確認してください。
そして選抜方法の性格が学部でまったく違います。法学部・理学部は専門科目の筆記試験があり、得点力で勝負する学力選抜です。一方、経済学部・工学部は筆記試験がなく、出身高専の推薦・成績・面接(口頭試問)による書類・人物重視の選抜です。同じ「編入学対策」という括りで準備を始めると、志望学部によっては的外れな勉強をすることになります。
学部別の募集人員【2027年度】
2027年度(2026年に実施される試験)の学部別・学科別の募集人員は次のとおりです。
| 学部 | 学科・コース | 募集人員 |
|---|---|---|
| 文学部 | 人文学科(哲学・文学・歴史学・人間科学の4コース) | 若干名 |
| 法学部 | 法学部(学科の区分なし) | 若干名 |
| 経済学部 | 経済工学科 | 10名 |
| 理学部 | 物理学科(物理学コース) | 若干名 |
| 理学部 | 数学科 | 5名 |
| 工学部 | 推薦入試(電気情報工学科など11学科合計) | 30名程度 |
| 工学部 | 融合基礎工学科(連携教育プログラム特別選抜) | 20名 |
| 芸術工学部 | 芸術工学科(5コース、コースごと) | 若干名 |
「若干名」という表記の学部が多い点に注意してください。人数を固定していないため、その年の受験者の水準次第で合格者数が変動します。数値で募集人員を明示しているのは経済学部(10名)、工学部推薦入試(合計30名程度)、工学部融合基礎工学科(20名)、理学部数学科(5名)だけです。
文学部は人文学科の下に哲学・文学・歴史学・人間科学の4コースがあり、コース内の専門分野(国語学・国文学、日本史学、地理学など)ごとに「受入可能数を満たしている分野は募集を行わない」という運用があります。年度によって募集される専門分野が変わるため、志望分野が決まっている場合は最新の募集要項でその分野が募集対象に入っているか必ず確認してください。
受験資格|学部によって対象そのものが違う
九州大学の編入学試験で見落とされがちなのが、学部によって「誰が出願できるか」がまったく違うという点です。単に「編入学試験がある」ことだけを見て志望を決めると、自分がそもそも出願できない学部を選んでしまうことがあります。
| 学部 | 出願できる人 |
|---|---|
| 文学部 | 大学卒業(見込み)者、または学位授与機構による学士取得(見込み)者のみ。短期大学・高等専門学校を卒業しただけでは出願できない(学位授与機構の認定専攻科に在籍し学士取得見込みの場合を除く) |
| 法学部 | 学士保有者、短大・高専卒業(見込み)者、4年制大学2年次以上在学(見込み)者(62単位以上)、専修学校(2年以上・1,700時間以上)修了(見込み)者、外国の14年課程修了者と幅広い |
| 経済学部(経済工学科) | 高等専門学校を卒業見込みの者に限定。かつ在籍する高専の校長が学校推薦する者のみ(1校当たり推薦は1名まで) |
| 理学部 | 学士保有者、短大・高専卒業(見込み)者、4年制大学2年次以上在学者(物理学科は62単位以上、数学科は70単位以上)、専修学校・高校専攻科修了者、外国の14年課程修了者 |
| 工学部(推薦入試) | 高等専門学校の第4学年に在学し、学科(コース)内の成績が上位5%以内で、学校長の推薦を受けられる者のみ。かつ合格したら必ず入学する専願が条件 |
| 芸術工学部 | 学士保有(見込み)者、短期大学卒業(見込み)者、高等専門学校卒業(見込み)者の3区分。工学部のような「大学在学中で単位修得」ルートは設けられていない |
この表から読み取れる分岐は実務上とても大きな意味を持ちます。
大学2年次在学中の在学生が出願できるのは、法学部と理学部だけです。文学部は学士(4年制大学卒業相当)が前提で、経済学部・工学部は高専生限定、芸術工学部は卒業・修了が前提のため、「今は大学2年生で、3年次から九州大学に移りたい」という人が選べるのは事実上この2学部に絞られます。
高専生にとっては、経済学部と工学部が「学校推薦・専願」という特殊な狭き門です。経済学部は1校1名の推薦枠を、工学部は学科内成績上位5%という条件を、それぞれ九州大学に出願する前段階でクリアする必要があります。九州大学の選抜そのものより先に、在籍校内での競争が始まっている点を理解しておく必要があります。
文学部だけは短大・高専の「卒業」だけでは足りません。他の多くの大学の編入学試験では短大・高専卒業がそのまま出願資格になりますが、文学部は学士の学位(または学位授与機構の認定)を要求するため、通常の2年制の短大・高専卒業者は対象外です。この違いに気づかず出願準備を進めると、出願直前に資格がないと分かるという事態になりかねません。
教育学部・医学部・歯学部・薬学部・農学部・共創学部を志望している場合は、九州大学の学部入試サイトの「3年次編入学試験」ページに募集情報が掲載されていない以上、学部の一般編入学試験というルートは現時点では選べません。これらの学部への進学を考えるなら、編入学ではなく一般選抜・総合型選抜など別の入学ルートを検討することになります。募集の有無は年度によって変更される可能性があるため、志望する場合は必ず各学部の最新の入試情報を確認してください。
試験科目|筆記重視の学部と、書類・面接だけの学部に分かれる
