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研究計画書の書き方7ステップ|白紙から提出までの手順と分野別の例文

「研究計画書 書き方」で検索している方の多くは、白紙の状態から何をどのように書き始めればいいのか分からず、手が止まってしまっているのではないでしょうか。結論からお伝えすると、研究計画書は独創的な文章を一から生み出す書類ではなく、決まった型に自分の問題意識を落とし込んでいく書類です。研究計画書とは、大学院入学後に取り組みたい研究の目的・背景・方法を、大学院・研究科が指定する様式に従ってまとめた出願書類のことをいいます。この記事では、そのまま使える基本テンプレートと、文系・理系・心理系・経営系(MBA)ごとの構成例、そして審査で弱いと判断されやすいNG例を、大学公式資料を踏まえて整理しました。
ただし最初に断っておきたいのは、ここで紹介する例文・テンプレートはあくまで「構成の見本」であり、内容をそのまま丸写ししてよいものではないという点です。大学院によっては、提出書類における剽窃や虚偽記載を不正行為とみなし、入試結果そのものを無効にする場合があると募集要項に明記しています。例文は「論理の流れ」と「表現の型」を学ぶために使い、中身は自分自身の問題意識から組み立てることが前提になります。
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本記事は、研究計画書の書き方を「白紙の状態から提出まで」通しで扱う総合ガイドとして構成しています。具体的には、書き方の7ステップ、基本テンプレート8項目、分野別の例文、NG例、書式・文体のルール、逆算スケジュール、そして提出前の添削観点までを一本にまとめました。研究計画書は書く順番を間違えると手戻りが大きい書類です。そのため、いきなり例文を写す前に、まず全体の流れを頭に入れてから各パートへ進む構成にしています。
スプリング・オンライン家庭教師のコラムには、研究計画書に関するより細かい論点を扱った記事もあります。各項目の評価基準を一項目ずつ深く確認したい方は研究計画書の構成と項目別の要点、文系のフル例文を1本通しで読みたい方は文系大学院の研究計画書例文、書き上げた原稿をメールで添削依頼する際の手順は研究計画書をメールで添削依頼する方法が参考になります。本記事だけで手順・型・例文・書式・スケジュールの全体は完結しますので、まずはこの記事を上から読み進め、必要になった論点だけ個別記事で補うという使い方をおすすめします。
もう一つ、研究計画書と混同されやすい書類に志望理由書があります。両者は似て非なる書類であり、この違いを取り違えると審査で評価を落とす原因になります。詳しくは本文中で解説します。
研究計画書の書き方|白紙から提出までを7ステップで整理する
研究計画書の書き方でつまずく原因の多くは、文章力ではなく着手の順番にあります。研究計画書は「書く」前に「決める」工程が6割を占める書類であり、何を明らかにするのかが定まらないまま文章化に入ると、書いては消すことの繰り返しになりがちです。ここでは、募集要項の確認から提出直前の推敲までを7つのステップに分解して整理します。以降の見出しは、この7ステップのどこかを詳しく解説する構成になっていますので、自分が今どのステップで止まっているのかを確認しながら読み進めてください。
| ステップ | この段階でやること | 手元に残る成果物 |
|---|---|---|
| ①様式の確認 | 志望研究科の最新の学生募集要項で、提出書類・所定様式の有無・字数・記載項目を確認する | 要項の該当ページの控え、字数と項目のメモ |
| ②問題意識の言語化 | 授業・卒業研究・仕事の中で引っかかっている事柄を箇条書きで書き出し、関心の中心を特定する | 関心キーワードの一覧 |
| ③先行研究の収集 | 関連する論文を3〜5本読み、何が明らかにされ、何が未解明かをメモする | 先行研究メモと引用情報 |
| ④研究の問いの確定 | 明らかにしたいことを疑問文一文で言い切れる形にまで絞り込む | リサーチクエスチョン一文 |
| ⑤研究方法の具体化 | 誰に・何を・どの手法で調べ、どう分析するかを実行手順のレベルまで落とす | 調査設計のメモ、必要なデータ・環境の一覧 |
| ⑥テンプレートへの流し込み | 基本構成8項目に②〜⑤の材料を箇条書きで配置し、そのうえで文章化する | 研究計画書のドラフト |
| ⑦推敲と添削 | 字数・様式・論理の飛躍・誤字を点検し、第三者に読んでもらう | 提出版の原稿と面接用の想定問答 |
この順番を守るべき理由は、④の研究の問いが決まっていない状態で⑥の文章化に入ると、「日本経済について研究する」のような大きすぎるテーマのまま原稿が固まってしまうからです。①の様式確認を最初に置いているのも、字数と記載項目が分からないまま書くと分量調整でやり直しになるためです。研究科によっては所定様式に設問が細かく設定されており、その設問に沿って書けば構成の悩みがほぼ解消されるケースもあります。先に様式を手元に置いてから書き始めるほうが、結果的に早く仕上がります。
7ステップのうち、②と③でつまずく方が最も多い印象です。関心の言語化については問題意識・研究テーマ・研究上の問いの解説記事が、先行研究の集め方については本記事後半の「先行研究の探し方と参考文献の書き方」が対応します。⑥の各項目に何を書くかを一項目ずつ確認したい場合は、研究計画書の構成と項目別の要点の解説記事で項目別の評価基準を補ってください。7ステップのどこか一つでも空白のまま提出すると、面接で必ずその箇所を突かれます。逆にいえば、この7つが埋まっていれば、研究計画書としての最低限の形は整っているといえます。
研究計画書の例文を見る前に知っておきたい、大学院入試で評価されるポイント
研究計画書は、いわば大学院に提出する「研究の企画書」です。審査する側は、この書類を通じて出願者が修士(あるいは博士)レベルの研究を遂行できる力を持っているか、そして志望テーマが受け入れ先の研究科・研究室の専門性と合っているかを見ています。北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の敷田麻実教授は、研究計画書には「What(何を研究するか)」「Why(なぜその研究をするのか)」「How(どのように研究するか)」の3要素が欠かせず、特にWhyが最も重視されると述べています。何を研究したいかだけでなく、なぜそれを今、その研究科で明らかにする必要があるのかという問いの必然性が、審査で最初に見られるポイントだということです。同教授は、研究計画書で陥りがちな失敗の典型として「◯◯を研究する」という書き方、たとえば「よそ者を研究する」「伝統野菜を研究する」のような表現を名指しで挙げています。研究の「対象」を挙げるだけでは研究計画にならず、その対象の何を、どのように明らかにしたいのかまで絞り込む必要があるという指摘です。