受験資格の次に確認すべきが試験科目です。九州大学の編入学試験は、学部によって「筆記試験の有無」がはっきり分かれます。
| 学部 | 試験科目 | 面接・口頭試問 |
|---|---|---|
| 文学部 | 外国語(英語・独語・仏語から1カ国語を選択)+専門科目(志望する専門分野に関する筆記) | 口述試験あり |
| 法学部 | 1次:志望理由書(2,000字程度)・成績証明書・英語外部試験スコアによる書類審査/2次:筆記試験(法学または政治学に関する論述、志望学科で出題科目が変わる) | 個人面接あり(2次) |
| 経済学部(経済工学科) | 筆記試験なし。志望理由書・推薦書・在籍高専の成績証明書による書類審査 | オンライン面接あり |
| 理学部(物理学科) | 物理学(大学共通教育程度の力学・電磁気学・振動波動・熱力学)+英語(高校卒業程度の読解・英作文) | 口頭試問あり |
| 理学部(数学科) | 微分積分と線形代数の基礎に関する筆記試験 | 口頭試問あり |
| 工学部(推薦入試) | 筆記試験なし。出身校の成績・推薦書・調査書による書類審査 | 口頭試問あり(数学・物理・化学の基礎学力や専門基礎を問われる) |
| 芸術工学部 | 英語(TOEIC公開テストのスコア)+数学、または数学に代えて実技(鉛筆描画)・小論文をコースにより選択 | 面接(口頭試問)あり。コースによりポートフォリオ・パソコン持込の可否が異なる |
ここで最も重要な分岐は、筆記試験の有無です。
法学部・理学部は「得点力」で勝負する学力選抜
法学部の2次試験、理学部の物理学科・数学科は、いずれも専門科目の筆記試験を課します。法学部は法学または政治学の論述、理学部物理学科は力学・電磁気学・振動波動・熱力学、数学科は微分積分・線形代数です。過去問を解いて得点力を積み上げるという、他大学の学力型編入と同じアプローチが有効な学部です。
経済学部・工学部は「筆記試験がない」推薦入試
経済学部(経済工学科)と工学部(推薦入試)は、どちらも当日の筆記試験がありません。合否を決めるのは在籍高専での成績、学校長の推薦、志望理由書、そして面接・口頭試問です。「過去問を解いて得点力を上げる」という発想がそもそも成立しないため、対策の中心は在籍中の成績管理と、口頭で志望動機・専門基礎を説明しきる準備になります。
芸術工学部はコースで科目が分かれる
芸術工学部は5コース共通でTOEICスコアが必要ですが、数学が必須のコース(環境設計・メディアデザイン・音響設計)と、数学に代えて実技または小論文を選べるコース(インダストリアルデザイン=数学または実技、未来構想デザイン=数学または小論文)があります。志望コースが決まらないと、そもそも何を対策すべきかが決まりません。
面接時にポートフォリオや資料の持ち込みが認められるかどうかも、コースによって異なります。
| コース | 面接時のポートフォリオ・資料持ち込み |
|---|---|
| 環境設計コース | ポートフォリオの持ち込み可 |
| インダストリアルデザインコース | 持ち込み不可 |
| 未来構想デザインコース | ポートフォリオ等の持ち込み可 |
| メディアデザインコース | パソコンを含む資料の持ち込み可(発表用ツール以外は閉じる必要あり、録画・録音は厳禁) |
| 音響設計コース | 持ち込み不可 |
環境設計・未来構想デザイン・メディアデザインの3コースは制作物や資料を面接に持ち込めるのに対し、インダストリアルデザインと音響設計の2コースは持ち込みができません。志望コースがどちら側かによって、面接準備の組み立て方も変わってきます。
日程・スケジュール【2026年度実施・2027年度4月入学】
九州大学の編入学試験は、学部によって出願期間・試験日がまったく異なる時期に設定されています。
| 学部 | 出願期間(2026年) | 試験日 | 合格発表 |
|---|---|---|---|
| 経済学部 | 6月1日~6月5日 | 7月4日(オンライン面接) | 非公開(募集要項による) |
| 工学部(推薦入試) | 5月18日~5月22日 | 6月6日(口頭試問) | 6月29日 |
| 工学部(融合基礎工学科) | 6月1日~6月16日 | 7月10日 | 非公開(募集要項による) |
| 芸術工学部 | 6月1日~6月5日 | 7月11日 | 非公開(募集要項による) |
| 文学部 | 7月21日~7月31日 | 8月27日(外国語・専門科目・口述) | 9月9日 |
| 理学部(物理学科・数学科) | 7月24日~7月30日 | 9月5日(筆記・口頭試問) | 9月18日 |
| 法学部 | 9月14日~9月18日 | 1次:書類審査(10月下旬発表)/2次:10月30日(筆記・面接) | 11月20日 |
この日程表には、併願を考えるうえで見逃せない特徴があります。
試験時期が5月から11月まで、半年近くにわたって分散しています。私立大学の編入学試験が秋の同時期に集中しがちなのに比べ、九州大学は学部ごとに出願・試験の時期がずれているため、複数学部を時期的に併願しやすい構造になっています。ただし出願できる学部は前述のとおり出願資格で絞られるため、「併願できる時期があるからといって、その学部に出願資格があるとは限らない」点に注意してください。