もう一つ押さえておきたいのは、研究計画書は提出して終わりの書類ではないという点です。多くの大学院で、面接試験は研究計画書の内容に基づいて行われます。実際に神戸大学大学院経営学研究科(MBA)の令和8年度学生募集要項では、第2次選考が「提出された研究計画書等を中心とした口述試験」であると明記されています。つまり、研究計画書に書いたことはすべて、面接の場で自分の言葉で説明できる状態になっている必要があります。ここで例文の正しい使い方が重要になってきます。例文から学ぶべきは、①論理の流れ(構成)を真似ること、②接続表現や言い回しの「型」を借りること、の2点であり、③内容そのものは必ず自分の問題意識から作ることが前提です。他人の計画書や例文をそのまま流用すると、面接で深掘りされた瞬間に説明ができず破綻します。加えて、一橋大学大学院経営管理研究科の募集要項のように、提出書類の偽造・虚偽記載・剽窃等を不正行為とみなし、入試結果を無効とすることがあると明記する大学院も存在します。例文はあくまで「参考にする地図」であり、「そのまま歩く道」ではないと理解しておきましょう。JAIST敷田教授も、提出前に専門外の第三者に読んでもらうことの重要性を指摘しています。研究計画書を書き始める前の基礎知識は研究計画書の基本事項の解説記事でも整理していますので、あわせて参考にしてください。
研究計画書と志望理由書は別物 — 混同に注意
研究計画書のテンプレートを探している方の中には、志望理由書と何が違うのか整理できていないまま書き始めてしまうケースが少なくありません。研究計画書は「何を、なぜ、どのように研究するのか」を先行研究の引用など客観的な裏付けとともに示す書類であるのに対し、志望理由書は「なぜその大学院・その研究科・その教員のもとで学びたいのか」を自分自身の経験に基づいて語る書類です。前者は研究の設計図、後者は志望動機の説明という役割の違いがあります。
実際、大阪大学附属図書館が2024年6月に大阪大学在籍学生向けに公開した研究計画書講習会資料では、大阪大学大学院人文学研究科外国学専攻の出願様式が「志望理由・研究計画書」という1枚の用紙にまとまっており、「本研究科・専攻・コースを選んだ理由」(志望理由にあたる部分、200字程度)と「入学試験論文」(研究計画にあたる部分、4,000〜12,000字程度、平均8,000字)が並んで配置されています。この様式自体が、大学院入試では志望理由と研究計画がセットで問われやすく、だからこそ役割を混同しやすいことを示す好例といえます。両者の違いを一覧にすると、次のようになります。
| 比較項目 | 研究計画書 | 志望理由書 |
|---|---|---|
| 問いへの答え方 | 何を・なぜ・どう研究するか | なぜこの大学院・研究科・教員を選ぶか |
| 裏付けの中心 | 先行研究など客観的な根拠 | 自分自身の経験・動機 |
| 評価される視点 | 研究を遂行できる設計力があるか | 入学後のミスマッチが起きないか |
両者の混同は、たとえば次のような書き出しの違いに表れます。「私は幼少期から人間関係の難しさに悩んできた。だからこの大学院で心理学を学びたい」という書き出しは、動機を語る志望理由であって研究計画にはなりません。研究計画書としては、「本研究は、大学生の対人関係における自己開示の程度と精神的健康の関連を、質問紙調査により明らかにすることを目的とする」のように、何を・どのような方法で明らかにするのかまで踏み込む必要があります。動機や原体験そのものが悪いわけではなく、それを研究の問いにまで変換できているかどうかが分かれ目です。両者を書き分けるコツや構成テンプレート、文系・理系・社会人別の例文は院試の志望理由書の書き方の解説記事で詳しく扱っています。研究計画書と志望理由書を同時に準備する場合は、内容が重複しないよう役割を分担させる意識で臨むと、両方の書類の完成度が上がります。
研究計画書のテンプレート|そのまま使える基本構成8項目
研究計画書には、分野を問わず活用できる基本のテンプレートがあります。中央大学大学院の公式メディアFocusでは、研究計画書の基本構成として「①研究テーマ、②研究の背景・目的(先行研究を含む)、③研究内容、④研究方法、⑤期待される効果、⑥参考文献」の6項目を挙げています。またJAIST敷田教授は、構成要素として「タイトル・目的・背景(社会的/学術的)・方法・予想される結果・研究の特色」を提示しています。本記事では、この2つの一次情報を統合し、より書きやすい形に細分化した8項目のテンプレートを提案します。
- ①タイトル(研究テーマ):40字程度を目安にし、必要に応じてサブタイトルを付ける
- ②研究の背景:社会的背景と学術的背景の両面から書く
- ③問題意識・研究目的:なぜこの研究をしたいのかを明確にする
- ④先行研究の整理と本研究の位置づけ:何が明らかにされ、何が未解明かを示す
- ⑤研究の問い(リサーチクエスチョン):明らかにしたいことを一文で言い切る
- ⑥研究方法:どのようなデータ・手法で明らかにするかを具体的に書く
- ⑦期待される成果・意義:研究がもたらす学術的・社会的な意義
- ⑧参考文献:引用・参照した文献のリスト
このテンプレートの妥当性は、放送大学大学院が公式に示す研究計画の必須項目「①目的、②背景・先行研究、③研究方法、④研究成果として期待されること・もの」の4項目とも対応しています。上記8項目は、この4項目をより実務的に細分化したものと考えると理解しやすいでしょう。全体を2,000字で書く場合の配分の目安は、背景2割・先行研究2.5割・問い1割・方法2.5割・意義1割・その他1割程度です(この比率はあくまで編集部の目安であり、必須の基準ではありません)。なお、大学院によっては構成項目や字数を指定した所定様式が用意されている場合があります。その際は様式の指定が最優先であり、上記テンプレートの各項目を様式の設問に振り分けて対応させる形で活用してください。タイトルの付け方をより詳しく知りたい方はタイトルの付け方の解説記事も参考になります。
穴埋め式で使える定型文テンプレート
ここまでの8項目を、実際にどう文章化すればよいか迷う方のために、そのまま空欄を埋める形で使える定型文を項目ごとに2パターンずつ紹介します。大阪大学附属図書館の講習会資料でも、実際の出願書類(入学試験論文、4,000〜12,000字程度)で「本研究の目的は・・・である」「本研究の先行研究として・・・が挙げられる」「本研究では、研究方法として・・・を用いる」といった定型文言を項目ごとに当てはめる書き方が示されており、以下のテンプレートも同じ考え方にもとづいています。空欄を埋めたら、必ず自分の言葉に言い換えて不自然さの残らない文章に調整してください。
- ①タイトル:「◯◯における◯◯が◯◯に与える影響」/「◯◯を対象とした◯◯の◯◯に関する研究」
- ②研究の背景:「近年、◯◯という社会的な変化が進んでいる。一方で学術的には、◯◯という観点からの検討が十分になされていない。」/「◯◯の分野では◯◯が課題とされてきたが、◯◯についてはいまだ明らかでない。」
- ③問題意識・研究目的:「本研究の目的は、◯◯という問いを、◯◯の手法を用いて明らかにすることである。」/「本研究では、◯◯が◯◯に与える影響を明らかにすることを目的とする。」
- ④先行研究の整理:「先行研究では◯◯が明らかにされている一方、◯◯の観点からの検討は十分になされていない。」/「◯◯に関する研究として◯◯が挙げられるが、いずれも◯◯を対象としておらず、本研究はこの点を補うものである。」
- ⑤研究の問い:「◯◯は、◯◯にどのような影響を与えるか。」/「◯◯において、◯◯はどのように機能しているか。」
- ⑥研究方法:「本研究では、研究方法として◯◯を用いる。具体的には◯◯を対象に◯◯を実施する。」/「◯◯という手法により、◯◯のデータを収集・分析する。」
- ⑦期待される成果・意義:「本研究が遂行されれば、◯◯という学術的な意義に加え、◯◯という社会的な意義が期待できる。」/「本研究の成果は、◯◯の分野において◯◯という形で貢献しうる。」
- ⑧参考文献:「著者名(発行年)『文献タイトル』出版社・掲載誌名」の形式で、本文中に引用した文献をもれなく列挙する
この定型文はあくまで文章の骨格であり、◯◯の部分を自分の問題意識・先行研究・データで埋めていく作業こそが研究計画書の本体です。次の見出しからは、文系・理系・心理系・経営系(MBA)という分野別に、この骨格へ実際に肉付けした構成例を紹介します。
【文系・理系別】研究計画書の例文と書き方のポイント
文系(社会学・教育学系)の例文と書き方
文系、特に人文社会系の研究計画書では、問題意識の深さと先行研究の読み込みの丁寧さが重視される傾向があります。概念の定義を明確にすること、先行研究を「誰が・何を明らかにし・何がまだ明らかにされていないか」という形で整理すること、そして研究方法を文献研究・質的調査(インタビューやフィールドワーク)・量的調査(質問紙調査)のいずれかに具体化することがポイントです。
以下は、社会学系のテーマ(地域コミュニティとSNS利用の関係)を想定した構成例です。実在する論文の内容ではなく、構成の見本として作成したものです。
- タイトル:地域コミュニティにおけるSNS利用が住民間の互助意識に与える影響
- 背景:都市部における地域コミュニティの希薄化という社会的背景を述べたうえで、SNSを活用した地域活動の広がりという学術的背景に絞り込む
- 問題意識:SNS利用が住民の互助意識をどう変化させるかは十分に検討されていないという問いを提示
- 先行研究:地域コミュニティ研究とSNS利用研究それぞれの到達点を整理し、両者を接続した研究が少ないという「穴」を示す
- 研究の問い:SNSでの情報共有頻度と住民の互助意識にはどのような関連があるか
- 研究方法:対象地域を選定し、質問紙調査とインタビュー調査を組み合わせる
- 期待される成果:地域活性化施策への示唆を提供できる
この例文では、社会的背景から学術的背景へと視野を絞り込む流れ、先行研究の中に「未解明の部分」を意識的に位置づける構成が要点です。教育学系であれば、これに加えて教育現場の実践課題との接続を意識すると、より説得力のある構成になります。問題意識や研究テーマの立て方をさらに深めたい方は問題意識・研究テーマ・研究上の問いの解説記事を、文系の研究計画書をタイトルから研究方法までフル例文で通して確認したい方は文系大学院の研究計画書例文の解説記事をご参照ください。
理系(工学・情報系)の例文と書き方
理系の研究計画書は文系と異なり、卒業研究や志望研究室の研究テーマとの連続性が問われやすく、手法・データ・評価指標の具体性がより重視されます。なお、理系では研究計画書の要否や分量が研究科によって大きく異なり、志望理由書のみを求める研究科もあります。実際に京都大学大学院工学研究科の2026年度修士課程入試では、出願書類が専攻ごとに異なり、電気系(電気工学専攻、電子工学専攻)では「研究計画説明書」の提出が求められています。同じ工学研究科であっても専攻単位で必要書類が変わるため、志望する専攻の最新の募集要項を必ず確認してください。
以下は情報系のテーマ(機械学習を用いた需要予測)を想定した構成例です。
- タイトル:機械学習を用いた小売店舗における需要予測モデルの構築
- 背景:需要予測の重要性という社会的背景と、既存手法の精度上の課題という学術的背景
- 研究の問い:どのような特徴量・モデル構造が予測精度向上に寄与するか
- 研究方法:公開データセットまたは協力先から得るデータを用い、複数のモデルを比較検証する
- 予想される結果:既存手法に対する精度改善の度合いを検証する
- 年次計画:M1でデータ収集とモデル構築、M2で検証と論文執筆
理系の例文で特に意識したいのは、実現可能性の示し方です。使用する装置・データ・解析環境が入学後に実際に利用できるかどうかを踏まえて書くことが求められます。また「予想される結果」を書く際は、結果を断定するのではなく、仮説として提示する書き方にとどめるのが基本です。実験・観測を中心に据える分野であれば必要な設備や試料が志望先で確保できるかを、シミュレーション・データ分析を中心に据える分野であれば使用するデータセットの入手可否や計算資源を、それぞれ具体的に見積もっておくと「実現可能性」の説明に説得力が出ます。文系と理系では、重視される観点・方法の書き方・参考文献の性質がそれぞれ異なるため、志望先の分野に合わせて型を使い分けることが重要です。