経済学部・工学部・芸術工学部は6~7月に試験が終わります。これらの学部を受ける高専生は、比較的早い時期に結果が出るため、その後の進路(就職活動や他大学の秋入試)を早めに決められるという利点があります。一方、法学部は9月出願・10月試験・11月発表と、6学部の中で最も遅い日程です。
倍率・難易度|公開状況そのものが学部でちがう
九州大学の編入学試験を検討するうえで最初に理解しておくべきなのは、倍率の情報公開の水準が学部によってまったく違うという点です。安定して数値を追えるのは法学部と工学部だけで、経済学部・文学部・理学部・芸術工学部は公式サイト上に志願者数や合格者数の系統立った公表がありません。
| 学部 | 倍率・実績の公開状況 |
|---|---|
| 文学部 | 公式サイトに志願者数・合格者数の公表なし |
| 法学部 | 年度ごとの「実施結果」を公式サイトで公表(志願者数・1次選抜合格者数・最終合格者数) |
| 経済学部 | 公式サイトに志願者数・合格者数・倍率の公表なし |
| 理学部 | 募集要項に志願者数・合格者数の記載なし |
| 工学部(推薦入試) | 募集要項に学科別・年度別の志願者数・合格者数を参考掲載 |
| 芸術工学部 | 募集要項で合格者数を「若干名」とし、公式に安定した倍率の公表なし |
数値が公表されていない学部について、断定的な倍率を示すことは誠実ではないため、この記事では「非公表」として扱います。予備校や受験情報サイトが独自に紹介する倍率情報を見かけることがありますが、公式発表ではない数値は参考程度に留めるのが安全です。以下では、数値が公表されている法学部と工学部について、公表資料に基づいた実績を詳しく見ていきます。
なぜ学部によって公開の水準が違うのか、募集要項からその理由まで断定することはできません。ただし、募集人員を数値で明示している学部(経済学部・工学部)ほど実施結果の公表にも積極的で、募集人員を「若干名」とする学部(文学部・理学部・芸術工学部)ほど実績の公表に消極的である、という傾向は見て取れます。志望学部が「若干名」募集の場合、倍率という数字を追いかけるより、募集要項に書かれた選抜方法や配点の考え方から対策の方向を組み立てるほうが現実的です。
法学部の倍率は年度で大きく変動する
法学部は3年次編入学試験の「実施結果」を年度ごとに公式サイトで公表しています。公表されている直近3年度分の実績は次のとおりです。
| 年度 | 志願者数 | 1次選抜合格者数 | 最終合格者数 |
|---|---|---|---|
| 令和5(2023)年度 | 25名 | 9名 | 2名 |
| 令和7(2025)年度 | 3名 | 3名 | 3名 |
| 令和8(2026)年度 | 7名 | 7名 | 3名 |
この3年度だけを見ても、志願者数が25名から3名まで大きく振れていることが分かります。令和5年度は志願者25名に対し1次選抜で9名に絞り、最終合格は2名という狭き門でした。一方、令和7年度は志願者3名全員が1次選抜を通過し、最終合格も3名。令和8年度は志願者7名全員が1次選抜を通過し、最終合格は3名でした。
大学側は令和5年度の実施結果で「多数の出願があったが、第2次選抜における個人面接で対応可能な人数を考慮し、9名を合格者とした」と説明しています。つまり1次選抜の合格者数は学力の絶対水準だけでなく、2次選抜(面接)で対応できる人数という運営上の制約にも左右されるということです。志願者数が多い年ほど1次選抜の突破が難しくなる構造だと理解しておいてください。
また、法学部は2次の筆記試験について「本学法学部2年生の平均的な学力と同等以上の学力を有しているかを問う観点から、作問・採点した」と明記しています。特別に難しい問題を作るのではなく、在学生の標準的な到達度を基準にしている点は、対策の目線を定めるうえで参考になります。
なお、本記事執筆時点で公式サイトから確認できた実施結果は令和5・7・8年度の3年度分で、令和4年度・6年度の実施結果は確認できませんでした。試験問題自体は令和5~8年度の4年度分が公開されていますが、志願者数・合格者数の推移をすべての年度で追えるわけではない点は留保しておいてください。
工学部は学科によって「志願者ゼロ」の年もある
工学部の推薦入試は、募集要項に学科別・年度別の志願者数と合格者数を参考として掲載しています。全学科合計の推移を見ると、令和6年度は志願38名・合格22名、令和7年度は志願38名・合格27名、令和8年度は志願45名・合格32名で、志願者に対する合格者の比はおおむね1.4~1.7倍で推移しています。
ただし、この数字を単純に「入りやすい」と読むのは危険です。出願できるのはそもそも高専の第4学年で学科内の成績が上位5%以内という条件を満たした人だけで、母集団がすでに各高専の上位層に絞られています。さらに学科別に見ると、電気情報工学科や機械工学科のように毎年二桁の志願者が集まる人気学科がある一方、化学工学科や地球資源システム工学科のように志願者が0名の年度がある学科も存在します。志望学科によって競争の実態がまったく異なるため、全学科合計の倍率ではなく、志望する学科の推移を個別に確認することが欠かせません。学科別の詳しい年度推移は、当サイトの九州大学工学部の編入試験を徹底解説で整理しています。