【心理系】臨床心理士・公認心理師をめざす大学院の研究計画書の例文
心理系の大学院入試では、研究計画書が書類審査・面接の中心的な役割を果たしやすい傾向があります。臨床への関心だけでなく、「研究」としての設計、すなわち仮説・変数・測定方法が明確に組み立てられているかが問われます。心理系で大学院進学がほぼ前提となる背景には制度的な理由もあります。公認心理師の受験資格には、大学で必要な科目を履修したうえで大学院において必要な科目を修了するルートがあることが公認心理師法第7条に定められています。また臨床心理士についても、原則として指定大学院の修了が受験資格とされていますが、第1種・第2種の区分など制度の詳細は、必ず日本臨床心理士資格認定協会の最新の公式情報で確認するようにしてください。
心理系の研究計画書に必要な字数や様式は大学院によって大きく異なるため、一律の目安を示すことは難しく、志望校の最新の学生募集要項を必ず確認する必要があります。以下は臨床心理学系のテーマ(大学生の援助要請行動)を想定した構成例です。
- タイトル:大学生の心理的要因が援助要請行動に与える影響
- 背景・問題意識:相談行動を取らない学生の存在という社会的背景と、援助要請研究の到達点という学術的背景
- 仮説:自己開示への抵抗感が強いほど援助要請行動が抑制される
- 対象・測定:大学生を対象に、援助要請尺度と自己開示尺度を用いた質問紙調査を実施
- 分析方法:相関分析および重回帰分析を用いて要因間の関係を検討
- 倫理的配慮:調査協力にあたり対象者に趣旨を説明し同意を得ることを明記
心理系では、量的研究(質問紙・尺度・統計分析)と質的研究(面接調査・分析法)のどちらの方法を取るかによって「研究方法」セクションの書き方が変わります。量的研究であれば使用する尺度名と分析手法を、質的研究であれば面接の対象者選定基準と分析手法(質的分析の方法など)を具体的に示すことが必要です。また、対象者への説明と同意といった倫理的配慮への言及は、心理系の研究計画書で特に見られやすい観点です。ありがちなつまずきとしては、「困っている人を支援したい」という気持ちだけが先行し、研究としての問いが立てられていないケースや、使用する尺度名・分析手法が不明確なケースが挙げられます。研究として成立する形に問題意識を落とし込むことを意識してください。
【経営系・MBA】研究計画書・将来計画書の例文と構成例
経営系の大学院入試では、研究者養成を目的とするアカデミックなプログラムと、実務家向けのMBAプログラムとで、求められる書類の性質が異なります。特にMBAでは「研究計画書」という名称ではなく「将来計画書」といった形式で、これまでのキャリアと今後の学習・研究計画を問う書類が用いられることが少なくありません。
実例として、一橋大学大学院経営管理研究科・経営管理プログラムの2026年度学生募集要項(公式PDF)では、出願書類として「職務・学習に関する経歴書」(日本語2,000字程度)と「将来計画書」(これまで行ってきたこと、本研究科で学びたいこと、その進め方・方法、修了後の計画等を日本語2,000字程度)の提出が全員に求められています。出願資格は出願期間開始日において実務経験3年以上、募集人員は53名(第1期・第2期合計)、選考は書類選考に加えて筆記試験(小論文90分)と口述試験(20分)という構成です。また神戸大学大学院経営学研究科(MBA・現代経営学専攻)の令和8年度募集要項では、募集人員69人、在職中かつ入学時点で実務経験1年以上が出願資格とされ、研究科所定様式の研究計画書の提出が求められています。第1次選考は筆記試験(時事問題に関する小論文500字程度・60分)と書類審査、第2次選考は提出された研究計画書等を中心とした口述試験です。両校の実例からわかるとおり、MBA系の研究計画書・将来計画書は、そのまま面接の台本になるという性質を持っています。なお、これらの募集人員・日程・出願資格は年度により変更される可能性があるため、必ず最新の学生募集要項を確認してください。
将来計画書型の構成では、「職務上の問題意識」→「なぜこの研究科で学ぶ必要があるのか」→「何をどのように学ぶ・研究するか」→「修了後にどう活かすか」という一貫したストーリーを描くことが重要です。以下は構成例です。
- 職務経験からの課題設定:自身の業務で直面した経営上の課題を具体的に述べる
- 研究科を選ぶ理由:その課題を解決するために、なぜこの研究科・プログラムでの学びが必要かを説明
- 学習・研究の進め方:履修したい科目群や、取り組みたい研究テーマ・方法を具体化
- 修了後の計画:学んだ内容を自身のキャリア・所属組織にどう還元するか
社会人が将来計画書を書く際に陥りやすいのは、単なる「業務報告」になってしまうことです。職務経験を土台にしつつも、そこから普遍的な問題意識・研究テーマへと昇華させる視点を持つことが求められます。社会人の大学院受験全般については社会人からの大学院入試の対策・勉強法の記事で詳しく解説しています。項目ごとの書き方と短い例文をより丁寧に確認したい方は、研究計画書の構成と項目別の要点の解説記事もあわせてご覧ください。
研究計画書のNG例と改善のポイント
研究計画書には、審査する側から見て「弱い」と判断されやすい典型的なNGパターンがあります。ここでは代表的なものを、NG例から改善の方向性とあわせて整理します。
| NGパターン | 具体例・改善の方向性 |
|---|---|
| テーマが大きすぎる | 「日本経済について研究する」のような漠然とした表現は避け、問いのレベルまで絞り込む。JAIST敷田教授も「○○を研究する」という表現は避けるべきと指摘している |
| 「◯◯を研究する」型の対象提示にとどまっている | JAIST敷田教授が名指しで挙げる典型的な失敗パターン。「よそ者を研究する」「伝統野菜を研究する」のように対象名を挙げるだけで終わり、その対象の何を、どう明らかにするかまで踏み込めていない状態。「◯◯が◯◯にどう影響するかを明らかにする」まで一文で言い切る |
| 問いがなく感想文になっている | 熱意だけを語り、論理的な問いが立てられていない状態。「なぜ」「何を明らかにするか」を明確な一文にする |