なお工学部の推薦入試は、令和7(2025)年度入試から一般入試(学力試験型)の募集が停止され、現在は学力筆記試験を課さない推薦入試に一本化されています。過去に工学部の編入学試験に学力試験があったという情報を見かけても、現行制度には当てはまらない点に注意してください。
工学部にはもう一つ、11学科の推薦入試とは別枠の「融合基礎工学科 連携教育プログラム特別選抜」があります。これは久留米・有明・北九州・佐世保・熊本・大分・都城・鹿児島・沖縄の連携9高専の専攻科入学を確約し、学校長の推薦を受けた者だけが対象という、さらに限定された選抜です。募集人員は20名で、連携専攻科と融合基礎工学科の両方に2年間在学して修了・卒業要件を満たす仕組みのため、専攻科への入学を辞退すると九州大学への入学資格も同時に失われます。通常の高専本科生とは対象がまったく別のルートである点を、志望校選びの早い段階で確認してください。
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過去問はどこで手に入るか【学部別の公開状況】
編入学試験対策で最大の障害になりやすいのが過去問の入手ですが、九州大学は学部によって公開状況が大きく異なります。
| 学部 | 過去問の公開状況 |
|---|---|
| 文学部 | 3年次編入学試験(学士入学)の過去問は非公開。公式サイトで公開されているのは大学院(人文科学府)向けの過去問のみ |
| 法学部 | 公式サイトで複数年度分の試験問題と実施結果を公開(本記事執筆時点で令和5~8年度の4年度分を確認) |
| 経済学部 | 筆記試験自体が存在しないため、過去問という形の対策資料はない |
| 理学部(物理学科) | 物理学科のウェブサイトで平成19年度から令和8年度まで、20年近い年度分の第3年次編入試験問題(物理学・英語)を公開 |
| 理学部(数学科) | 公式サイトでの過去問公開は確認できず |
| 工学部(推薦入試) | 口頭試問中心で筆記試験がないため、公開すべき筆記の過去問がそもそも存在しない |
| 芸術工学部 | 市販の問題集のように整った形での公開はなく、入手可否は学務課への確認が必要 |
この表が示すとおり、九州大学の編入学試験で過去問演習という対策が成立するのは、実質的に法学部と理学部物理学科の2つだけです。とくに理学部物理学科は平成19年度から令和8年度まで一貫して過去問を公開しており、国立大学の編入学試験としては非常に恵まれた環境にあります。次の章では、この2学部について、公開されている過去問から読み取れる出題テーマを解説します。
公開されている過去問から読み取れる出題テーマ
ここからは、法学部と理学部物理学科が公式に公開している過去問題をもとに、出題テーマと形式を整理します。著作権の観点から問題文そのものは掲載できないため、テーマ・形式・そこから導ける対策の方向を中心に解説します。
法学部|大問2問、法学分野から1問・政治学分野から1問が基本パターン
法学部の2次筆記試験(法学又は政治学に関する論述問題)は、公開されている令和5~8年度の4年度分を見ると、大問2問構成で、法学(憲法・民法・刑法のいずれか)と政治学から出題されるパターンが基本になっています。
- 令和8(2026)年度:第1問は刑法(未遂犯・中止犯を定める条文の解釈、「実行の着手」の判断基準に関する学説対立)、第2問は政治学(全体主義体制・権威主義体制・自由民主主義体制の違いと、非自由民主主義体制から自由民主主義体制への移行・定着の条件)
- 令和7(2025)年度:第1問(50点)は憲法(外国人の憲法上の権利の享有主体性を判例・学説から論じる)、第2問(50点)は民法(不動産の売買契約の解除の可否と、二重譲渡における対抗要件・所有権の主張)
- 令和6(2024)年度:第1問は民法(不動産の仮装譲渡と対抗要件、第三者保護に関わる事例問題)、第2問は刑法(責任年齢のない者を利用した犯罪への関与、事後強盗罪における「窃盗の機会」の意義)
- 令和5(2023)年度:第1問は憲法(「敵対的聴衆の法理」を憲法の条文・判例に触れながら解説)、第2問は刑法(承諾を得た行為の刑法上の有効性、窃盗罪と占有離脱物横領罪の区別)
4年度分を並べると、毎年「法学(憲法・民法・刑法のいずれか)1問+もう1問(別の法学分野または政治学)」という2問構成が一貫しています。令和8年度の実施結果では「第1問は『刑法』、第2問は『政治学』からの出題とした」と大学自身が明記しており、法律基本科目と政治学を横断的に押さえる必要があることが分かります。志望学科が法律学科であっても政治学の基礎知識が問われる年があるため、法学一本の対策では手薄になるリスクがあります。
また大学は実施結果の中で、いずれの問題も「本学法学部2年生の平均的な学力と同等以上の学力を有しているかを問う観点から、作問・採点した」と繰り返し説明しています。特殊な難問ではなく、大学の基礎科目の教科書レベルを事例に当てはめて論述できるかどうかが評価軸だと考えてよいでしょう。
理学部物理学科|力学・電磁気学・熱力学・波動が毎年出題される
理学部物理学科の筆記試験は、大問4問(力学分野2問+電磁気学分野2問+熱力学1問+波動1問という構成が近年の基本形)で、90分または100分程度の枠の中で構成されています。公開されている令和6~8年度の出題テーマを整理すると、次のようになります。