| 先行研究が名前の羅列にとどまる | 研究者名や論文タイトルを並べるだけでは不十分。何が明らかにされ、何が未解明かという「穴」を示す必要がある |
| 研究方法が書かれていない | 実現可能性を欠いた計画書は評価されにくい。使用するデータ・手法・分析方法を具体的に書く |
| 研究テーマと志望研究室・指導教員の専門分野がずれている | テーマ自体は妥当でも、出願先の教員がそのテーマを指導できないと判断されると評価されにくい。志望研究室の教員の研究業績・担当科目を事前に確認し、接続を示す一文を入れる |
| 志望理由書の内容とほぼ同じ文章になっている | 「なぜこの大学院で学びたいか」という志望動機の説明が、そのまま研究計画書に流用されているケース。研究計画書では動機ではなく研究そのものの設計を書く |
| 曖昧表現・二重否定の多用 | 「〜ないわけではない」といった回りくどい表現は避け、簡潔で明確な文章を心がける |
| 字数指定を守っていない | 「〇〇字以内」は超過不可、「〇〇字程度」は前後10%程度が目安。まず募集要項の指定を確認する |
| 例文・他人の計画書の丸写し | 剽窃は不正行為とみなされ入試結果が無効になる規定を設ける大学院がある。内容は必ず自分の言葉で組み立てる |
これらのNGパターンに共通するのは、突き詰めれば「What・Why・Howのいずれかが欠けている」という一点に集約できるということです。テーマが大きすぎる、問いがない、先行研究の整理が浅いといった問題はWhatとWhyの弱さに、方法が書かれていないという問題はHowの弱さに直結します。研究室とのミスマッチや志望理由書との重複は、What・Why・Howの外側にある「宛先」の問題ともいえます。例文を見比べる際は、この3要素とテーマの宛先がそれぞれ具体的に書けているかという観点でセルフチェックすると、改善点が見えやすくなります。
まずは無料相談で、合格までの最短ルートを確認しませんか?
スプリング・オンライン家庭教師のプロ講師が、現在の学力・志望校・残り期間に合わせて、必要な対策を個別に整理します。
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- 今後の大学院入試の勝ち筋が見える。
- 志望校が決まっていなくてもOK
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研究計画書の書式・体裁のルール|文体・分量・提出形式の整え方
内容が固まってきたら、次に確認したいのが書式と体裁です。研究計画書の書き方を扱う情報の多くは中身の話に集中しますが、体裁の指定を外した原稿は、読まれる前の段階で印象を落とします。大前提として、志望する研究科が所定様式や記載要領を公開している場合は、その指定が最優先です。フォント・余白・行数・記入欄の位置まで指定されている様式もあり、様式が配布されているのに独自のレイアウトで提出するのは避けたいところです。以下は、様式に細かい指定がない場合の一般的な整え方として参考にしてください。
文体は「である」調で統一するのが一般的です。研究計画書は自分の思いを述べる文章ではなく、研究の設計を第三者に説明する文書であるため、「〜だと思う」「〜したい」といった主観表現より、「〜である」「〜を明らかにする」といった断定形のほうが適します。一文は短く区切り、主語と述語の対応を崩さないこと、専門用語は初出時に定義を添えること、「〜ないわけではない」のような二重否定を避けることも共通の注意点です。段落の頭に何の話をするかを置き、そのあとに根拠を続ける順序にすると、審査側が拾い読みしやすい原稿になります。
分量については、同じ「研究計画書」という名称でも研究科によって要求水準が大きく異なります。一橋大学大学院経営管理研究科・経営管理プログラムの2026年度学生募集要項では将来計画書が日本語2,000字程度とされる一方、大阪大学附属図書館が2024年6月に公開した研究計画書講習会資料では、大阪大学大学院人文学研究科外国学専攻の入学試験論文が4,000〜12,000字程度(平均8,000字)と紹介されています。同じ書類名でも要求される分量が数倍違うことがあるため、他校の目安を自校に当てはめないようにしてください。分量ごとの内容の厚みの調整方法は、本記事後半の字数別の解説で扱います。
提出形式についても、事前に確認しておきたい項目がいくつかあります。所定様式がWordやPDFで配布されているか、Web出願システムへのアップロード方式か郵送か、手書き指定があるか、氏名や受験番号の記入欄がどこにあるか、といった点です。ファイル形式やファイル名の付け方まで指定されている場合もあります。これらはすべて年度ごとに変わりうるため、必ず最新の学生募集要項で確認してください。提出直前に形式の不備が見つかると、内容の推敲に使えるはずの時間が失われます。
出願書類の作成に生成AIを使ってよいか
近年の受験生から質問が増えているのが、生成AIの扱いです。文部科学省が2024年8月に公表した「大学入学者選抜における生成AIの取扱いについて」では、出願書類として志願者本人が記載する資料を求める場合、募集要項等において生成AIの取扱いを明示することが期待される旨が示されています。これを受けて、各大学が個別に方針を公表している状況です。方針は大学によって割れており、次のように対応が分かれています。
| 大学 | 公表されている方針 |
|---|---|
| 山梨大学 | 志望理由書・研究計画書など出願時に自ら作成して提出する書類について、生成AIにより生成された文章等をそのまま使用することは一切認められず、判明した場合は不正行為とみなし合格を取り消すとしている |
| 大阪工業大学 | 出願書類等の作成において、生成AIにより生成された文章等をそのまま使用することは受験生本人の成果物とは認められず、不正行為に該当する場合があるとしている |
| 東京農工大学(学部入試) | 生成AIの利用の有無は問わないとしつつ、生成AIを利用して作成した内容に関する責任はすべて出願者本人が負うとしている |
共通しているのは、生成された文章をそのまま提出する行為が問題視されている点です。方針は大学・年度・入試区分ごとに異なるため、志望校の最新の募集要項と入試情報ページを必ず確認してください。実務的な観点からいえば、面接で自分の言葉として説明できない文章は、そもそも研究計画書に書かないほうが安全です。研究計画書に書いた内容は口述試験で深掘りされるため、出所が自分でない文章は、その場で説明が破綻する原因になります。先行研究の検索語を考える、書いた原稿の誤字を探すといった補助的な使い方と、原稿そのものを生成させる行為は、性質がまったく異なると理解しておいてください。
例文・テンプレートを自分の研究テーマに落とし込む手順と字数別の調整方法
テンプレートと例文を眺めるだけでは、実際に自分の研究計画書を書き上げることはできません。ここでは、例文を自分のテーマに落とし込むための実務的な手順を紹介します。まず、経験・授業・仕事の中から「気になること」を書き出し、問題意識を言語化するところから始めます。この段階の考え方は問題意識・研究テーマの立て方の記事が参考になります。次に、関連する先行研究を3〜5本程度読み、何が明らかにされていて何が未解明かをメモしていきます。そのうえで、本記事のテンプレート8項目と穴埋め式の定型文を箇条書きで埋めていき、文系・理系・心理系・経営系の例文と見比べながら、背景から問い、方法へと論理が自然に接続しているかを確認します。最後に、実際に音読してみる、あるいは第三者に読んでもらうことで、誤字脱字や論理の飛躍がないかをチェックします。JAIST敷田教授も、提出前に他者に読んでもらうことの重要性を指摘しています。志望研究科の様式や字数指定を最初に確認しておくことが、すべての土台になります。項目ごとの書き方をさらに丁寧に、短い例文つきで確認したい場合は研究計画書の構成と項目別の要点の解説記事も参考にしてください。
研究計画書の分量は、一般的にA4用紙1〜2枚程度が目安とされますが、大学院によってはA4用紙4〜5枚程度を求める場合もあります。字数指定に応じて、書く内容の厚みを調整する必要があります。
- 1,000字程度の場合:背景と先行研究の記述を圧縮し、研究の問いと方法に紙幅を割く。背景と先行研究を1つの段落にまとめるなど、項目を統合する工夫が有効
- 2,000字程度の場合:標準的な分量。背景2割・先行研究2.5割・問い1割・方法2.5割・意義1割程度の配分を目安に、各項目を1〜2段落で展開する
- 4,000字程度以上の場合:先行研究レビューに厚みを持たせ、研究方法(調査設計・分析手順)を詳細に書き、年次計画を加える。ただし内容の水増しは避け、密度を保つことが重要
「〇〇字以内」という指定は必ず範囲内に収め、「〇〇字程度」という指定は前後10%程度(例えば1,000字程度であれば900〜1,100字)を目安にするのが一般的な考え方です。経歴書や志望理由書など複数の書類を同時に提出する場合は、内容が重複しないよう役割分担を意識して設計することも大切です。一橋大学経営管理プログラムのように、経歴書と将来計画書のように書類ごとに問われる内容が明確に分かれているケースもあるため、複数書類がある場合は各書類の設問をよく読み分けてから執筆を始めてください。
先行研究の探し方と参考文献の書き方
説得力のある研究計画書を書くには、先行研究を的確に探し、整理する力が欠かせません。日本語論文を探すにはCiNii Research(国立情報学研究所)、オープンアクセスの学術誌を探すにはJ-STAGE(科学技術振興機構)、国内外の幅広い文献を探すにはGoogle Scholarといった無料の検索ツールが役立ちます。検索の際は、キーワードを複数組み合わせる、気になる論文の引用文献をたどる、レビュー論文から関連分野の全体像をつかむ、といった工夫をすると効率的に先行研究を収集できます。また、志望する研究科の先輩がどのようなテーマで修士論文・博士論文を書いているかは、CiNii Researchの学位論文検索や各大学の機関リポジトリでも確認できます。研究室単位の関心領域を把握するうえで役立つので、先行研究とあわせてチェックしておくとよいでしょう。より具体的な実例を見たい場合は、日本学生支援機構(JASSO)が公開する『実践 研究計画作成法[第2版]』の研究計画実例集(人文学系・日本語学系など複数分野)も参考になります。もともとは大学院進学を目指す留学生向けの教材ですが、実際の研究計画書がどのような文章で構成されているかを確認する目的では、日本人受験者にとっても参考になる資料です。
先行研究を計画書に落とし込む際は、「〜については、〇〇の研究により〜が明らかにされている。しかし、〜の観点からの検討は少ない」という型を使うと、先行研究の到達点と未解明な部分(穴)を明確に示すことができます。この「穴」を示す構造こそが、研究の問いにつながる説得力の源になります。なお、出典を明記せずに他者の文章や研究成果を用いることは剽窃にあたります。一橋大学の募集要項にあるように、剽窃等の不正行為が発覚した場合に入試結果が無効とされる規定を設ける大学院もあるため、引用のルールは厳格に守る必要があります。参考文献リストの書式は、文系では著者名・発行年・題名・掲載誌名などを記載する形式が一般的で、理系でも著者名・発行年・題名・誌名・巻号・頁といった要素を含む形式が使われます。研究科によって指定の書式がある場合は、そちらに従ってください。先行研究の探し方や、独自性・研究方法の詰め方についてさらに詳しく知りたい方は、先行研究の探し方・入手の仕方の記事や先行研究・研究の独自性・研究の方法の記事もあわせてご覧ください。
志望研究室・指導教員へのコンタクトと研究計画書への反映
研究計画書は、内容の良し悪しだけで評価される書類ではありません。NG例でも触れたとおり、テーマ自体は妥当でも志望研究室でそのテーマを指導できないと判断されれば、評価は伸びにくくなります。研究計画書には「宛先」があり、宛先に合っているかどうかが評価を左右します。そのため、書き始める前後のどこかで、志望研究室と指導教員の研究内容を調べる工程を挟んでおきたいところです。
まず確認したいのは、出願前に教員へ連絡してよいかどうかです。この点は研究科によって方針が明確に分かれます。一橋大学大学院経営管理研究科・経営管理プログラムのように事前相談を認めていない例がある一方、中央大学大学院の公式メディアFocusでは、希望する研究室への訪問や添削依頼を準備の一環として挙げています。連絡してよい研究科と、してはいけない研究科が実在するため、自己判断でメールを送る前に、募集要項と研究科の入試ページを確認してください。連絡不可と明示されている場合に個別接触を試みるのは、心証を損ねるだけでなく公平性の観点からも避けるべき行為です。