| 年度 | 力学分野 | 電磁気学分野 | 熱力学・波動 |
|---|---|---|---|
| 令和8年度 | 惑星の楕円軌道運動(ケプラー運動)、減衰振動・強制振動と共振 | 荷電粒子の円運動、直線電流による磁場と電磁誘導 | 理想気体の断熱変化と音速、波面によるスネルの法則の導出 |
| 令和7年度 | 3質点の連成振動(固有振動モード)、回転する円板(剛体)の運動 | 電気双極子間の静電エネルギー、同軸導体の電流と磁場・自己インダクタンス | 内部エネルギーの全微分とエントロピーの関係式、定常波とドップラー効果 |
| 令和6年度 | 球面上を転がる剛体の回転運動、回転座標系とコリオリ力 | 一様帯電球の電場・電位、回転する帯電球による磁場 | 1次元格子振動(音響・光学モード)、ファンデルワールス気体の熱力学サイクル |
3年度分を並べると、力学(剛体・振動・回転座標系を含む)、電磁気学(静電気・電磁誘導・磁場)、熱力学(状態方程式・エントロピー・断熱変化)、波動という4分野がほぼ固定的に出題されていることが分かります。大学初年度の物理学(力学・電磁気学・熱力学・振動波動)の教科書範囲を一通り仕上げれば、出題範囲そのものを外すことはありません。
ただし単純な公式暗記では対応しにくい設問も含まれています。令和8年度の惑星軌道の問題は極座標での運動方程式の立式から面積速度保存則・ケプラーの法則の導出までを問い、令和7年度の連成振動は行列を使った固有振動モードの導出を要求しています。大学が公表するアドミッションポリシーでも「物理学と英語に関する筆記試験と物理学に関する口頭試問により、物理学を学ぶ意欲とそれを裏付ける学力のある学生を選抜する」とされており、暗記量よりも、基本法則から自力で式を導出する力が評価軸に置かれていると考えられます。
英語試験は高校卒業程度の読解・英作文とされていますが、実際の出題は科学史・科学トピックの英文が題材になることが多く、令和8年度は2023年のノーベル物理学賞(アト秒パルスの生成)に関する英文が使われました。専門用語を含む理系英文に読み慣れておくことが、点数の安定につながります。
過去問から導ける学習の順番
公開されている過去問を踏まえると、法学部・理学部物理学科を志望する場合の対策は次の順番で進めるのが合理的です。
- 志望学部の過去問を直近3~4年度分入手し、時間を計って解く
- 法学部志望なら憲法・民法・刑法の基本論点と政治学の基礎、理学部物理学科志望なら力学・電磁気学・熱力学・波動の大学初年度範囲を、出題実績に沿って優先順位づけする
- 公開されている実施結果・アドミッションポリシーの記述と自分の答案を照合し、評価される観点(法学部なら学部2年生水準の論述力、物理学科なら公式の自力導出力)とのずれを洗い出す
- 英語(法学部は外部試験スコア、理学部物理学科は読解・英作文)を並行して仕上げる
なお本節で扱った出題テーマは、法学部が公開する令和5~8年度、理学部物理学科が公開する令和6~8年度の過去問題資料に基づいています。出題内容は年度によって変わるため、対策にあたっては必ず各学部の公式サイトで最新の公開資料をご自身で確認してください。
学部ごとの対策の始め方
ここまでの情報を、志望学部別の具体的な行動に落とし込みます。
文学部を志望する場合
まず自分が「学士保有(見込み)」の受験資格を満たすかを最優先で確認してください。通常の2年制短大・高専の卒業だけでは出願できません。そのうえで、志望する専門分野(哲学・文学・歴史学・人間科学の各コース内の分野)が募集対象になっているかを、年度ごとの募集要項で確認します。外国語(英語・独語・仏語から選択)と専門科目の筆記、口述試験が課されるため、志望分野の専門知識と、選択する外国語の読解・作文力を並行して仕上げる必要があります。
文学部は募集要項で「受入可能数を満たしている専門分野については、募集を行わない」と明記しており、令和9年度は国語学・国文学、日本史学、西洋史学、地理学、社会学・地域福祉社会学の5分野が募集対象外(受入可能数を満たしている分野)とされています。裏を返せば、哲学・倫理学・インド哲学史・中国哲学史・美学美術史、中国文学・英語学英文学・独文学・仏文学、東洋史学・朝鮮史学・考古学、言語学応用言語学・心理学・比較宗教学といった分野は募集対象です。専門分野によって募集の有無が年度で入れ替わるため、志望分野を固定して長期的に準備するより、出願年度の募集要項が公表されてから最終確認する姿勢が欠かせません。
法学部を志望する場合
1次選抜(書類審査)を通過しなければ2次の筆記試験に進めません。志望理由書(2,000字程度)は生成AIツールで作成すると不正行為とみなされる旨が募集要項に明記されているため、必ず自筆で、かつ内容の練度を高めて準備してください。英語は英検2級相当以上が目安とされる外部試験スコアが必要です。2次の筆記試験は法学(憲法・民法・刑法のいずれか)と政治学から出題されるため、法律科目に偏らず政治学の基礎も並行して押さえておく必要があります。
経済学部(経済工学科)を志望する場合
最初の関門は九州大学の選抜ではなく、在籍する高専内での推薦枠の獲得です。1校から推薦できるのは1名までのため、校内選考の情報を早期に集めてください。線形代数・微分積分と同等の単位を修得していることが推薦要件とされているため、数学系科目の履修状況を担任の先生と早めに確認しておくことが実務的な準備になります。筆記試験がないため、対策の中心は成績管理と志望理由書・オンライン面接の準備です。面接はインターネットを使った遠隔形式で、志願者の自宅など、本人以外の入室が認められない部屋から受験する運用になっており、本番の約1週間前には接続テストも実施されます。詳しくは九州大学経済学部の編入試験を徹底解説で解説しています。
理学部(物理学科・数学科)を志望する場合
筆記試験の配点が大きいため、過去問演習が最も有効な学部です。物理学科は力学・電磁気学・熱力学・波動の大学初年度範囲を、公開されている過去問の出題実績に沿って優先順位をつけて仕上げてください。数学科は微分積分・線形代数が範囲ですが、公式サイトでの過去問公開は確認できないため、大学編入試験向けの標準的な演習書で範囲を網羅する必要があります。英語は高校卒業程度とされていますが、理系の専門的な英文にも慣れておくと安心です。
物理学科の募集要項は、口頭試問の内容について「詳しくは物理のホームページを参照」と案内しており、学科の公式サイトに口頭試問に関する補足情報が掲載されています。また「学力検査の結果によっては、口頭試問の受験が認められない場合がある」とも明記されているため、筆記試験の出来が口頭試問に進めるかどうかにも直結する構造だと理解しておいてください。
工学部を志望する場合
まず自分が高専の第4学年で学科内成績上位5%以内という条件を満たせるかを確認してください。この条件を満たすには、編入を意識し始めた早い段階から高専での成績を安定して上位に保つ必要があります。筆記試験がなく口頭試問中心のため、募集要項に示された学科別の観点表をもとに想定問答集を自作し、卒業研究や専門基礎を口頭で説明しきる練習を積むことが対策の中心になります。学科別の詳しい対策は九州大学工学部の編入試験を徹底解説を参照してください。
芸術工学部を志望する場合
5コースのうち、どのコースを受けるかによって選択科目(数学・実技・小論文)が変わるため、まず志望コースを1つに絞ってください(出願後の変更は認められません)。全コース共通でTOEICスコアが評価対象になるため、早期にスコアを確定させることが優先です。詳しいコース別の対策は九州大学芸術工学部の編入試験を徹底解説で整理しています。
出願書類には学部共通のルールが多い
試験科目や倍率は学部でまったく異なりますが、出願書類の取り扱いについては、複数の学部で共通するルールが確認できます。募集要項を読むときに見落としやすい共通点を整理しておきます。
| 項目 | 共通するルール |
|---|---|
| 成績証明書 | 出身学校長(学部長)発行のものが必要。法学部はGPAが確認できる証明書、または不合格科目を含む成績証明書の提出を求めている |
| 証明写真 | 出願前3か月以内に撮影した、正面・上半身・無帽のものという規定が文学部・法学部・理学部で共通 |
| 出願後の変更 | 文学部・理学部は出願手続き後の書類の変更・検定料の払い戻しを明記して禁止。法学部も、1次選抜不合格時の23,000円返還と出願書類不受理時の全額返還という2つの例外を除き、既納の検定料は返還しないと規定 |
| 単位修得見込み・卒業見込みでの出願 | 理学部は見込みで合格した者に対し、入学年度の3月26日までに確定した成績証明書・卒業証明書(または退学証明書)の追加提出を義務付けている。法学部は出願書類に虚偽の記載があった場合に入学を取り消すことがあると明記 |
| 障害等への配慮 | 各学部とも受験上・修学上の配慮を常時受け付けているが、出願期間より前の早い時期に学務担当へ相談することを求めている |
とくに注意したいのが、単位や卒業の見込みで出願するケースです。法学部・理学部は出願資格の一つとして「4年制大学に2年次以上在学し、一定単位を修得(見込み)」というルートを認めていますが、理学部は合格者に対して入学年度の3月26日までに確定後の成績証明書・卒業証明書等の再提出を求めています。単位の修得状況が微妙なラインにある場合は、出願前に成績を確定させておくか、学部の窓口に早めに相談してください。
検定料・入学料・学費は学部を問わずほぼ共通
試験内容は学部でまったく異なる一方、入学にかかる費用は6学部でほぼ共通しています。募集要項で確認できる金額は次のとおりです。
| 項目 | 金額(予定額) |
|---|---|
| 入学検定料 | 30,000円(6学部共通。法学部は1次選抜で不合格の場合、23,000円を返還) |
| 入学料 | 282,000円(文学部・理学部・経済学部・芸術工学部の募集要項・関連記事で確認) |
| 授業料 | 前期分267,900円、または前・後期分535,800円(年額)(同上4学部で確認) |
入学検定料30,000円は文学部・法学部・経済学部・理学部・工学部・芸術工学部の6学部すべての募集要項・関連資料で確認できました。一方、入学料282,000円・授業料267,900円(前期)/535,800円(年額)という具体的な金額が明記されているのは文学部・理学部の募集要項、および経済学部・芸術工学部の学生募集要項に基づく既出記事で、法学部・工学部の募集要項には金額の記載自体がありません(個人情報の利用目的として「入学料免除」「授業料免除」という制度名が触れられているのみです)。国立大学の標準額に沿えば同額である可能性が高いものの、法学部・工学部を志望する場合の正確な金額は、九州大学全体の入学案内・学生生活サイトで確認してください。なお、いずれの学部も納付金額は予定額であり、在学中に学生納付金の改定が行われた場合は改定後の金額が適用される旨が注意書きとして付されています。