直接の連絡が取れない場合でも、教員の研究内容を調べる手段は複数あります。研究者情報データベースのresearchmap、論文検索のCiNii Research、各大学の機関リポジトリ、研究室の公式サイト、公開されているシラバスなどを組み合わせると、その教員が近年どのテーマにどの手法で取り組んでいるかが見えてきます。機関リポジトリで志望研究科の修士論文題目を眺めると、指導可能なテーマの範囲が具体的につかめます。この情報は、研究計画書の中で自分のテーマと研究室の接続を示す一文を書くときの材料になります。
計画書への反映の仕方は難しくありません。研究方法または研究の意義のあたりに、「本研究で用いる◯◯の手法は、貴研究科において◯◯の研究を進めている◯◯研究室の指導のもとで実行可能であると考える」といった趣旨の一文を置けば、テーマと宛先の接続を示せます。教員名を挙げる場合は、その教員の業績を実際に読んだうえで書くことが前提です。読んでいない論文の著者名を挙げると、面接で内容を問われた瞬間に崩れます。なお、事前連絡が認められている研究科にメールを送る際は、件名に用件を明記し、所属と氏名を名乗り、質問を具体的に絞り、返信を急かさないという基本的な作法を守ってください。原稿を添えて添削を依頼する場合の手順や文面の考え方は、研究計画書をメールで添削依頼する方法の記事で詳しく扱っています。
研究計画書を書くスケジュール|いつから準備を始めればよいか
研究計画書は、着手から完成までに想像以上の時間がかかります。中央大学大学院の公式メディアFocusは、研究計画書の準備は入試の4〜6ヶ月前には始めることを勧めています。先行研究を読む時間、テーマを絞り込む時間、第三者に読んでもらって直す時間を積み上げると、この程度の助走期間が必要になるという目安です。以下は、出願日から逆算した進め方の一例です。研究科や年度によって出願時期は異なりますので、まずは志望校の入試日程を確認したうえで、この配分を自分の日程に当てはめてください。
| 出願日からの逆算 | 取り組む内容 | この時点での到達目安 |
|---|---|---|
| 6〜4ヶ月前 | 募集要項と所定様式の確認、関心の書き出し、志望研究室の調査 | 提出書類と字数が把握でき、関心領域が3つ程度に絞れている |
| 3ヶ月前 | 先行研究を3〜5本読み込み、未解明の論点を整理する | 先行研究メモができ、研究の問いの候補が立っている |
| 2ヶ月前 | 研究の問いを一文で確定し、研究方法を実行手順まで具体化する | テンプレート8項目を箇条書きで埋め終えている |
| 1ヶ月前 | 箇条書きを文章化し、字数と様式に合わせて調整する | 提出できる形のドラフトが完成している |
| 3〜2週間前 | 第三者に読んでもらい、指摘を反映する | 論理の飛躍と誤字が解消されている |
| 1週間前 | 提出形式の最終確認と、面接を想定した口頭説明の練習 | 書いた内容を自分の言葉で説明できる状態になっている |
この日程で特に圧迫されやすいのが、先行研究を読む3ヶ月前の段階です。在学中の受験生であれば大学図書館やデータベースを使えますが、社会人受験生は論文の入手経路が限られるため、さらに前倒しの着手が現実的です。公共図書館の文献複写サービスや、J-STAGEなどオープンアクセスの論文を早い段階から確保しておくと、締切間際に読む文献が足りないという事態を避けられます。仕事と両立しながら準備を進める場合の全体設計は、社会人からの大学院入試の対策・勉強法の記事もあわせて参考にしてください。
もう一点、出願時期そのものが研究科によって大きく異なることにも注意が必要です。夏に一次募集を行い秋や冬に二次募集を行う研究科もあれば、募集が年一回のみの研究科もあります。複数校を併願する場合は、最も早い出願日を基準にスケジュールを組むのが安全です。テーマの骨格が一つできていれば、研究科ごとの様式や字数への作り替えは比較的短時間で対応できます。最新の日程と提出書類は、必ず志望校の学生募集要項でご確認ください。
研究計画書を仕上げる添削・ブラッシュアップの方法
例文を参考にテンプレートを埋め終えたら、最後に必要なのが第三者の目を通したブラッシュアップです。添削者・第三者が研究計画書をチェックする際の代表的な観点は、次の8つに整理できます。自分で見直す際のセルフチェックとしても、そのまま使えます。
- What・Why・Howの3要素がそれぞれ具体的に書かれているか
- 指定の字数・様式を守っているか
- タイトルは40字程度に収まっているか
- 背景は社会的背景と学術的背景の両面から書かれているか
- 先行研究の「穴」(未解明な部分)が明確に示されているか
- 研究方法に実現可能性があるか(データ・環境・スケジュール)
- 研究テーマが志望研究室・指導教員の専門分野と接続しているか
- 曖昧表現・二重否定を使っていないか、誤字脱字がないか
添削を依頼する際は、事前に準備しておくと限られた時間を内容の検討そのものに使えます。具体的には、志望先の募集要項(字数・様式・提出書類の一覧)、現時点でのドラフト、自分で気になっている箇所のメモの3点をそろえておくと、添削者とのやり取りがスムーズになります。これらを自分だけで完璧にチェックするのは難しいため、第三者に読んでもらうことが強く勧められます。専門外の人が読んでも論旨が伝わるかどうかは、面接での説明のしやすさにも直結します。添削を依頼する相手としては、出身大学の教員やゼミの指導教員がまず候補になりますが、頼れる相手が身近にいない場合は、大学院入試を専門に扱う予備校やオンライン指導の添削サービスを利用するという選択肢もあります。添削サービスの選び方や、赤入れだけの添削で終わらせないための依頼の仕方は研究計画書の添削の受け方を解説した記事でも整理しています。それぞれに利点と限界があるため、自分の状況に合わせて選ぶとよいでしょう。なお、志望する研究科の教員に事前相談ができるかどうかは研究科によって方針が異なり、一橋大学経営管理プログラムのように事前相談を認めていないケースもあるため、必ず募集要項や研究科サイトで確認してください。仕上げの段階では、面接で聞かれやすい質問(なぜこのテーマなのか、なぜこの方法が妥当なのか、入学後どう進めるのか)を想定し、口頭で説明できるように準備しておくことも欠かせません。
よくある質問(FAQ)
研究計画書の例文はそのまま使ってもいいですか?