併願をどう組むか
九州大学の6学部は出願・試験の時期が5月から11月まで分散しているため、時期がかぶらない学部同士であれば併願を検討する余地があります。ただし出願資格の項で見たとおり、文学部は学士保有者限定、経済学部・工学部は高専生かつ学校推薦・専願限定という制約があるため、実際に併願できる組み合わせは自分の身分(大学在学中か、高専生か、学士保有者か)によって大きく絞られます。
大学2年次在学中の在学生であれば、法学部と理学部(物理学科・数学科)が候補になります。法学部は9月出願・10月試験、理学部は7月出願・9月試験のため、時期は重なりません。ただし試験科目はまったく別物(法学部は法学・政治学の論述、理学部は物理学または数学の筆記)のため、両方を本気で対策するには相応の準備期間が必要です。理学部の試験(9月5日)で結果を待ちながら、法学部の出願(9月14日~)に向けて志望理由書を並行して仕上げるという時間の使い方もできます。
九州大学と同じ旧帝国大学の枠組みで編入学試験を実施している大学も複数あります。大学ごとの出願資格・倍率・難易度の違いは、当サイトの旧帝大 編入を徹底解説|大学別一覧・出願資格・倍率・難易度・対策で整理しています。九州大学一本に絞らず、複数校を比較しながら併願先を検討する際の参考にしてください。
結局、どの学部を志望すべきか|出願資格が最初のフィルター
ここまで学部ごとの制度を見てきましたが、実際に志望校を絞り込む際は、試験科目の得意・不得意より先に「自分の今の身分でそもそも出願できる学部はどこか」を確定させるのが近道です。受験資格の章で整理した情報を、身分別に並べ直すと次のようになります。
| 今の身分 | 出願できる学部 |
|---|---|
| 4年制大学2年次以上に在学中(62~70単位以上修得・見込み) | 法学部、理学部 |
| 学士の学位を保有(または4年制大学卒業見込み) | 文学部、法学部、理学部、芸術工学部 |
| 短期大学を卒業(見込み) | 法学部、理学部、芸術工学部 |
| 高等専門学校を卒業(見込み)・一般ルート | 法学部、理学部、芸術工学部 |
| 高等専門学校の第4学年に在学中・学科内成績上位5%かつ学校推薦を受けられる | 経済学部(経済工学科)、工学部(推薦入試) |
この整理から分かるとおり、大学2年次在学中の在学生が出願できるのは実質的に法学部と理学部の2つだけです。文学部・芸術工学部は卒業(見込み)が前提のため、在学途中での出願は認められません。一方、高専生は経済学部・工学部の学校推薦ルートに加えて、法学部・理学部・芸術工学部にも一般ルートで出願できるため、選択肢そのものは在学生より広くなります。ただし経済学部・工学部の学校推薦は校内選考という別の関門があるため、必ずしも「選べる」わけではない点には注意してください。
よくある質問
九州大学に2年次編入学はありますか。
ありません。九州大学の学部一般編入学試験は、文学部・法学部・経済学部・理学部・工学部・芸術工学部の6学部すべてで3年次編入学のみが実施されています。私立大学に多い「2年次と3年次のどちらかを選べる」制度は九州大学にはありません。
九州大学の編入は難しいですか。
学部によって選抜方法も難易度の測り方もまったく異なります。法学部は年度によって志願者数が3名から25名まで変動し、倍率が公表資料から確認できます。工学部は全学科合計でおおむね1.4~1.7倍ですが、出願できるのは高専の学科内上位5%の学生に限られます。経済学部・理学部・文学部・芸術工学部は公式な倍率の公表がなく、数値では測れません。
高専出身でも文学部に編入できますか。
通常の2年制短大・高専の卒業だけでは出願できません。文学部の受験資格は学士の学位を有する者(大学卒業見込みを含む)、または学位授与機構による学士取得(見込み)者に限定されています。学位授与機構の認定専攻科に在籍し学士取得見込みの場合は対象に含まれます。
経済学部の編入試験に筆記試験はありますか。
ありません。経済学部(経済工学科のみ実施)の3年次編入学試験は筆記試験がなく、志望理由書・推薦書・在籍高専の成績証明書・オンライン面接による総合評価で合否が決まります。出願できるのは高等専門学校を卒業見込みで、校長からの学校推薦(1校1名まで)を受けた者に限られます。
工学部の編入試験はどんな試験ですか。
令和7(2025)年度入試から一般入試(学力試験型)が募集停止となり、現在は学力筆記試験を課さない推薦入試に一本化されています。出身校の成績・推薦書・調査書と口頭試問によって合否が決まり、出願できるのは高専の第4学年で学科内成績上位5%以内、かつ専願で入学する者に限られます。
法学部の倍率はどれくらいですか。
公表されている実施結果では、令和5年度は志願者25名に対し最終合格2名、令和7年度は志願者3名に対し最終合格3名、令和8年度は志願者7名に対し最終合格3名でした。年度によって志願者数が大きく変動するため、単年度の数字だけで難易度を判断するのは危険です。