丸写しは避けるべきです。募集要項の中には、剽窃や虚偽記載を不正行為とみなし、合格を無効にする場合があると明記している大学院もあります(一橋大学経営管理プログラムの例)。例文からは構成と表現の型だけを参考にし、内容は自分自身の問題意識から書くようにしてください。面接で内容を深掘りされた際、借り物の内容ではすぐに矛盾が生じてしまいます。
研究計画書は何文字くらい書けばいいですか?
一般的にはA4用紙1〜2枚程度が目安とされますが、大学院によっては4〜5枚程度を求める場合もあります。「〇〇字以内」という指定は超過しないこと、「〇〇字程度」という指定は前後10%程度を目安にすることが基本的な考え方です。まずは志望する研究科の最新の学生募集要項で、指定される字数・様式を確認してください。
文系と理系で研究計画書の書き方はどう違いますか?
文系では問題意識の深さ・先行研究の整理・理論枠組みの明示が重視される傾向があり、理系では研究手法・データ・評価指標の具体性や、志望研究室のテーマとの整合性が問われやすい傾向があります。ただし、そもそも求められる出願書類自体が研究科によって異なるため(理系でも研究計画書に類する書類を課す専攻もあります)、必ず志望先の募集要項で確認するようにしてください。
研究計画書のテンプレートに参考文献は必須ですか?
様式に明確な指定がなくても、参考文献を付けるのが基本の考え方です。中央大学大学院が示す研究計画書の構成にも参考文献が含まれています。参考文献を示すことは、先行研究を踏まえたうえで計画が立てられていることの裏付けになります。書式について研究科の指定がある場合は、その指定に従ってください。
卒論のテーマと研究計画書のテーマは同じでもいいですか?
同じテーマ、あるいはその発展形でも問題ありません。むしろ卒業研究からの連続性は、研究の実現可能性を示す根拠になり得ます。特に理系ではこの傾向が強いといえます。ただし、単なる「卒論の要約」にとどめず、大学院で新たに明らかにしたい問いを立てることが重要です。
研究計画書の添削は誰に頼むべきですか?
まずは出身大学の教員やゼミの指導教員に相談するのが第一の候補です。身近に頼れる相手がいない場合は、大学院入試を専門とする予備校やオンライン指導の添削サービスを利用するという方法もあります。なお、志望先の教員へ事前に相談できるかどうかは研究科によって方針が異なり、一橋大学経営管理プログラムのように事前相談を認めていない例もあるため、必ず募集要項で確認してください。
研究計画書と志望理由書は何が違いますか?両方提出する場合、内容が重複してもいいですか?
研究計画書は「何を、なぜ、どのように研究するか」を客観的な根拠とともに示す書類で、志望理由書は「なぜその大学院・研究科・教員のもとで学びたいか」を自分の経験から語る書類です。両方を提出する場合は、志望理由書に研究への動機や経緯を、研究計画書に研究そのものの設計を書き分けると役割が明確になります。内容がまるごと重複していると、審査側には準備不足の印象を与えかねません。
大学院公式サイトのテンプレートとこの記事のテンプレート、どちらを使えばいいですか?
志望する大学院・研究科が所定の様式や記載項目を公開している場合は、必ずそちらを優先してください。本記事のテンプレートは、様式が指定されていない場合の骨格や、様式はあるが何を書けばよいか分からない場合の内容面の補助として使うことを想定しています。項目名が違っていても、本記事の8項目のどれに対応するかを考えながら書くと、書く内容に迷いにくくなります。
まとめ|研究計画書の書き方は型に自分の問いを落とし込む作業
研究計画書の書き方について、7ステップの全体像から基本テンプレート、分野別の例文、NG例、書式と生成AIの扱い、逆算スケジュール、添削の受け方までを取り上げてきました。最後に、この記事の要点を整理します。
- 研究計画書はWhat(何を)・Why(なぜ)・Howの3要素、特にWhyの明確さが審査で重視される
- 基本テンプレートは、タイトル・背景・問題意識・先行研究・研究の問い・研究方法・期待される成果・参考文献の8項目。各項目には穴埋め式の定型文を当てはめて骨格から書き始められる
- 文系は問題意識と先行研究の深さ、理系は手法・データの具体性と実現可能性が重視されやすい
- 心理系は研究計画書が面接の中心になりやすく、量的・質的研究それぞれの方法の書き分けが必要
- 経営系・MBAでは「将来計画書」型が用いられることが多く、職務経験と研究計画を一貫したストーリーでつなぐ
- 研究計画書と志望理由書は役割が異なる別の書類であり、内容を重複させないことが両方の完成度を上げる
- 字数指定は「以内」なら厳守、「程度」なら前後10%が目安。分量に応じて内容の厚みを調整する
- 書き方は「様式確認→問題意識→先行研究→問いの確定→方法の具体化→執筆→添削」の7ステップ。決める工程を飛ばして書き始めない
- 体裁は所定様式の指定が最優先。指定がなければ「である」調で統一し、分量は志望校の要求値に合わせる
- 出願書類での生成AIの扱いは大学ごとに方針が分かれる。生成文をそのまま使う行為は不正行為とされる例がある
- 準備は入試の4〜6ヶ月前から。先行研究を読む段階が最も時間を要し、社会人はさらに前倒しが現実的
- 例文は構成と表現の型を学ぶためのものであり、内容の丸写しは剽窃として合格無効のリスクがある
研究計画書は、テンプレートという型に自分自身の問題意識を落とし込み、先行研究の中に「穴」を見出し、実現可能な方法で答えを出そうとする一連の論理を組み立てる作業です。一度に完璧な文章を書き上げようとせず、まず箇条書きでテンプレートの各項目を埋め、例文と見比べながら論理の飛躍がないかを確認し、最後に第三者の目でチェックしてもらうという手順を踏めば、着実に完成度を高めていくことができます。書き方の手順そのものは本記事の7ステップに集約されていますので、今どの工程にいるのかを確認しながら、一つずつ空白を埋めていってください。志望する研究科・専攻によって求められる書類や字数、評価の重点は異なりますので、最新の学生募集要項を必ず確認しながら準備を進めてください。それでも独学での対策に不安がある場合は、専門の指導を活用するのも一つの方法です。
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