過去問はどこで手に入りますか。
学部によって公開状況が大きく異なります。法学部は公式サイトで複数年度分の試験問題と実施結果を公開しています。理学部物理学科は平成19年度から令和8年度までの過去問を公式サイトで公開しています。経済学部と工学部は筆記試験自体がないため過去問はありません。文学部(学部の過去問は非公開)、理学部数学科、芸術工学部は公式な過去問公開が確認できません。
併願はどう考えればよいですか。
九州大学の6学部は出願・試験時期が5月から11月まで分散しているため、時期の重なりだけを見れば併願の余地があります。ただし文学部は学士保有者限定、経済学部・工学部は高専生かつ学校推薦・専願限定という受験資格の制約があるため、実際に併願できる組み合わせは自分の身分によって絞られます。大学2年次在学中の在学生であれば、法学部と理学部の組み合わせが候補になります。
芸術工学部の編入はどのコースがありますか。
環境設計コース、インダストリアルデザインコース、未来構想デザインコース、メディアデザインコース、音響設計コースの5コースです。全コース共通でTOEICスコアが必要で、数学が必須のコースと、数学に代えて実技または小論文を選べるコースがあります。志望コースは1つに絞って出願し、出願後の変更は認められません。
理学部の物理学科と数学科で対策は違いますか。
大きく異なります。物理学科は力学・電磁気学・熱力学・波動を範囲とする筆記試験と英語、口頭試問が課され、過去問が平成19年度から公式サイトで公開されています。数学科は微分積分と線形代数の基礎を範囲とする筆記試験と口頭試問が課されますが、公式サイトでの過去問公開は確認できません。募集人員も物理学科は若干名、数学科は5名と明記されている点が異なります。
検定料や学費はいくらかかりますか。
入学検定料は6学部とも30,000円です(法学部は1次選抜で不合格になった場合、23,000円を返還)。合格後の入学料282,000円・授業料前期分267,900円/年額535,800円という金額は、文学部・理学部の募集要項、および経済学部・芸術工学部の関連資料で確認できます。法学部・工学部の募集要項には具体的な金額の記載がありませんが、国立大学の標準額に沿えば同水準である可能性が高いです。試験の難易度や準備の負担は学部で大きく異なりますが、合格後にかかる費用は学部を理由に増減しない設計です。
志望理由書はどのように準備すればよいですか。
学部によって分量や注意点が異なります。法学部は「編入学志望理由書」を2,000字程度で、志願者本人が自筆で作成する必要があり、生成系AIツールを含む本人以外による作成や剽窃が認められた場合は不正行為とみなされ入学許可の取り消し対象になると募集要項に明記されています。経済学部(経済工学科)も志望理由書が選考要素の一つです。分量・様式は学部・年度で変わるため、必ず最新の募集要項の様式に沿って準備してください。
まとめ
九州大学の編入学試験について、公式に確認できる情報を整理します。
まず、学部の一般編入学試験を実施しているのは12学部中6学部(文学部・法学部・経済学部・理学部・工学部・芸術工学部)だけで、すべて3年次編入学のみです。2年次編入学の制度はありません。経済学部は経済工学科のみ、理学部は物理学科と数学科のみが対象で、他の学科・学部は編入学生を募集していません。
次に、受験資格が学部によってまったく違います。大学2年次在学中の在学生が出願できるのは法学部・理学部だけで、文学部は学士保有者限定、経済学部・工学部は高専生かつ学校推薦・専願限定です。志望学部を決める前に、自分がそもそも出願資格を満たすかを最初に確認する必要があります。
そして試験科目は、法学部・理学部が筆記試験を課す学力選抜であるのに対し、経済学部・工学部は筆記試験のない学校推薦制、芸術工学部はコースごとに科目が変わる方式と、性格がまったく異なります。倍率は法学部と工学部だけが公式に公表しており、法学部は年度によって志願者数が3名から25名まで変動します。
最後に、過去問は法学部(複数年度の試験問題・実施結果)と理学部物理学科(平成19年度から令和8年度までの長期公開)で対策材料として使えますが、経済学部・工学部は筆記試験自体がなく、文学部・理学部数学科・芸術工学部は公式な公開が確認できません。志望学部が決まったら、まずその学部の情報公開の水準に応じた対策の立て方に切り替えることが、遠回りをしない第一歩になります。
出願書類の様式・検定料・入学料・授業料といった事務的な条件は6学部でほぼ共通している一方、試験そのものの性格・倍率の公開度・過去問の有無という、合否に直結する情報はすべて学部単位でばらばらです。「九州大学の編入」という括りで一つの対策を組むのではなく、学部を先に一つに絞り込み、その学部の一次情報だけを頼りに準備を進める姿勢が、遠回りを避ける最も確実な方法だと言えます。
本記事の数値は、九州大学の各学部が公表する2027年度学生募集要項、および法学部・工学部が公表する年度別の実施結果に基づいています。制度・日程・募集人員・試験科目・受験資格は年度によって変更されるため、出願前には必ず志望学部が公表する最新の学生募集要項をご確認ください。
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